報告
渡航期間: 2003年12月24日〜2003年12月29日    派遣国: マレーシア
  出張目的
  マレーシア・フィールド・ステーションにおけるネットワーク環境の調査と整備
  梅川通久 (大学院アジア・アフリカ地域研究研究科・東南アジア地域研究専攻)

 

  活動記録
  12月24日(火)
  • 関空発 − クアラルンプール着
      12月25日(水)〜28日(金)
  • マレーシア国民大学内マレーシア・フィールド・ステーション事務室にて、ネットワークおよびコンピュータの整備。
      12月29日(土)
  • クアラルンプール発 − 関空着

     

      結果と進捗状況
     

      今回の渡航は、

    • マレーシア・フィールド・ステーション及びカウンターパートのネットワーク事情調査
    • マレーシア・フィールド・ステーションにおけるネットワーク環境の整備
    の2点を目的としている。調査に関しては、主に現地キャンパスネットワーク担当者との会談、および視察などから情報収集を行った。また、調査・整備作業ともに、東南アジア研究所の木谷助手と共同で行った。

    (1)キャンパスのネットワーク事情
      マレーシア・フィールド・ステーションの事務室は、クアラルンプール市郊外バンギのマレーシア国民大学(UKM)マレー世界・文明研究所(ATMA)キャンパス内にある。大学内のネットワーク事情を知る為に、UKMコンピュータセンター (Pusat Komputer) のIbrahim Taat研究員と会談し、現状の説明を受けた。
      UKMのネットワーク環境は、622MbpsのATM基幹ネットワークを中心に、末端で 10Mbpsの回線を用いており、5-7000人程度のネットワークユーザーを擁している。また、一般に情報機器の接続はコンピューターセンターへの申請による固定グローバルIP の取得によるが、PC等の端末機器についてはグローバルIPのDHCPによって接続する事が出来る。フィールド・ステーションに今回設置した端末機器についても、DHCP接続を行う事が出来た。
      コンピューターセンター内のルータをエッジとして、内部の主要なネットワークとDMZ ネットワークを分離し、センターはDMZに対して不正アクセス及びウィルスの監視を行っている。不正アクセス等の監視については、webに関連するポートのみ対象としている様であったが、内部の主要ネットワークへは外部からのアクセスを許さない、常識的なセキュリティ構成をとっており、この面では十分に信頼する事が出来る。
      大学関係者が大学のネットワークへアクセスする場合、アナログモデムによるダイアルアップとDSLを用いた2つの方式が用意されている。いずれも大学側アクセスはマレーシアの著名な通信会社であるテレコムマレーシアによるサービスを利用している。アナログモデムの場合は56kbpsの通信速度で18-20RM/月程度の費用、 DSL接続の場合は2Mbpsで2000RM/月程度の費用がかかり、特にDSL接続については日本国内よりも割高である。費用の水準が通信企業の競争関係に依存して決まっているのか、技術水準によるのかという点までは、今回調査することが出来なかった。フィールド・ステーション事務室の現在の設備では、この外部からのアクセス設備を利用する機会はまだ無いが、将来的に学内のサーバーマシンの利用が可能となった場合や、独自にログインサーバーやファイルサーバーをunixベースで立ち上げる場合には、長期滞在中のスタッフ・院生の利便性を大きく高めるサービスとして、常に利用の機会を考慮しておくべきである。
      また、ATMAのネットワーク利用研究の実例として、ATMA所長である A. B. Shamsul 教授より、同研究所で構築している研究資料、文献へのポータルサイトの事情の説明を受けた。教授のお話によると、例えばロボットプログラムを使用したネットワークからの関連情報収集などは行わないものの、関連文献や資料をデータベースから検索によって呼び出し、閲覧者に提供するシステムを構築中で、すでに稼動しているとの事である。利用者は、ホームページから複数の文献・資料のデータベースへ階層を異動し、各データベース上で検索フォームを用いて、ヒットした文献等を閲覧する仕組みとなっている。
      文献データベースなどの構築は、研究者間の情報共有や研究成果の開示に重要であり、さまざまな試みが行われている。ATMAにおけるこの様な試みも、その線上に乗ったものと言え、さらに各データベースの統合的横断検索の充実なども期待される。
    (2)ネットワーク整備
      実質2日間程度の時間をとり、フィールド・ステーション事務室への端末整備作業を行った。
      事前の準備段階では、a. メールサーバーの構築と端末環境の整備、 b. 固定IP付与による端末の整備、c. DHCPによる端末の整備、d. 物理的な不備を埋める為の申請などの事務段階からの作業、の4通りの可能性を考慮して準備を行った。実際の作業では、情報コンセントはすでに整備されており、キャンパスのネットワークへの物理的な接続は直ぐに行う事が出来た。また説明の通りDHCPによる接続が可能であり、結果としてサーバーの整備やコンピューターセンターへの申請などが全て不要なc.方式による整備となった。
      設置作業の結果、ASAFAS,CSEASのサーバーマシンへの、マレーシア・フィールド・ステーション事務室からのアクセスが可能となり、メール、ウェブ、sshによるログイン等が可能となった。
      余談ではあるが、開通初日にマレーシア・フィールド・ステーションより京都大学に、メールの第一報が送信されている。

     

      今後の課題
        今回の調査で、現地のネットワーク環境を詳しく把握する事が出来た。しかしながら、実際の情報環境整備においては、独自のネットワーク環境の構築というところまでは及ばず、単純な端末、クライアント環境の整備にとどまった。今後のフィールド・ステーション事務室の利用状況によっては、独自のメールサーバー等の立ち上げも考慮する必要があるかもしれない。

     

     
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