メ−ルマガジン
 

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     エチオピア・フィールドだより
        Ethiopia News Letter
  http://areainfo.asafas.kyoto-u.ac.jp/efs/
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              Oct. 2007[Vol.020]
      
          【もくじ】

    □ フィールドたより:久田信一郎
    □ コラム:現場で関わりながらキャリアをつむ
    □ EFS通信 No.20
      (1)エチオピアからバラの花、輸入激増
      (2)第2回アフリカの角地域における牧畜民会議報告
      (3)公開シンポジウム「援助・開発を考える」
      (4)エチオピア・ダンス:横浜国際フェスタ2007
      (5)新刊紹介:「見る・つくる・知る おしゃれなアフリカ」英語版
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         ■ フィールドたより ■
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          「マーシャ村再訪」
            久田信一郎        

1987年1月、わたしは旱魃被災民の復興支援プロジェクトの一貫と
して植林用の苗を作っているナーサリーへ向かっていた。エチオピアの
北ウォロ州(当時)マーシャ村の畑のあぜを歩いていたとき、収穫した
テフを山のように背負った少女とすれ違った。その年は、数年続いた旱
魃と比べると段違いに収穫があった。少女は小学校に通学する12歳で、
土曜と日曜はこうして父の手伝いをしているとのことだった。彼女は、
外国人のわたしに臆することもなく毅然とした態度で質問に答えてくれ
た。背負っているテフをおきにいった後、再び畑にもどって収穫の手伝
いをするという。

マーシャ村は、アジスアベバから北西方向へ約600kmのところにあ
る。日本国際ボランティアセンター(JVC)は、この村を80年代に
おこったエチオピア大干魃の復興のシンボルにしようとフード・フォー
・ワーク(植林などの活動に参加した対価として食糧を支給)という方
式で総合的村落開発プロジェクをおこなっていた。植林した樹種は、主
にユーカリで、地元にもともとあった苗畑で現地で種が確保できる苗木
生産の支援から着手した。1987年5月にマーシャ村を去ってから、
1993年7月に再び訪ねる機会があった。日帰りの短時間訪問だった
ので、プロジェクト事務所までしか行けず植林したあたりを遠めに見渡
したが、周りの風景も村もそんなに変化した印象は受けなかった。その
後エチオピアには縁あって1984年4月から通算で16年ほど滞在す
ることになった。だが1993年以降マーシャ村に行く機会はなかった。

2007年8月のある日、マーシャ村をGoogle Earthで見つけて驚いた。
デッセーから西へ150キロの断崖絶壁の淵に面した僻地の村が衛星写
真で公開されており、一軒一軒の家並みが識別できた(2006年1月
14日撮影)。昔の記憶をたどり、プロジェクト事務所があった場所を
見つけた。20年前は、数軒しか大きなトタン屋根の家はなかったと記
憶していたが、今は百世帯を超える家々がハッキリと見える。植林した
サイトを拡大してみると村の端から川沿いに南へ向かった上流部の山手
から川床にかけての左手斜面にユーカリの植林地が広がり、土壌侵食を
食い止める為の石と泥で積み上げた段々畑のようなテラスが無数の水平
線としてくっきりと見えた。老若男女を問わず人びとが総出で作業を行
った光景を思い出した。GoogleEarthには、立体的に表示できる機能も
あるので、まるで3度目にマーシャ村を訪れた気持ちになった。

20年前にマーシャ村で出会った少女も、今では32歳になっているは
ずだ。もしかしたらこの衛星写真に写っている家で、夫や子ども、もし
かしたら孫に囲まれ家族と生活しているかもしれない。そんなふうに想
像すると彼女と会話した時の情景が鮮やかに思い出される。

>エッセイにでてくる少女との会話は、『NGOの挑戦:下巻』(19
90年、47〜48ページ)に掲載されています。
http://astore.amazon.co.jp/jvcwebsite-22?_encoding=UTF8&node=1
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            ■ コラム ■
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      「現場で関わりながらキャリアをつむ」

今回エッセイを書いてくださった久田さんは、1984年から通算で1
6年間エチオピアに暮らし、エチオピアの人達とかかわりながら国際援
助に関わる仕事にたずさわってこられました。高校卒業後、エチオピア
の海外青年協力隊員(建設機械隊員)として国際援助の現場で仕事をは
じめた後、英国ウェールズ大学スワンジー校(国際開発論)に進学、卒
業し、再びエチオピアでJICAの農業開発、地下水開発などのプロジ
ェクトの業務調整員などを勤められます。その後、地理情報システム(
GIS)の研究で有名な英国エディンバラ大学・地球・環境・地理大学
院(地理情報システム専攻)に進学、修士課程を修了され、JICA・
ベレテ・ゲラ参加型森林管理計画のチーフアドバイザーとして再びエチ
オピアに戻ってこられます。このプロジェクトでは、GISの技術をい
かし、参加型立体地形モデル(P3DM)をもちいて、地方政府と住民
とのあいだに、森林の利用や境界について話合いの機会を提供しました。
最終的には、このプロジェクトチームが仲介し、両者のあいだに森林利
用と境界に関する正式な取り決めを結ぶに至りました。

