フィールドワーク報告
  (1) 研究課題 (博士論文に予定しているタイトル)
(2) 博士論文において目的としていること
(3) そのうち,今回の現地調査で明らかにしたこと
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渡航期間: 2003年11月21日〜2004年3月25日, 派遣国: インド
(1) 現代インドにおける伝統的治療実践の動態
加瀬沢雅人 (東南アジア地域研究専攻)
キーワード: 伝統医療,再帰的変容,グローバル化,知の共有,ナショナリズム


村落で治療にあたる治療家。彼は脈を診断することで疾病の原因や状態を把握する。
(2) 本論文の目的は、いわゆる伝統医療の現代における動態を明らかにすることである。今日、地域に根付いた治療実践である伝統医療はグローバル化により大きな変容を強いられている。現在、インドでは、海外からの多くの患者がアーユルヴェーダに基づいた伝統医療の治療をうけるために訪れるようになっているのに加えて、アーユルヴェーダが世界各地で実践されるようになってきている。本論文は、世界規模で展開をはじめたアーユルヴェーダに基づく伝統医療の、その発祥地域において、現地の人々が自らの伝統医療をどのように再帰的に解釈し、変容せしめ、関わっていこうとしているのかを明らかにする。

(3) 今回は2003年11月から2004年3月にかけて、南インド・ケーララ州トリヴァンドラム地域で伝統医療を行なう治療家たちが、治療に関わる知を共有していこうという目的のもとに結成した組織の活動を調査した。
  ここ数年、伝統医療を行なう治療家の間では、結束して個々のもつ治療に関する知識を共有し、現代社会に適応できるように治療法を改善していくべきだという意識が高まっていることがわかった。その背景には、西洋医学が普及し村人が伝統医療を実践する治療家から急速に離れてゆく状況、現代社会の疾病状況に対応できなくなってきたという個々の治療家の問題、そして、世界的に知的所有の認識が浸透する状況下で、治療家自身が治療に関する知を彼らの集団内に囲い込む傾向が増大したという3つの理由が存在していた。

 
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