メ−ルマガジン
 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
     エチオピア・フィールドだより      
      Ethiopia News Letter    
  http://areainfo.asafas.kyoto-u.ac.jp/efs/
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
              Apr. 2008[Vol.023]
      
          【もくじ】  

    □ フィールドたより:宇野純子
    □ コラム:WaterAid Ethiopia    
    □ EFS通信 No.23
    (1)日本ナイル・エチオピア学会開催せまる(4月19日・20日)
    (2)ディヴィッド・タートン博士来日講演(4月16日)
------------------------------------------------------------------------
         ■ フィールドたより ■
------------------------------------------------------------------------
                     「開発について」
              宇野純子・国際協力機構(JICA)

古くて永遠の課題「開発について」久しぶりにアラバ(エチオピア南部)
で考えた。私の仕事は「開発援助」だ。これまで「水」に関わるプロジ
ェクトにたずさわってきた。2006年1月から9月まで、海外長期研
修の一環としてエチオピアのNGO、WaterAid 
Ethiopia(本部イギリス)で働く機会を得て、アディスアベバに
暮らしていた。

プロジェクト・サイトへの道はとても悪く、かつ荒涼とした感じだった。
こんなことを考えてはいけないのだろうと思いつつ、地方(rural)
の仕事をする意味って何なのかと考えてしまった。簡単に言うと、なん
でこんなところに住んでるんだろう、と思ったのだ。とても勝手だが。

都市(Urban)の仕事はなんとなくわかる。人が集まりすぎて、あ
まりに住環境が劣悪になるので衛生的にすることが必要な気がする。し
かし地方はどうだ。自然の浄化作用の能力がまだ高くて、そして、人は
その気になれば移動していけるはずではないか?こんな遠隔地に、井戸
や天水をあつめる施設をぽつんぽつんとつくっていくのって、とても効
率が悪いうえに永遠に終わらないのではないだろうか。こんなことを言
ったらだれかに「確かに人は移動できる。でもどこへ?」と問い返され
てしまいそうだけれど。

荒涼とした川のまわりに裸足の人びとが集まって水を汲んでいるのを見
たとき「水衛生」を専門としているものとしては絶対に考えてはいけな
いことを思ってしまった。「なんでこのままじゃだめなんだろう」

みんなは、どういう開発を望んでいるのだろう。裸足が靴に変わること
が開発なのか?水質が良くなる、水が汲みやすくなる、トイレができる、
手を洗って病気が減ること?しかしその先になにかがないと、この遠隔
地にぽつんぽつんと施設をたてていく仕事に終わりはこない。

でもその先の何かを求めてしまうところが、はじめから先進国に生まれ
た人の考え方なのかもしれない。
分からない。

>宇野さんはエチオピアでの長期研修期間中に、EFSの国際ワークシ
ョップ(テーマ:文化と開発のポジティブな関係)に参加してくださり、
そのときのご縁で今回エッセイを書いていただきました。
>現在JICA南アフリカ事務所に勤務されている宇野さんから一言:
アディスに住んでいる間は、エチオピア人との仕事に苦労したり、ほか
の国へ行きたいと思ったりしていたのですが、離れてみると懐かしいよ
うな恋しいような気持ちになっています。アディスでの暮らしが始まっ
てからぽつぽつと自分のツボにはまったことを書き留めていました。そ
の中から今回は、2006年2月7日に書いたものを加筆修正しました。

-------------------------------------------------------------------------
    ■ コラム:WaterAid Ethiopia ■
-------------------------------------------------------------------------
宇野さんが研修をおこなった、WaterAid Ethiopiaは、
エチオピアにおいて水・衛生に関わる活動を中心におこなっています。
このNGOは、UNが水資源についてのプロジェクトを展開した時期(
1981−1990)に設立されました。だれもが安全な水にアクセス
し水を衛生的に利用できることや、コミュニティで持続的に水・衛生管
理ができることなどをめざして活動しています。現在、エチオピア国内
のパートナー(ローカルNGO、大学、州レベルの開発局など)ととも
に水・衛生に関するプロジェクトをおこなっているそうです。アムハラ
州、ティグレ州、オロミヤ州、南部諸民族州などで、水源の保護、井戸
(手動・電動)の設置、トイレを作ることや手を洗うことの重要性につ
いての普及などの活動を展開しています。現在は、エイズ患者のための
水・衛生に関する活動も展開しているそうです。
>WaterAid Ethiopiaについて
http://www.wateraid.org/ethiopia/default.asp
http://www.wateraid.org/ethiopia/about_us/default.asp
>プロジェクトで展開している技術・活動
http://www.wateraid.org/ethiopia/what_we_do/692.asp

