メ−ルマガジン
 

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     エチオピア・フィールドだより      
      Ethiopia News Letter    
  http://areainfo.asafas.kyoto-u.ac.jp/efs/
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              June. 2007[Vol.017]      
      
         【もくじ】  
    □ フィールドたより:利根川佳子  
    □ EFS通信 No.17
      (1)マモさん高島賞受賞
      (2)川瀬さん映像作品(国際民族誌映画祭)ノミネート決定
      (3)新刊・DVD紹介

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         ■ フィールドたより ■
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      「エチオピアで女性として働くこと」
    利根川佳子(神戸大学国際協力研究科博士課程)


皆さんは「草の根・人間の安全保障無償資金協力」(以下、草の根無償)
をご存じだろうか。草の根無償は、日本のODA(政府開発援助)の一
部であり、現地で活動するNGOや地方公共団体等非営利団体に直接支
援を行っている。

私はこの草の根無償の担当として4月まで在エチオピア日本大使館で働
いていた。被供与団体と直接やり取りしていたが、多くの団体の代表や
メンバーが男性、そしてその多くは私よりずっと年上であった。エチオ
ピアでも女性の社会進出は進んでいるものの、まだまだ男性社会だ。そ
んな中、女性でまだ20代の私が彼らと仕事をするのは難しい面もあっ
た。例えば、同僚に私より少し年上の男性がいたのだが、彼と二人並ん
で団体と対応をしていると、団体代表は私の方へは振り向きもせず、ひ
たすら彼に向って話している。まさか彼と私が同じポジションだとは思
いもしないのだ。また、必要な書類を提出するよう催促する際に、あか
らさまに嫌な態度をとられることや気分を害してしまう等、エチオピア
で働くにあたり、いつも女性であることにハンデを感じていた。

エチオピアの草の根無償の特徴として挙げられるのは、積極的な地方へ
の支援である。エチオピアは日本の3倍の国土を有する。道路事情も悪
く、時には車が通れないため、馬に乗って移動することや、徒歩でプロ
ジェクトサイトまで行くことも少なくない。プロジェクトサイトへ行く
時には、そのサイトの地域住民は日本大使館から人が来ると前もって知
らされ、集まってくれていることが多い。

その中で大変印象に残っているのは、オロミア州アルシ地方コファレ郡
に位置する小学校の拡張案件である。この小学校は青空教室から始まり、
やがて地域住民が藁ぶき屋根の校舎を建て、その後地域住民と郡政府に
よって土壁の校舎が建設された。地域住民が主体となって除々に規模を
拡張してきた学校である。この案件は、6年制を8年制に拡張する支援
をおこなうというものであった(エチオピアの義務教育は8年制)。

事前調査に行った時は雨期だったため、道路事情が大変悪く、サイトま
では車で約4時間半行った後、車が動けなくなってしまい、徒歩で1時
間という道のりであった。歩くことは慣れていたが、1時間雨でぐちゃ
ぐちゃの道を歩いて行くのは容易ではなかった。学校に着くと、何百人
という地域住民が待っていたが、ここでも若い女性が来たことにみんな
驚いていた。また、彼らが見る初めての外国人が私であったと後で聞い
た。驚かれることには慣れていたので、マイペースに調査、インタビュ
ーを進めていき、現地での仕事を終えた。

後日その案件を実施する団体の方たちと会った時のことである。団体代
表からこのように言われた。「気づいていたかと思うが、日本大使館か
らヨシコのような若い女性がきて村長をはじめ村人は大変驚いていた。
だが、同時に若い女性が日本大使館から重要な仕事を任され、1時間の
道のりを歩いてきたことに多くの人々が刺激を受けていた。私たちの地
域にある小学校では女子の就学率はまだまだ低い。ヨシコが帰った後、
今まで学校に行かせていなかった娘を来年から学校へ行かせたいと言い
出した人がいた。そして、すでに学校に行っている女子がこれからも学
校を続けていきたいと言い始めた。ヨシコはあの地域でロールモデルと
なったんだ。」

その地域の就学率は40%そして、その中でも女子は家事の手伝いをす
る必要があるため、男子よりも学校へ行かせてもらえていない。また、
誘拐婚が横行しているため、通学に時間がかかる学校へ娘をなかなか行
かせない。その他に早婚も女子の就学を阻んでいる。

私をヨイショしてくれたところもあるかもしれないが、このときの言葉
は私にとって大変励みとなった。ずっと女性であることにハンデを感じ
ていたが、女性だから与えられる影響力がある。そう感じたのである。

