メ−ルマガジン
 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 
   エチオピア・フィールド・ステーションだより 
     Ethiopia Field-Station News Letter 
   http://areainfo.asafas.kyoto-u.ac.jp/efs/ 
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 
              Aug. 2006[Vol.011] 

            【もくじ】 

 □ フィールドたより:山野香織 
 □ EFS通信 No.11 
  (1)京都シンポジウム、サテライト・ワークショップのお知らせNo.4 
  (2)エチオピア東部で洪水発生 
  (3)エチオピア西南部オモ川流域で洪水発生   
  (4)第16回国際エチオピア学会:パネル募集 
  (5)第16回日本ナイル・エチオピア学会:参加発表受付開始 

------------------------------------------------------------------------------------- 
        ■ フィールドたより ■ 
------------------------------------------------------------------------------------- 
        「村の市場の女性たち」  

    山野香織 京都大学大学院人間・環境学研究科修士課程  

月の光はハイエナたちの遠吠えとともに、真っ暗な夜の闇をほのかに照 
らしている。夜中にお腹が痛くなって、トイレに行こうと外に出たとき 
だった。目の前には、丸い大きな月に照らされた閑散とした光景が、辺 
り一面に広がっていた。 

私は、エチオピア西南部、コンタの人びとが暮らすチャバラという村に 
住み込んで予備調査をおこなっていた。この村の広場では週3日、市場 
が開かれる。特に日曜日の市場は大きくて、夜の静かな光景を忘れさせ 
るほどとても賑やかだ。 

日曜の朝、村の女性たちは教会から帰ってくると、市場に出す売り物を 
準備するために台所でせっせと働く。インジェラ(注1)を何十枚も焼 
く人、ナベいっぱいにワット(注2)を作る人、お酒を作る人。その他、 
それぞれの畑でとれたバナナ、アボカド、パイナップル、サトウキビ、 
マンゴー、家畜からつくったチーズやバターなどを売り物として準備す 
る人たちもいる。市場は食材の天国だな、と思う。 

午後3時ごろ、売り物を頭の上に乗せて運ぶ女性たちが次々と集まり、 
自分の売り場を確保していく。村の住民たちの他、遠く離れた村の女性 
たちも、市場に参加するために売り物を準備して集まってくる。午後4 
時、ウシやヒツジ、ヤギなどの家畜が市場に集まるころには、お酒を飲 
みにきた年配の男性や日々の食材を求めにやってくる女性、その周りを 
駆け回る子供で賑わい、広場はあっという間に大勢の人びとで埋めつく 
される。私もつい、小銭をもって何か買いに行きたくなる。 

「カオリ、今日は何を買いにいくんだい?」 
「バナナとアボカドと、それにジャガイモとニンニクを買おうかな」 
「そうかい、それじゃわたしがついていってあげるよ」 

いつものように近所の女性が自分の買い物のついでに私の買い物にもつ 
きあってくれた。彼女はインジェラの材料であるテフを買うのに必死で、 
口論のように値切っていた。私がバナナやアボカドを買おうとすると、 
彼女は「あんたが外国人だから、みんな値段をだますんだよ」といって、 
丁重に吟味して良いものだけを選んで値切ってくれた。私は自分が生ま 
れ育った大阪の下町を思い浮かべる。どんなところでも、市場は女性た 
ちの「格闘場」なのだ。 

太陽が沈むと同時に、広場にいた人々はぽつりぽつりと店をしまい、家 
路につく。辺りが暗くなると、ろうそくに火を灯し、近所の人たちが集 
まってコーヒーを飲みながら団欒を始める。コーヒーの時間とともに、 
女性たちの一日の仕事は一段落するのだろう。彼女たちをいたわるかの 
ように、今宵の月もまた、真っ暗な夜の闇を照らし続けている。 

