メ−ルマガジン
 

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  エチオピア・フィールド・ステーションたより(新年特別号) 
 Ethiopia Field-Station News Letter 
   http://areainfo.asafas.kyoto-u.ac.jp/efs/ 
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               January. 2006[Vol.003] 

            【もくじ】 

 □ フィールドたより:佐川 徹 
 □ EFS通信No.3 
  (1)エチオピア国際ワークショップのお知らせ 
  (2)第15回日本ナイル・エチオピア学会学術大会 
  (3)写真集の紹介  

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        ■ フィールドたより ■ 
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   「風が雨の匂いを運び、大地は一夜にして冷える」 

 佐川 徹・京都大学アジア・アフリカ地域研究研究科博士課程 

エチオピアといえば「高地の国」というイメージがつよい。しかし 
標高約2300mの首都アジスアベバから急峻なアビシニア高地を車 
で三日ほど南へ下れば、そこには家畜を連れた牧人たちが暮らすサ 
バンナの世界が存在している。 

乾燥地域に生きる牧畜民にとってなにより重要なことは、雨が降っ 
て家畜の食べる牧草が生長することだ。そのため人びとはつねに天 
候の変化に注意を払いながら生活を送っている。ぼくが調査をして 
いるダサネッチの人びとによれば、恵みの雨が訪れる徴候は風がも 
たらすのだという。風が「雨のかぐわしき匂い」を運んでくるのだ。 

ただしどんな風でもいいというわけではない。夜中に北から吹く冷 
たい風は、この地に病気を連れてくる歓迎されざる風だ。朝夕に南 
から吹くつよい風は人びとを悩ます蚊やハエを追い払ってくれる風 
だ。雨の芳香を運んでくるのは北東からの適度に涼やかな風である。 

この風にだれよりも敏感に反応するのは家畜たちだと、ダサネッチ 
はいう。かれらは風が吹いてくる方角を向いて鼻を何度もひくひく 
と動かし、喜ばしげに鳴き声をあげる。その声を耳にすると、人び 
とも雨の季節が近づきつつあることを実感するのだ。 

家畜たちが喜ぶわけも分かる。風が連れてきた雨は砂塵舞う荒野を 
一夜にして緑の大地へと変える。昨日までやせ細った姿で頼りなげ 
に歩いていたウシたちは、青々とした牧草を食み、大きくなった背 
中のこぶをプルンプルンと揺らせながら悠然と歩みを進める。いま 
まで容器に半分も出ればいいほうであった家畜の搾乳量もみるみる 
うちに回復し、いまではミルク入れを持ち歩くたびにチャプンチャ 
プンと音を奏でる。旱魃や飢饉、紛争や病気のおそれはなくなり、 
この地に豊かさと平安がもたらされたのだ。乾季から雨季へのこの 
劇的な変化を、ダサネッチは「大地が冷えた」という簡素なことば 
で巧みに表現する。 

静かに移りゆく日本の四季はたしかに美しい。しかし乾季にはその 
厳しさばかりを現していた大地が、一夜にして惜しげもなくさらけ 
出したその豊潤な姿にもまた、格別の美しさがある。 

研究者紹介>佐川徹 
http://areainfo.asafas.kyoto-u.ac.jp/efs/j/research/sagawa.html 

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          ■ EFS通信 No.3■ 
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(1)エチオピア国際ワークショップのお知らせ 
●テーマ :Positive relationships between culture and development 
      in East Africa: Analysis of multi-ethnic context 
●開催日程:2006年2月4日(土)5日(日) 
●開催場所:エチオピア・南部州(Awasa) 
●発表者(予定):Gebre Yntiso, Dilu Teshome, Michael Shifaro, 
         孫暁剛、佐川徹、金子守恵 
>エチオピア国際ワークショップ趣旨 
http://areainfo.asafas.kyoto-u.ac.jp/efs/j/workshop/2006.html 

(2)第15回日本ナイル・エチオピア学会学術大会のお知らせ 
●開催日程:2006年4月15日(土)16日(日) 
【4月15日】公開シンポジウム:テーマ<人間にとって宗教とは> 
【4月16日】個人研究発表 
●開催場所:南山大学(〒466-8673名古屋市昭和区山里町18) 

(3)写真集の紹介 
●『果実』劉敏史著 
エチオピア西南部を訪れて撮影したモノクロポートレート写真集。 
http://www.sankei.co.jp/news/051218/boo016.htm 
2005年度Visual Arts Photo大賞受賞・2〜4月まで写真展開催予定 
http://www.vaphotoaward.com/vapa2005_j1.html 
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          ◇ 編集委員から ◇ 
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あけましておめでとうございます。本年もエチオピア・フィールド 
・ステーションたよりをどうぞよろしくお願いします。 
(金子守恵・COE研究員) 
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