エチオピアの草の根無償のプロジェクトは、教育セクターが4割を占め
る。案件の必要性、実行可能性、持続性を調査することが大変重要であ
り、その中で現地調査は欠かせない。実際に月の3分の1〜4分の1は
地方へ出張していた。現地へ行くことで、実際の人々の生活を知ること
ができ、そして人々の生きる強さを感じ、いつも彼らからパワーをもら
っていた。でも、私も何らかの影響を地域の人々に与えられているのか
もしれないと感じた時から草の根無償の仕事にやりがいを本当に感じら
れるようになった。

>利根川佳子さんは2003年〜2004年までアメリカの教育NGO
ワールド・ラーニングにおいて、2004年5月〜7月にはユニセフ・
エチオピア事務所でインターンを経験されました。そのときの経験をも
とに「地球に乾杯!NGO」というサイトでコラムの連載をされていま
した。ユニセフ・エチオピア事務所でのインターン一日目を終えて書か
れたコラムは、活動内容にあわせた部署間のコラボレーションやNGO
との連携について鋭い感想がまとめられており興味ぶかいです。
http://mywebpages.comcast.net/ngocolumn/tonegawa.htm

>外務省草の根無償資金協力のウェブサイト
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/kaikaku/oda_ngo/kaigai/human_ah/index.html
>利根川さんが在籍されている神戸大学国際協力研究科のウェブサイト
http://www.gsics.kobe-u.ac.jp/indexj.html

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         ■ EFS通信 No.17 ■
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(1)マモ・ヘボさん高島賞受賞
マモ・ヘボさんが、日本ナイル・エチオピア学会平成18年度高島賞を
受賞されました。2005年に出版された著書が受賞対象でした。
>受賞対象作品
http://areainfo.asafas.kyoto-u.ac.jp/japan/areainfo/land.html

(2)川瀬さん映像作品(国際民族誌映画祭)ノミネート決定
川瀬さんの映像作品『Room 11, Ethiopia Hotel』が、第10回英国王立人
類学協会主催国際民族誌映画祭(於:マンチェスター大学、6月27日−
7月2日)・王立人類学協会賞コンペティションにノミネートされました。

>映画祭での川瀬さんの映像作品紹介ページ
http://www.raifilmfest.org.uk/films/room11.htm
>映画祭には他にも、物資文化・考古学部門、音楽部門、学生部門等のコ
ンペがあります。(以下プログラム)
http://www.raifilmfest.org.uk/programme.htm

(3)新刊・DVD紹介
<1>【Book】Living With Pottery: Ethnoarchaeology Among the
Gamo of Southwest Ethiopia、John W. Arthur、Univ of Utah.(John
W.Arthur.2006.The University of Utah Press.ISBN:)
エチオピア南西部でのフィールドワークをもとに、ガモの人びとと土器
とのさまざまな関わり(利用・成形・販売・流通・再利用など)を丁寧
にまとめた民族考古学的な研究です。考古学研究シリーズのひとつで、
本書は15冊目です。
http://www.amazon.co.jp/Living-Pottery-Ethnoarchaeology-Foundations-Archaeological/dp/0874808847

<2>【DVD】Woman the toolmaker(Tara Belkin, Steven Brandt,
and Kathryn Weedman.2006.Left Coast Press, Inc.)
エチオピア西南部にくらすコンソの女性職人による皮なめしの仕事を映
像としてまとめたものです。考古学や文化遺産の管理などを、学生に紹
介するためのEducational film seriesのうちの一作です。
http://www.amazon.co.jp/Woman-Toolmaker-Hideworking-Ethiopia-Archaeological/dp/1598741195

<3>【Book】アフリカン・アート&クラフト
(アフリカ理解プロジェクト編.2007.明石書店)
アフリカを理解するためのシリーズ第4作目です。写真をふんだんにつ
かって、アフリカの絵画、陶器、織物、ダンスなどを紹介しています。
http://africa-rikai.net/projects/books.html

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          ◇ 編集委員から ◇
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5月20日、エチオピアのドキュメンタリー番組がBSハイビジョンで放
映されました(以下、宣伝ページ)。エンセーテ栽培を学びながら少年
が成長していく話です。ハイビジョンだけあり映像がとてもきれいでし
た。(金子)
http://www3.nhk.or.jp/hensei/program/k/20070520/001/10-1900.html
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て作成・編集しています。エチオピアの地域研究情報を不定期に電子メ
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