研究者紹介

伊藤義将

Yoshimasa Ito
日本学術振興会特別研究員<DC2>

研究テーマと関心領域

研究テーマ: エチオピア南西部高地森林に住む人々と「Geraの森」との関係

キーワード: 植物/森林利用、在来知識

関心領域: エチオピア研究、民族植物学、文化心理学


調査の概要

FAOの報告によるとエチオピアにおいて森林は全国土の約4%にあたる450万ヘクタールしか残されていない。エチオピア南西部の熱帯高地森林域は、全国土の森林の約75%を占めており、1994年にはエチオピア政府によってベレテ・ゲラ森林保護区域に指定された。調査期間中は、この保護区域の一部であるゲラ行政区の北部に滞在し、人々と森林との関係を明らかにする目的で植物利用に関する調査をおこなった。

これまでの調査では以下の点があきらかになった。(1)ゲラ行政区の北部に住む人々は、70−80年ほど前に北部よりも標高が低く温暖な南部から移住し、穀物栽培や家畜の放牧を行うためにこの地域の森林を切り拓いてきたこと、(2)彼らは現在も乾季になると南部の「コーヒーの森」にでかけていきコーヒーの収集作業をおこなっていること、(3)彼らは、燃料を入手したり家を建築する場合、居住域に隣接する森林から特定の樹種を選択的に入手したり建材を再利用するなどしており、森林を無限定に伐採しているわけではないこと、(4)農具、杖、薬については、南部の森林域だけに生育している樹種を利用したり、南部から有用植物を居住域に持ち込んで栽培していること。

今後は、村の人々が北部と南部の土地を使い分けて生業活動を営んでいる点に注目しながら、森林保護区域をめぐる行政、NGO、開発組織などの諸アクターによる関わり方をふくめて、人々と森との関係について調査研究をすすめていく予定である。

調査歴

2003年10月-2004年1月
2004年6月-2005年3月

業績

学位論文:

2005『エチオピア南西部高地森林域における野生植物利用:ジンマ郡ゲラ行政区に住む人々と「Geraの森」との関係」』京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科・博士予備論文.

学術論文など:

2007 “Forest Utilization in the Highland Forest Area of Ethiopia,” Proceeding of 16th International Conference of Ethiopian Studies.

2005 “Wild Plant Utilization in the Highland Forest Area of Southwestern Ethiopia: Relationships between People and the Bosona Forest in Gera Wereda”, Proceedings of the 7th Kyoto University International Symposium, Coexistence with nature in a 'Glocalizing' world: field science perspectives, pp.165-174.

エッセイ:

2006「絶え間なく変化し続ける人と森の関係:ゲラの森の生態史」『JANES ニューズレター』16号:45-47.

口頭発表:

2007 “Forest Utilization in the Highland Forest Area of Ethiopia,” 16th International Conference of Ethiopian Studies, Trondheim, Norway. Jul.2-6.

2007「エチオピア南西部高地森林域における森林利用」日本アフリカ学会 第44回学術大会、2007年5月26日、27日、於長崎大学.

2007年「エチオピア南西部『野生コーヒーの森』の成立過程」日本ナイル・エチオピア学会 第16回学術大会、2007年4月14日、15日、於慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス.

2006「エチオピア南西部高地森林域おける野性植物利用:ジンマ郡ゲラ行政区に住む人々と「Geraの森」との関係」日本ナイル・エチオピア学会 第15回学術大会、2006年4月15日、16日、於南山大学.

2006 “Sustainable Plant Use in Gera, the Forest Area of Southwestern Ethiopia,” 21st Century COE Program Aiming for COE of Integrated Area Studies, International Workshop in Ethiopia “Positive Relationships between Culture and Development in East Africa,” Addis Ababa, Ethiopia. Feb. 4-5.

ポスター発表:

2005 “Wild Plant Utilization in the Highland Forest Area of Southwestern Ethiopia: Relationships between People and the Bosona Forest in Gera Wereda”, The 7th Kyoto University International Symposium on "Coexistence with Nature in a 'Glocalizing' World," Bangkok, Thailand. Nov.23-24, 2005.