注1:エチオピア高地の代表的主食。クレープのように円形に薄く焼い 
たパン。独特の酸味がある。 
注2:インジェラと一緒に食べる副食。バルバレとよばれるトウガラシ 
ベースの香辛料などで煮込んだ料理。村ではイモやマメ類を調理するこ 
とが多い。 

>山野さんは、現在エチオピアで修士論文のための本調査の真っ最中だ 
そうです。いまごろは、毎週日曜の定期市で近所の女性たちと一緒に品 
物を見定めたり、値切ったりして「格闘」しているのかもしれません。 

------------------------------------------------------------------------------------- 
        ■ EFS通信 No.11 ■ 
------------------------------------------------------------------------------------- 
(1)京都シンポジウム、サテライト・ワークショップのお知らせ No.4 
2006年11月9日から13日までのあいだ、京都大学において国際 
シンポジウム(総合的地域研究の新地平:アジア・アフリカからディシ 
プリンを架橋する)が開催されます。第4回目は、メルマガ第8号にエ 
ッセイをかいてくださった孫暁剛さんと内藤直樹さんが代表者をつとめ 
るサテライト・ワークショップ「ユーラシア・アフリカ遊牧社会のゆく 
え:「移動性」と「柔軟性」の可能性をさぐる」について紹介します。 

■ユーラシア・アフリカ遊牧社会のゆくえ:「移動性」と「柔軟性」の可能性をさぐる」 
Mobility, Flexibility, and Potential of Nomadic Pastoralism in Eurasia and Africa 
        孫暁剛・内藤直樹(代表者)・太田至(アドバイザー) 

このサテライト・ワークショップは、ユーラシア・アフリカの遊牧諸社 
会における近代化・グローバル化の経験を、異なる生態・歴史・政治・ 
経済的背景をもつ地域間で比較検討し、現代の遊牧社会の特性と将来の 
可能性について包括的な議論をおこなうことをめざしています。 
 現在、アメリカから2名、日本から5名の研究者に参加していただく 
予定で交渉中です。この7名の方々は、それぞれモンゴル、カザフ共和 
国、ロシア、ネパール、ケニア、エチオピアなどで精力的な研究をおこ 
なってきました。 
 本ワークショップでは、このようなさまざまな地域からの報告を、以 
下の2つのセッションのなかで検討する予定です。セッション1では、 
定住化政策や土地の私有化、そして商品経済が浸透するなかで遊牧民が 
土地や家畜に対する関係をどのように調整しているのかに焦点をあて、 
セッション2では民族アイデンティティや社会関係の再編過程を、国家 
という単位やグローバルな変化との関連において検討します。そして総 
合討論では、近代化やグローバル化の諸力のなかで、遊牧社会の成立基 
盤である「移動性」と「柔軟性」がどのように積極的な力となりうるの 
かについての議論をおこないます。 
http://areainfo.asafas.kyoto-u.ac.jp/kyotosympo/j_satellite/index07.html 


(2)エチオピア東部で洪水発生 
8月5日未明、首都アジスアベバから東におよそ500kmはなれたデ 
ィレダワという町で、集中豪雨のために河川が氾濫し洪水が発生しまし 
た。この洪水で、およそ200名が死亡、数千人が避難する事態になっ 
ています。 
http://www.irinnews.org/report.asp?ReportID=55030&SelectRegion=Horn_of_Africa 


(3)エチオピア西南部オモ川流域で洪水発生 
8月13日の夜、首都アジスアベバから南西に700kmはなれたオモ 
川流域で、集中豪雨のために川が氾濫し洪水が発生しました。8月15 
日付けのニュースでは、この洪水でおよそ125名が亡くなったと発表 
しています。 
http://edition.cnn.com/2006/WORLD/africa/08/14/ethiopia.flooding.reut/index.html 
http://www.irinnews.org/report.asp?ReportID=55121 