>プロジェクトの報告書は(全84頁)、以下のサイトでご覧になるこ
とができます。
http://lvzopac.jica.go.jp/external/library?func=function.opacsch.mmdsp&view=view.opacsch.mmindex&shoshisbt=1
&shoshino=0000169676&volno=0000000000&filename=11832094_01.
pdf&seqno=1
>エディンバラ大学
http://www.ed.ac.uk/
>エディンバラ大学GISサーバー
http://www.geo.ed.ac.uk/home/gishome.html
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       ■ EFS通信 No.20 ■
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(1)エチオピアからバラの花、輸入激増
ケニアやエチオピアなどから関西空港経由で輸入されるバラが激増して
います。メルマガ第6号でもお伝えしましたが、エチオピアから関空ま
ではドバイ経由で20時間程度、かつて主流であったオランダ経由より
10数時間早いことに加え、ドバイ当局が05年以降、世界最大規模の
花専用の低温物流施設を整備したことも加わり輸入が一挙に増えました。
財務省の貿易統計と農林水産省の植物検疫統計によると、06年にケニ
アから輸入されたバラは359トン(1137万本)。エチオピアから
も06年から輸入が始まり、今年は8月までに86トンが入り、06年
の31トンを超えました。近所の花屋さんにならんでいるバラは、エチ
オピアからのものかもしれません。
http://www.asahi.com/kansai/news/OSK200710130009.html

(2)第2回アフリカの角地域における牧畜民会議報告
昨年7月におこなわれた第2回アフリカの角地域における牧畜民会議の
報告(佐川徹著)がアフリカレポート最新号(No.45)に掲載され
ました(タイトル:定住民中心的な世界システムへの挑戦)。トゥルミ
で開催された第1回会議から一年がたち、第2回目はさまざまな外部ア
クターが関与していた中で、政治的エリートとはいえないような最小行
政単位の長や家畜商などの「普通の牧畜民」が積極的に議論に参加して
いたことなどが報告されています。
http://www.ide.go.jp/Japanese/Publish/Africa/

(3)公開シンポジウム「援助・開発を考える」
11月24日(土)、12:30〜15:00、京都国際交流会館イベ
ントホールにおいて「援助・開発を考える」という公開シンポジウムが
開催されます。シンポジウムには、今回エッセイを書いてくださった久
田さんがパネリストとして参加されます。このシンポジウムは、文教大
学文化人類学コースの教員と学生がおこなっているプロジェクト・ウオ
プルが企画したものです。プロジェクト・ウオプルは、「エチオピアに
小学校をたてよう!」という合い言葉のもと、2003年にはじまりま
した。これまでの活動記録を以下のサイトでご覧になることができます。
http://www.cyber.kbu.ac.jp/edu/bonnet/

(4)エチオピア・ダンス:横浜国際フェスタ2007
10月27日(土)・28日(日)10時半〜5時に、パシフィコ横浜
において横浜国際フェスタ2007が開催されます。27日、2時〜3
時には、モカ・エチオピア・ダンスグループによるエチオピア・ダンス
のご披露があります。詳しくは、下記ウェブサイトをご参照下さ い。
http://yokohama-festa.org/

(5)新刊紹介:「見る・つく・知る おしゃれなアフリカ」英語版
アフリカ理解プロジェクト編、「おしゃれなアフリカ」日本語版シリー
ズNo.2(アフリカン・キッチン)が、エチオピアミレニアムブック
スの一冊としてエチオピアのShama Books社から近日出版されます。日
本語版にまけないくらいの美しい仕上がりになっているそうです。日本
では、エチオピアでの出版に先駆け、印刷元のインドから入荷して販売
しています(1冊1600円(税込))。以下のサイトにて受付中です。
http://africa-rikai.net/projects/books.html
http://africa-rikai.net/projects/africankitchen_en.html

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          ◇ 編集委員から ◇
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10月に入ってから週に2回の割合で、エンセーテ(注1)の繊維を糸
にする方法を知り合いの方に教えてもらっています。エンセーテの偽茎
の繊維から不純物を取り除き、毛羽立たないように偽茎の根元から芽の
方向へと繊維の向きをそろえ、一本一本をはたむすびしてつなぎ、つな
いだ糸を2本立てにして糸を縒っています。ちょっと気が遠くなりそう
ですが、村の人達と一緒にできた糸を植物素材で染織し製品を試作して
みるのが今のところの目標です。(金子)

注1:エンセーテは、バショウ科の植物でバナナに姿かたちが似ていま
す。主にエチオピア南部に暮らす人達が主食として栽培しています。
http://www.aaas.org/international/africa/enset/descrip.shtml
>エンセーテと同じバショウ科植物で、沖縄の琉球バショウの繊維から
つくった芭蕉布は1500年ころから製作がはじまったといわれていま
す。平良敏子さんを中心とした喜如嘉の芭蕉布保存会がその技法などを
保存・継承しています。
http://www2.edu.ipa.go.jp/gz/y-kwm/y-fkg/y-fkj/IPA-tac630.htm
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