報告
渡航期間: 2005年2月6日〜2005年2月13日    派遣国: ラオス
  出張目的
  ラオス・フィールド・ステーションによる国際ワークショップ「ラオスにおける在地の知識と農林水産業を基幹とする持続的開発におけるその役割」(サワナケート・ワークショップ)およびスタディ・ツアー参加と生態資源利用の調査
  岩田明久 (大学院アジア・アフリカ地域研究研究科・東南アジア地域研究専攻)

 

  活動記録
  2月6日(日)
  • 関空 − バンコク空港
      2月7日(月)
  • バンコク空港 − ヴィエンチャン
     
  • ヴィエンチャン到着後、ラオス国立大学農学部を訪問し、今後の共同研究について話し合いを行った。その後、同大学林学部教員と面会し、国際ワークショップ「ラオスにおける在地の知識と農林水産業を基幹とする持続的開発におけるその役割」(以下、サワナケート・ワークショップと呼ぶ)の内容についての最終確認を行った。
      2月8日(火)
  • 早朝、ヴィエンチャン・トンカンカム市場で生態資源利用の状況を視察後、陸路サワナケートに移動した。
     

    2月9日(水)

  • サワナケート県農林局コンベンションホールで開催されたサワナケート・ワークショップに出席。
      2月10日(木)
  • サワナケート・ワークショップに出席するとともに発表を行う。
      2月11日(金)
  • スタディ・ツアーを行うため、サワナケートよりゲンコク村に移動し、同村にあるチャンポン郡農林局を訪問後、バーク村に移動して参加した院生や教員のテーマにそって野外調査を行った。その後ゲンコク村のゲストハウスに宿泊した。
      2月12日(土)
  • 早朝、ゲンコク村の市場で生態資源利用の状況を視察後、ターレオ村を訪問し、村長さんから村の名前の由来、成立、特徴などについて聞き取り調査を行った。その後サワナケートに戻り、メコン河を船で渡ってタイに出国した。タイのムクダハンに到着後、メコン河横断橋の建設現場を視察後、陸路ウボンラーチャターニーに向かい、空路バンコクへ移動、同日深夜、関西空港行きの飛行機に搭乗した。
      2月13日(日)
  • 早朝、関西空港に到着、帰学した。

     

      結果と進捗状況
     
    (1)臨地教育
      今回のラオス訪問の目的は、サワナケート・ワークショップへの出席とスタディ・ツアーの引率だった。
      増原氏の報告にもあるとおり、このワークショップは、1999年以来、同県チャンポーン郡およびアーサポーン郡で共同研究を行ってきたCSEAS教員の安藤和雄さんを中心とするグループが、その成果発表の一環として、農業、農村開発、普及の総合的アプローチを目指したワークショップを開催できないかと話し合ったことに端を発している。また、ASAFAS教員の岩田明久が代表となって、「ラオスBang hiang川流域住民の生業における生態資源利用に関する研究−伝統的文化の保存・継承と環境保全の視点から−(1999‐2001年度)」および「ラオスBang hiang川流域住民の生業における生態資源利用に関する研究−在地の知恵の記録と普及−(2001‐2003年度)」というサワナケート県を中心にして行われた研究に対してトヨタ財団から研究助成金をうけ、これらの調査に参加した人々が研究で得られた成果を地元に報告し情報を還元するという意味も込められていた。従って、双方の研究に従事した日本人の教員や学生自らが、その臨地において、成果を発表したという点で、臨地教育の一環の活動かつ大きな成果と位置付けられる。ASAFAS東南アジア地域研究専攻院生の小坂康之さん(平成12年度入学)、木口由香さん(平成16年度入学)、虫明悦生さん(東南アジア研究所研修員)はこの意味において貴重な体験を得られた。また、今回のワークショップでは地域間比較の観点から、アフリカ地域研究専攻の白石壮一郎さん(平成10年度入学)と黒崎龍悟さん(平成12年度入学)が参加しており、双方がアフリカでの研究テーマを紹介するとともにラオスとの比較をコメントした。この点も臨地教育の大きな成果と言えよう。さらに、傍聴者として参加した吉田香世子さん(平成13年度入学)と中辻亨さん(京大文学部)は各発表内容から重要な情報を収集する事ができた(増原氏の報告参照)。
      スタディ・ツアーの詳細は小坂さんの報告に譲るが、参加院生の白石、黒崎、中辻さんは当地をはじめて訪れることもあって、自分たちのフィールドとの差異と共通点をひとつひとつ感動を持って体感していた。
    (2)共同研究
      今後ともラオス国立大学農・林学部、水生生物資源研究センターとの共同研究を行うことを確認した。特にラオス国立大学ではラオス・フィールド・ステーションがコーディネーターとなり、21世紀COE研究員の増原さんが中心となって、様々な学部が参加して、日本とラオスの研究者による共同研究プロジェクトを立ち上げるべく準備を開始することとなった。
    (3)個別研究
      この地域は数年来野外調査を行ってきた場所だが、スタディ・ツアーを行ったバーク村は初めての訪問であった。この村でも他の村と同様に共同池の管理は村独自のルールで行われていることが分かった。共同池の岸辺では村人がチャンと呼ばれる落とし蓋式罠漁具を仕掛ける場所を決めており、その場所をサラァームと呼ぶという情報は新知見だった。また、魚を捕食するコサギといった鳥類を捕獲する罠をはじめてみることができた(写真―1、2)。

     

      今後の課題
        上記したように、ラオス国立大学の多くの部局が参加した共同研究プロジェクトについて今後、具体的な内容を検討すると同時に,ゲンコク村で現地の人々を中心としたワークショップ開催に向けての準備を開始する必要がある。また、小坂さんの報告にもあるように、スタディ・ツアーの最後に視察したタイのムクダハンとラオスのサワナケートの間に開通するメコン河横断橋が今後ラオス、特に当地域に与える影響について継続調査の必要性を強く感じるに至った。

     

     
    バーク村にある共同池の岸辺で、サラァームと呼ばれる場所に設置されているチャン(落とし蓋式罠漁具)。ライギョやヒレナマズの仲間を狙う。   バーク村にある共同池の岸辺で、おもにサギ類などの鳥類を捕獲するための罠。
     
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