メ−ルマガジン
 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
     エチオピア・フィールドだより      
      Ethiopia News Letter    
  http://areainfo.asafas.kyoto-u.ac.jp/efs/
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
              July. 2007[Vol.018]
      
         【もくじ】  
    □ フィールドたより:竹中祥太朗 
    □ EFS通信 No.18
      (1)エチオピア料理教室
      (2)商標登録論争ついに和解:スターバックスとエチオピア政府
      (3)音声学とアムハラ語の集中講義開講7/23−26
      (4)第16回国際エチオピア学会開催

------------------------------------------------------------------------
         ■ フィールドたより ■
------------------------------------------------------------------------
           「理想郷」
       竹中祥太朗(京都大学農学部)

自分のテントを出てから歩きつづけて9時間が過ぎ、やっと見慣れた家
々が見えてきた。初めてここの土を踏んでからもう5ヶ月が過ぎようと
していた。僕はエチオピア南西部の山岳地域に住むバスケートという人
たちの住む村でモロコシを中心とする作物の多様性を調べるために村に
住み着いていた。

村では大方収穫は終わってしまい、畑を歩き回ってももうほとんど何も
残っていない。こうなってしまうと放浪癖に火が着いてしまう。朝食を
終えると今日は東へ明日は南へとほかの村へ探検に出かけてゆく。この
日は南の方面に行ってきた。僕の暮らしていた村は標高1900m程で
南側はきれいな滝のある崖が続き、標高が一気に下がる。(この道を歩
いた日本人はいないんだろうな)などと考えながら坂道を下ってゆくと
嬉しくなってついつい調子に乗り、帰りの登り道のことを忘れて遠出し
てしまう…。

重い足を引きずりながら途中で貰ったサトウキビを手土産に、いつもの
ようにベッレテの家に夕食をご馳走になりに行く。

「今日はどこに行ってきたの?」
「Gara。」
「えっ、Garaまで!昼食は食べたのか?」
「休んでいたらカボチャとこれをくれた。」

弁当代わりにバナナを持って歩いていたが、この日も道端で休んでいる
とわざわざ家から蒸し焼きにしたカボチャを持ってきてくれた人がいた。
いつもこんな感じで食べ物に困ることはほとんどない。

「Garaには何があった?」
「エンセーテ、サツマイモ、モロコシ…、この村と同じだね。」
「これがたくさんあっただろ?」

ベッレテが皿の上の炒ったトウモロコシの中からなにやら黒い種を取り
出して渡してくれる。

「これは…、ああヒマワリか。たくさんあったよ。」
「あそこにはヒマワリがたくさんあるんだ。エンセーテもたくさんあっ
たか?」
「いや、ここの方が多い。」
「その通りだ、あそこは暑いそれに水が少ないからエンセーテやタロイ
モが少ない。良くない所だ。ここにはエンセーテもタロイモもサツマイ
モもなんでもあっていいところだ。」

いろんな人からよく日本やアジスアベバのことを質問され、いつも拙い
言葉で必死に説明していた。彼だけは常に自分の村が一番住みよいと結
論付けてしまう。彼にとってこの村は理想郷なのであろうか、サトウキ
ビを齧りながら自分の村を理想郷のように語る彼を少し羨ましく思う。
この『理想郷』での滞在期間も後もう少ししか残っていない、かまどの
火を見つめながらそんなことを考えると少し悲しくなってきた。

>竹中さんは、本多勝一や多くのフィールド研究者を輩出した京大探検
部に所属しています。現在の部員数は7〜8名で、カヌー、山登り、ス
キーなどさまざまな活動にとりくんでいるそうです。
http://ecku.s76.xrea.com/

>ロシアの植物遺伝学者バビロフやフランスの民族植物学者ポルテールは、
エチオピアは世界に分布する栽培植物のセンターのひとつと説いています。
http://www.answers.com/topic/nikolai-vavilov?cat=technology
----------------------------------------------------------------------------
         ■ EFS通信 No.18 ■
----------------------------------------------------------------------------
(1)エチオピア料理教室
6月17日(日)京都市南区京都テルサで「アフリカ料理教室」が開催さ
れました。一般の参加者の方々が、エチオピアのインジェラやドロワット
(トリニクのシチュー)などに挑戦しました。エチオピアの嗜好品や食文
化などについて研究している山本雄大さんが、調理の仕方について説明し
たほか、エチオピアから京大アジア・アフリカ地域研究研究科に留学して
いるディルさんが、エチオピアの人たちの香辛料の使い方などについて説
明したそうです。
http://www.kyoto-np.co.jp/article.php?mid=P2007061700084&genre=K1&area=K10