(4)第16回国際エチオピア学会:パネル募集 
2007年7月2〜7日の日程で、ノルウェーにおいて国際エチオピ 
ア学会が開催されます。学会事務局は、従来のような分野別ではなく 
テーマ別のパネルで研究発表会のプログラムを構成する予定です。こ 
れにあたり、事務局では参加者から広くパネルを募集しています。下 
記の項目に従って事務局にパネル案をぜひ提案してください。 
1.Panel title: 
2.Motivation / description: 
3.Potential members of the panel committee: 
4.Suggested keynote speakers 
https://www.svt.ntnu.no/ices2007/index.php?page=panels 

■ 参加登録サイト 
https://www.svt.ntnu.no/ices2007/index.php?page=paper 
参加登録は10月1日締め切りです。発表予定の方は、アブストラクト 
(500words以内)を一緒に提出してください。 

■ 重要な日程 
10月1日:参加登録・発表要旨提出締め切り 
12月1日:発表の採択通知(事務局から) 
 3月1日:ホテルなどの予約締め切り 
 5月1日:研究発表ペーパー締め切り 
https://www.svt.ntnu.no/ices2007/index.php?page=callkeypoints 


(5)第16回日本ナイル・エチオピア学会:参加発表受付開始 
2007年4月14日〜15日に、慶應義塾大学湘南藤沢キャンパスに 
おいて、第16回日本ナイル・エチオピア学会が開催される予定です。 
今年の参加発表締め切りは11月3日です。メールでの受付となってい 
ます(nilo-ethiopia2007@keio.to)。例年と比べて締め切りが早くな 
っていますので、参加発表される予定の方はお気をつけください。 

>慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス(神奈川県藤沢市遠藤5322) 
http://www.sfc.keio.ac.jp/ 

■ 参加登録について 
・Eメールのタイトルを「大会参加の申し込み」と明記する。 
・名前、所属先、郵送物のお届け先(郵便番号込み)、専門分野、自宅 
もしくは所属先の電話番号(できれば両方)を明記のうえ、事務局まで 
(nilo-ethiopia2007@keio.to)送信する。 

■ 発表登録について*発表登録される方は参加登録の必要ありません 
・Eメールのタイトルを「研究発表の申し込み」と明記する。 
・名前、所属先、郵送物のお届け先(郵便番号込み)、専門分野、自宅 
もしくは所属先の電話番号(できれば両方)、発表タイトル(仮でも構 
いません)を明記のうえ、事務局(nilo-ethiopia2007@keio.to)まで 
送信する。 
*発表時間は20分、質疑応答5分。 
------------------------------------------------------------------------------------- 
          ◇ 編集委員から ◇ 
------------------------------------------------------------------------------------- 
8月に入って、エチオピアでは豪雨のために河川が増水し洪水が発生し 
ている地域が多数あるようです。次号でも、洪水の続報についてお知ら 
せしたいとおもっています。日本はまだまだ残暑がつづくようですが、 
みなさんどうかお身体ご自愛ください(金子守恵)。 
------------------------------------------------------------------------------------- 
メールマガジンへのご意見・投稿はこちらまで 
→Ethiopia_FS@jambo.africa.kyoto-u.ac.jp 
------------------------------------------------------------------------------------- 
◆このメールは「まぐまぐ」のシステムを利用して配信して 
います。新規登録・解約は下記ページにてお願いします。 
http://areainfo.asafas.kyoto-u.ac.jp/efs/j/magazine.html 
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 
エチオピアフィールドステーション・メールマガジンは、21世紀 
COE プログラム「世界を先導する総合的地域研究拠点の形成」の 
活動内容を中心に、エチオピアの地域研究情報を電子メールで配信 
しています。 
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 
発行: Ethiopia Field Station, 21st Century COE Program 
    -世界を先導する総合的地域研究拠点の形成- 
http://areainfo.asafas.kyoto-u.ac.jp/efs/index.html 
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 
Copyright(c)2006 EFS. All Rights Reserved.