-------------------------------------------------------------------------
        ■ EFS通信 No.23 ■
-------------------------------------------------------------------------
(1)日本ナイル・エチオピア学会開催せまる
4月19日(土)20日(日)の2日間にわたり、弘前大学において日
本ナイル・エチオピア学会が開催されます。1日目は「津軽とエチオピ
ア、飢餓の経験」というテーマで公開シンポジウムが開催されます。食
糧不足に対する人びとのローカルな実践に焦点をあてることを主眼とし
ています。1日目午後と2日目は計15名が個人研究発表する予定です。
>学術大会およびシンポジウムの詳細については、学術大会情報・第3
次サーキュラーに掲載されています。
http://www.nacos.com/janes/
>青森空港−弘前市間は乗り合いタクシー(青空便)があります。前々
日までであればインターネット予約できます。前日の場合は、電話予約
してください(北星交通:0172−33−3333)
http://www.hokuseikotsu.co.jp/aozora/aozora.htm

(2)ディヴィッド・タートン博士来日講演
1960年代からエチオピア西南部に暮らす牧畜民ムルシについて人類
学的な調査研究をすすめてこられたディヴィッド・タートン博士が4月
16日に大阪大学(人間科学部・吹田キャンパス・東館106)におい
て講演されます(演題:地域性とランドスケープの社会構築:「地域の
臣民」から「国家の市民」へ−エチオピア西南部におけるオモ川下流域
の事例より−)。
http://gcoe.hus.osaka-u.ac.jp/news.html
>タートン博士は、大阪大学大学院人間科学研究科・グローバルCOE
プログラム(「コンフリクトの人文学国際研究教育拠点」)によって招
聘されました。このプログラムは、人類学の諸分野を専攻する研究者が
中心となり「グローバルな次元におけるコンフリクト」という問題につ
いて実践的研究を推進し優秀な人材を育成する(ホームページより転写)
」ことをめざして2007年度からはじまりました。
http://gcoe.hus.osaka-u.ac.jp/index_japanese.html

---------------------------------------------------------------------
          ◇ 編集委員から ◇
---------------------------------------------------------------------
宇野さんとエッセイに関してメールでやりとりしていたとき「エチオピ
アで研修していたときのように、今の勤務地(南ア)のことを知ろうと
することがなかなかできていません」と嘆いていらしたのが印象的でし
た。決められたスキームとタイムスケジュールのなか、フィールドワー
クとは比べものにならないくらい速く物事がすすむ世界で、現場のこと
を知り、その地域に暮らす人びとと対話するのはとてもむずかしいにち
がいないと想像します。そういう状況にどれほど影響をあたえられるの
かわかりませんが、最近の大学院教育は、研究と実践の融合がキーワー
ドのようです。地域に暮らす人びとの実践に学び、協働するための人材
育成をめざしています。(金子守恵)
>京都大学ASAFAS「魅力大学院プロジェクト」。現在後継プロジ
ェクトを準備中。
http://www.asafas.kyoto-u.ac.jp/miryoku/index.html
>大阪大学グローバルコラボレーションセンター
http://www.glocol.osaka-u.ac.jp/about/index.html

----------------------------------------------------------------------
メールマガジンへのご意見・投稿はこちらまで
→Ethiopia_FS@jambo.africa.kyoto-u.ac.jp
----------------------------------------------------------------------
◆このメールは「まぐまぐ」のシステムを利用して配信しています。新
規登録・解約は下記ページにてお願いします。
http://areainfo.asafas.kyoto-u.ac.jp/efs/j/magazine.html
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
このメールマガジンは、京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究
科に在籍してエチオピアで調査研究をおこなう若手研究者が中心になっ
て作成・編集しています。エチオピアの地域研究情報を不定期に電子メ
ールで配信しています。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
発行:京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科・
   エチオピア研究グループ
http://areainfo.asafas.kyoto-u.ac.jp/efs/index.html
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
Copyright(c)2008 EFS. All Rights Reserved.