メ−ルマガジン
 

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      エチオピア・フィールドだより
        Ethiopia News Letter
   http://areainfo.asafas.kyoto-u.ac.jp/efs/
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              Feb. 2008[Vol.022]

          【もくじ】

     □ フィールドたより:山本 雄大
     □ コラム:ワンビレッジ・ワンプロダクト(OVOP)
     □ EFS通信 No.22
       (1)ナイル・エチオピア学会第17回大会参加申し込み受付中
       (2)新刊紹介:
          「エチオピアを知るための50章」(岡倉登志編)
          「アフリカンキッチン英語版」
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        ■ フィールドたより ■
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        「食品産地とこだわり」

山本雄大・京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科博士課 程

ある年のクリスマスの日、お世話になっている家族にタッジという蜂蜜
酒を振舞われたことがある。タッジは、木の枝の煮汁に蜂蜜を溶かして
発酵させる酒だ。甘さと苦味と酸味が入り交じり、爽やかな味がする。
町の酒場では年中飲むことができる。しかし、家庭で作られるタッジを
飲ませてもらったのはこれが初めてだった。店で出されるものよりも蜂
蜜の香りが強く、バターと香辛料が多めのご馳走にもよく合った。奥さ
んに感想を伝えると「そりゃあ、私が作ったんだし、ゴッジャム産の蜂
蜜を使っているからね」と胸を張られた。

ゴッジャムは、この町から首都アジスアベバをはさんで北に約400k
m離れたアムハラ州の一地方の名前である。ゴッジャムに限らず、エチ
オピアの各地では、花の咲く木の枝などに巣箱を設置しておくタイプの
養蜂がおこなわれていて、この町周辺でも盛んである。それなのになぜ、
それほど離れた土地から運んでくるのだろうか?話によると、ゴッジャ
ム産の蜂蜜専門の商人までいるという。

たずねてみると、いくつか理由を説明してくれた。ゴッジャムは気候が
よく、鮮やかなオレンジ色の蜂蜜が採れる花が咲くのだという。またこ
の地域は、アムハラ州の中でも田舎にあたり「本当の」アムハラ文化を
残しているのはこの地方だけであり、伝統的な酒を造るのにここの蜂蜜
は適しているのだという。

私は、エチオピアの食や嗜好品について研究している。食品の作り方や
材料について人々と話す機会が多い。そこで頻繁に聞かされるのが「あ
る産地のものだからよい」とされる材料の話だ。蜂蜜以外にも南部地域
の主食であるエンセーテの発酵食品(コチョ)や、エチオピア料理に欠
かせない発酵バター、各種の香辛料、コーヒー、噛むと覚醒作用の得ら
れる木の葉(チャット)など、ありとあらゆるものに有名な産地がある
ように思われる。それぞれのよさを説明する際には、その土地の気候な
どの環境条件とともに、技術や歴史などの文化的背景や個々人の思い入
れが語られる。

エチオピアでは、直線距離で20km違えば標高が数100m変わって
しまうこともめずらしくない。隣村でも気候がまったく違うことがある。
日常の食事の材料は自給できても、嗜好品や祭日の食事の材料となると
どこの村でも栽培できるわけではない。村に無いものは交易によって手
に入れる必要がある。しかし、そういった単なる必要性を超えて、わざ
わざ遠くから運ばれてくる食品や産地に関する説明に、私はエチオピア
人の食へのこだわりを感じる。

>山本雄大さんは、2001年からエチオピアで嗜好品や食文化につい
て調査をすすめてこられました。嗜好品作物としてのチャットの栽培・
利用などについて『生き物文化誌』にとても興味深いエッセイをまとめ
ています。

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            ■ コラム ■
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     「ワンビレッジ・ワンプロダクト(OVOP)」

2月10日付けの読売の社説では、日本の地域活性化策が国際化した事
例として一村一品運動を高く評価しています。アジア(タイなど)で、
「ワンビレッジ・ワンプロダクト(OVOP)」の名でひろまり、アフ
リカでは、ガーナ、マラウイなどで活動がはじまっているそうです。エ
チオピアもまた参加を表明しているそうです。エチオピアの知り合いに
OVOPの話をすると「ひとつの村でひとつだけしかつくっちゃだめな
のか?」という質問をされてしまうほどなので、可能性の芽はたくさん
あるといえます。山本さんのエッセイでも、エチオピアの人たちの材料
へのこだわりがとても具体的に伝わってきます。ひとつひとつの産品が
貿易品となって世界の多くの人々に知られることは、経済的な発展の文
脈において切望されていることかもしれません。しかしそれ以上に、地
域に暮らす人たちがその産品をこれまでと変わりなく十分に楽しむこと
ができ、自分たちがその地域に暮らすことを誇りに思えるような活動と
して展開していくことを願います。

>読売社説(2月10日付け)
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20080210-OYT1T00006.htm
>エチオピアでは、JICAがすすめているFRGプロジェクト(農業
普及員と農民との情報交換や協働を推進するプロジェクト)と連携して
一村一品プロジェクトがはじめられているようです
http://project.jica.go.jp/ethiopia/5065025E0/news.php?itemid=2801&catid=90
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        ■ EFS通信 No.22 ■
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(1)ナイル・エチオピア学会第17回大会参加申し込み受付
4月19日(土)・20日(日)第17回日本ナイル・エチオピア学会
学術大会が弘前大学で開催されます。発表の申し込みは1月31日で締
め切られましたが、参加申し込みは4月1日までです。下記メールアド
レス宛に「氏名・所属・連絡先・懇親会参加の有無・有職者か学生か」
を記して参加申し込みしてください。さくら祭りのシーズンと重なりま
すので、お早めにホテルの予約をしてくださいとのことです。宿泊や交
通手段については、ホームページに詳細な情報が掲載されています。ぜ
ひご覧ください。
>学会参加申し込み:氏名・所属・連絡先・懇親会参加の有無・有職者
か学生かを明記のこと
janes-hirosaki@mbe.nifty.com
>ホテル・交通情報などについて
http://www.nacos.com/janes/

(2)新刊紹介
・『エチオピアを知るための50章』(岡倉登志編)
昨年12月に明石書店からエチオピアを知るための50章が出版されま
した。目次など内容の詳細は、以下のサイトでご覧になることができま
す。
http://www.akashi.co.jp/Asp/details.asp?isbnFLD=4-7503-2682-8

・『アフリカンキッチン英語版』店頭販売開始
以前このメルマガでも紹介しましたが、アフリカを理解するためのシリ
ーズのうちのアフリカン・キッチンが英訳され、エチオピアのshama
booksから出版されました。エチオピアでは、ヒルトンホテル、シ
ェラトンホテル、ブックワールドなどでお買い求めできます。下記のサ
イトからも申し込みできます。
http://africa-rikai.net/projects/books.html

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         ◇ 編集委員から ◇
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たいへん遅くなりましたが、本年もエチオピア・フィールドたよりをよろ
しくお願いいたします。今回は、エンセーテの繊維の灰汁炊き実験をしな
がら、生活の場面における「縛る・束ねる・結ぶ・編む・縫う・織る」と
いった行為について調査してきました。少年、少女がいつころからどうい
う種類の「縛る」という行為ができるようになっていくのか、人々が束ね
たものが市でどんな「単位」としてやりとりされているのか、竹を編んで
つくった加工品のサイズとその意味など、想像以上に豊かで奥深い世界が
ひろがっていることがわかり、これを「生活技術文化」としてまとめてい
きたいと思っているところです。(金子守恵)
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発行:京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科・
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