(2)商標登録論争ついに和解:スターバックスとエチオピア政府
スターバックスは、ハラール、シダモ、イルガチェフといった産地名を商
標として営業活動を世界的に展開してきました。エチオピア政府は、昨年
8月から、スターバックスと米国特許商標局に対しそれらの地名を商標登
録するようもとめ、今年の6月20日にスターバックスがエチオピア政府
の主張を受け入れ、エチオピア政府とのあいだに契約書をとりかわすこと
で和解に至りました。スターバックスは、米国特許商標局が地名は商標登
録の必要がないという方針に立って営業活動を続けてきました。一方エチ
オピア政府は、優秀なコーヒー豆に商標をつけこれらの豆の流通を管理し、
生産者に対しては、小売り価格のなかに含まれる「商標権使用料」が支払
われるという仕組みを採用しています。エチオピア政府は、スターバック
スが商標登録することで約1500万人の農民が利益を享受すると述べて
います。
http://www.afpbb.com/article/economy/2242613/1712274

(3)音声学とアムハラ語の集中講義
7月23日〜26日の4日間、音声学とアムハラ語の集中講義が開講され
ます。例年と同様、金沢大学の柘植洋一先生に教えていただきます。フィ
ールドでの音の聞き取り方・ノートへの記述の仕方など、とても実践的な
内容ですので、これからはじめてフィールドワークに臨む方々はぜひ受講
してください。会場は、京都大学旧工学部4号館4階会議室です。受講を
ご希望の方は、事前に下記アドレス宛にご連絡ください。
>問い合わせ先
efs@jambo.africa.kyoto-u.ac.jp

(4)第16回国際エチオピア学会開催
7月2日から6日にかけて、ノルウェー・トロンヘイムにおいて国際エチ
オピア学会が開催されました。参加者はおよそ250名、日本からの参加
者はエチオピア、アメリカ、ノルウエーに次いで多く、16人(他に海外
在住の邦人2名)でした。全体の発表数は約200で、4年前のドイツ・
ハンブルグでの大会と比べて少なめでしたが、こぢんまりとしてとても雰
囲気のよい学会でした。次回(2009年)は、エチオピア・アジスアベ
バで開催予定です。
>大会プログラム
http://www.svt.ntnu.no/ices2007/index.php?page=menu&getFile=1
---------------------------------------------------------------------
          ◇ 編集委員から ◇
---------------------------------------------------------------------
国際エチオピア学会では、歴史学者のJames McCannさんの報告が非常に興
味深いものでした。彼の調査地であるエチオピア西南部ジンマ周辺は、こ
れまでマラリア汚染地域ではなかったにもかかわらず、近年マラリア感染
者がたいへんな勢いで増加しているそうです。発表では、フィールドワー
クに基づきながら、熱帯医学や昆虫学の研究者、エチオピアの保健省の人
々と協力して得られたデータを元に、マラリア感染率の増加と、トウモロ
コシの高収量品種の栽培が急激に増加していることとの関連性を提示して
いました。著書には以下のようなものがあります。(金子守恵)
>People of the plow(1995)
http://www.lavoisier.fr/notice/frKKOKRXKXR6P63O.html
>Green land, Brown land, and black land(1999)
>Maiz and Grace(2005)

----------------------------------------------------------------------
メールマガジンへのご意見・投稿はこちらまで
→Ethiopia_FS@jambo.africa.kyoto-u.ac.jp
----------------------------------------------------------------------
◆このメールは「まぐまぐ」のシステムを利用して配信しています。新
規登録・解約は下記ページにてお願いします。
http://areainfo.asafas.kyoto-u.ac.jp/efs/j/magazine.html
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
このメールマガジンは、京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究
科に在籍してエチオピアで調査研究をおこなう若手研究者が中心になっ
て作成・編集しています。エチオピアの地域研究情報を不定期に電子メ
ールで配信しています。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
発行:京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科・
   エチオピア研究グループ
http://areainfo.asafas.kyoto-u.ac.jp/efs/index.html
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
Copyright(c)2007 EFS. All Rights Reserved.