フィールドワーク報告
  (1) 研究課題 (博士論文に予定しているタイトル)
(2) 博士論文において目的としていること
(3) そのうち,今回の現地調査で明らかにしたこと
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渡航期間: 2003年7月20日〜8月3日, 派遣国: ミャンマー
(1) ミャンマー・バゴー山地におけるタウンヤ式チーク造林の長期持続性−過去100年間の生態環境の変遷−
鈴木玲治 (東南アジア地域研究専攻)
キーワード: タウンヤ,チーク造林,土壌有機物,植生遷移,野火


気象モニタニングステーション
(2) 本研究の調査対象地であるミャンマー連邦バゴー山地では、タウンヤによるチーク造林が19世紀半ばより今日まで継続的に営まれてきた。これほど長期に及ぶチーク造林の継続は世界でも他にほとんど例をみず、ミャンマーのチーク造林は熱帯造林の希有な成功例として語られている。
  しかしながら、チークの伐採時には大量のバイオマスが持ち出されるため、造林2サイクル目以降には地力の大幅な低下が危惧され、また、チークの一斉造林には、土壌浸食や病虫害の激化等の様々な生態学的問題点が伴うことも指摘されている。長い歴史をもつミャンマーのタウンヤではあるが、このような問題点に着目して長期的なタウンヤの持続性を定量的に論じた研究事例はほとんどなく、将来的な持続性については再検討する必要がある。
  本研究では、ミャンマーのタウンヤ式チーク造林を例に、タウンヤの長期的持続性を「養分収支」及び「生態学的特性」の観点から評価し、さらに、「社会経済的要因」からみた持続性についても考察を加え、持続可能な農林手法としてのタウンヤ法のあり方について論ずることを目的とする。

(3)  チーク造林地のチークが伐採された後、(1)そのまま放置された伐採跡地及び、(2)2サイクル目のタウンヤが始められた造林地において、土壌サンプリング及び植生調査を行った。チーク伐採跡地ではタケを中心とする植生の回復が認められ、伐採直後の土壌侵食の危険性が軽減されていることが示唆された。また、2サイクル目のタウンヤ造林地では、間作物の生育があまり良好ではなく、土壌肥沃度が低下している可能性が示唆された(採取した土壌は、現在分析中)。
  また、バゴー山地に設置した7カ所の気象モニタリングステーションのデータから、バゴー山地では降水量に明確な地域差があり、バゴー山地の西斜面は東斜面に比べ乾燥し、また両斜面共、北に行くほど乾燥が強くなっていることが確認された。これらのデータは、バゴー山地内でのチーク造林適地を判断するうえで、非常に有用であるといえる。

 
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