報告
渡航期間: 2003年10月18日〜2003年11月16日    派遣国: ザンビア、ナミビア
  出張目的
  フィールド・ステーション機能の整備と、ザンビア東部州・ナミビア北部における臨地研究
  荒木茂 (大学院アジア・アフリカ地域研究研究科・アフリカ地域研究専攻)

 

  活動記録
  10月18日(土)〜10月19日(日)
  • 京都 − ルサカ(ザンビア)
      10月20日(月)〜10月21日(火)
  • ザンビア大学社会経済研究所にて研究打ち合わせ
      10月22日(水)〜10月28日(火)
  • ザンビア東部州において臨地研究指導
      10月29日(水)〜10月31日(金)
  • フィールド・ステーション機能の整備
      11月1日(土)〜11月3日(月)
  • ルサカ(ザンビア) − ウィントフック(ナミビア)
      11月4日(火)〜11月5日(水)
  • 砂漠研究所にて研究打ち合わせ
      11月6日(木)
  • ウィントフック−オシャカティ(ナミビア)
      11月7日(金)〜11月16日(日)
  • オシャカティ周辺にて臨地研究、現地離隊

     

      結果と進捗状況
     
    (1)ザンビア大学における研究打ち合わせ
      カウンターパートであるザンビア大学社会経済研究所長ムレンガ博士と、理学部チズマヨ教授との研究打ち合わせにより、平成17年度にルサカにおいて南部アフリカにおける社会経済変動と地域変容に関するワークショップを開催することの合意および研究協力体制が得られた。ムレンガ博士は、平成16年11月より平成17年3月末まで、本研究科客員助教授として招聘することの合意が得られた。
    (2)フィールド・ステーション機能の整備
      在ザンビア日本大使館勤務の日本人宅一室を借り受け、南部アフリカで調査をおこなう学生の情報集積、連携研究のためのコンピュータ、インターネット環境の設置をおこなった。GISを利用した参加型データベースを構築することにより、南部アフリカ研究者が随時、データ集積をおこなうことを次年度におこなう手はずを整えた。基本図、GPSデータとディジタルカメラの整備などをおこないつつある。
    (3)臨地研究指導(ザンビア東部州)
      村尾るみこさん(平成12年度入学)には、ルサカにおいてフィールド・ステーションの維持と整備に関する指導を、吉川竜太さん(平成15年度入学)には、ザンビア東部州における臨地研究の導入をおこなった。ザンビアを構成する3大民族の1つであるチェワ社会への農業生態的アプローチは今回が初めてであり、人口密度が40人/Km2とザンビアの中でも高い人口密度をしめす農村社会の特質と変容の解明が期待される。特に構造調整導入後の生産方式の多様化は著しく、農家レベルでの個別生計戦略と村、地域レベルでの動態の把握が鍵となることが予想される。
    (4)臨地研究(ナミビア北部)
      ウィントフックの砂漠研究所において、2年後のルサカ・ワークショップへの協力を要請し、北部における共同研究の打ち合わせ、およびNational Planning Commissionにおいて1990年、2000年のディジタル人口センサスデータを入手したのち、オシャナ、オムサティ州の2村において土地境界のGPS測量、家族構成調査をおこなった。また、現地離隊ののちも他の2村において同様の調査を継続した。これらの調査結果とランドサット画像と照合させることによって、村ごとの生態環境、立地条件、歴史の違いが現在の農業経営とその規模にどのような影響を与えているかを明らかにする。

     

      今後の課題
        ザンビア・フィールド・ステーションは、南部アフリカ6カ国を視野に入れているために、臨地研究の連携を各国間でうまくとっていく必要がある。共通する特徴としては、白人とアフリカ人の共存社会であり、白人の社会、経済的影響力が強いこと、資本投下の著しい都市と伝統的農村がモザイク状に隣接し、独特のダイナミズムを作り出していること、基本的に低人口密度地帯であり(マラウィを除いて)、土地集約化へのインセンティブが低いこと、などがこれまでに得た印象である。今後、各国におけるカウンターパートの研究動向をしっかり把握した上で、ワークショップの具体案を作成する予定である。

     

     
    オバンボランドにおけるモパネ材の伝統的家屋(ナミビア)
    水道と電気のネットワークが、オシャカティを中心に発達している。
      オシャカティの街灯つきハイウェー (ナミビア)
    北部の都市オシャカティは、近年資本の投下が著しく、銀行、スーパー、 ブティックなどカラードの人たちが経営する店が多数出現している。
    ルサカ市街(ザンビア)
    ルサカ駅(右手)と目抜き通りであるカイロロード(左手)を北に遠望する。
    中央郵便局(青色の建物)、ザンビア銀行(手前)などが写っている。
     
    ウィントフック市街(ナミビア)
    丘にはさまれたアカシア叢林の中に街がつくられている。 中央の高層ビル群は、目抜き通り沿いのオフィス群で、白人、 カラード、黒人のホワイトカラー族がひしめく。
      ザンビア東部州の典型的農村景観
    花崗岩の残丘の周囲に広がる平原の村。構造調整前には トウモロコシの一大産地を形成したが、現在では綿、タバコ などへの多角化をはかっている。
     
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