メ−ルマガジン
 

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   エチオピア・フィールド・ステーションだより 
     Ethiopia Field-Station News Letter 
   http://areainfo.asafas.kyoto-u.ac.jp/efs/ 
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              April. 2006[Vol.007] 

            【もくじ】 

 □ フィールドたより:宮田寛章 
 □ EFS通信No.7 
   (1)ベケレ・グテマ先生来日 
   (2)新刊紹介:『辺境の想像力』 
   (3)2006年度研究計画発表会報告 
   (4)日本ナイル・エチオピア学会学術大会報告  

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        ■ フィールドたより ■ 
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         老人と生き物たちの物語   
      〜エチオピア西南部アリの村から〜 

宮田寛章・京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科博士課程 

コーヒーの林を抜けると、家屋の周りをさまざまな植物がとり 
囲む空間が広がっていた。そこに入った私は、ひときわ大きく 
どっしりとした佇まいの樹に目を奪われた。 

「この大きな木はいつ植えたの?」と、私は思わずこの家の主 
である老人に尋ねた。「この木かい?この木はわしが生まれた時 
にはもうここにあった。名前はクルといってな、この辺りじゃ見 
かけない。こいつだけじゃ。」老人は続けた。「子供の頃、遠い 
ダウラ(低地)まで歩いたんじゃ。歩き疲れたわしは、ある木の 
木陰に腰掛けた。その木がこれと同じクルだった。こいつの故郷 
はダウラだったんじゃ・・・」老人は長年連れ添った伴侶に向け 
るような優しいまなざしをクルに向けた。 

「そこに小さな鳥がチチチッとさえずっておった。訊けばこの 
鳥、名はワストといい、狩りのときメイキ(バッファロー)のと 
ころまで人間を案内してくれるというじゃないか。そのときはよ 
そ者のわしを嘲るように飛び去って行ったんじゃ」老人は苦笑ま 
ぎれにひょうたんを持ち上げ、どぶろくをすすり、口をぬぐっ 
た。 

「それからいく年もたった・・・いつだったかの。ワストがわし 
のクルまでやってきて鳴いたんじゃ。3日ほどの間、美しい声を 
聞かせてくれた。そのあとにジャーギ(注)がわしのところに送 
られてきた。ワストはわしのことを忘れちゃいなかった。ちゃん 
とメイキを連れて来てくれたじゃないか。」老人はそうだろうと 
言わんばかりにクルの方に視線を向けて微笑んだ。 

「あぁ・・・、今ちょうど鳴かなかったか?」目じりに深く刻ま 
れたしわを寄せながら、老人はゆっくりと天を仰いだ。残念なが 
ら私にはそのさえずりを聞くことは出来なかったが、老人のおだ 
やかな横顔とその瞳の奥に映る(大きなクルという)不思議な樹 
を見上げ、老人と生き物たちが奏でる生活世界の豊かな音色に耳 
を傾けてみた。 

注 バッファローの皮を張った盾。葬式など儀礼の際につかう道 
具。最近は狩猟が禁止されているため牛皮で制作することが多 
い。 

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          ■ EFS通信 No.7■ 
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(1)ベケレ・グテマ先生来日 
4月1日から9月末まで、アジスアベバ大学のベケレ・グテマ 
先生が外国人客員として京都大学大学院アジア・アフリカ地域 
研究研究科に滞在されます。先生の専攻はアフリカ哲学です。 
4月27日(木)午後15時から開催予定のアフリカ地域研究 
会では「アフリカ哲学入門」というタイトルで発表されます。 
そのほか日本アフリカ学会でも口頭発表される予定です。(2 
8日(日)14時30分から) 
>アフリカ地域研究会 
http://areainfo.asafas.kyoto-u.ac.jp/japan/activities/kenkyukai/africa/20060427_137.html 
>日本アフリカ学会第43回学術大会ホームページ 
http://55099zzwd.coop.osaka-u.ac.jp/africa43/ 

(2)新刊紹介 
『辺境の想像力:エチオピア国家支配に抗する少数民族ホール』 
宮脇幸生著、世界思想社、6825円 
エチオピア西南部において約10年にわたって人類学的な調査を 
つづけてこられた宮脇幸生さんが著書を出版されました。本の詳 
細については以下のサイトをご覧ください。 
http://sekaishisosha.co.jp/cgi-bin/search.cgi?mode=display&style=full&isbn=1174-9 

(3)2006年度研究計画発表会報告 
以下の日程で、2006年度研究計画発表会が開催されました。 

■日時:4月4日(火)13時30分から 
■場所:京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科 
    南棟2階 
■発表者・参加者:宮田寛章、伊藤義将、佐藤靖明、川瀬慈、 
    ベル・アサンテ、西真如、マモ・へボ、重田眞義、 
    金子守恵 
■コメンテーター: 
    ベケレ・グテマ 
    松村圭一郎(京都大学人間・環境学研究科) 

(4)日本ナイル・エチオピア学会学術大会報告 
4月15日、16日の二日間にかけて日本ナイル・エチオピア学 
会が南山大学で開催されました。プログラム等については以下の 
サイトをご覧ください。 
http://www.nacos.com/janes/ 

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          ◇ 編集委員から ◇ 
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4月に入り、ベケレ・グテマ先生(外国人客員)のほかにも、4 
月5日からディル・シャレカさんが京都に来ています。ディルさ 
んは、来年度大学院アジア・アフリカ地域研究研究科に入学すべ 
く現在日本語研修コースを受講中です。(金子守恵) 
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