報告
ラオス・フィールド・ステーション(LFS)活動報告(平成18年度No.1)
−「ラオス国立大学農学部・林学部最優秀卒業論文集第1巻」出版支援−
増原善之 (21世紀COE研究員)

  これまでの活動報告でもしばしば言及してきたとおり、LFSの基本方針は、カウンターパートを始めとする現地の人々と向かい合い、議論し合い、協力し合うという「地域密着型」研究活動の促進にある。今回は、カウンターパートとの協力事業の一環として行った「ラオス国立大学農学部・林学部最優秀卒業論文集第1巻」出版支援について報告したい。

(1)経緯

  LFSが置かれているラオス国立大学でも、学部卒業を控えた学生たちは、少なからぬ時間と労力を費やし、卒業論文の作成に一生懸命取り組んでいる。こうした卒業論文の中には、大学生、研究者、政府職員および一般市民の参考図書になり得るほど高い水準を有するものも少なくない。しかし、残念なことにこれらの卒業論文は同大学の図書館に保管されるのみであり、外部の人々の目に触れる機会はほとんどない。
  こうした状況を踏まえ、LFSは共同研究プロジェクト(LFS活動報告平成17年度No.1およびNo.3を参照)のカウンターパートでもあるラオス国立大学農学部と同林学部に対し、両学部生の研究成果を多くの人々に知ってもらうとともに、現在、調査・研究に取り組んでいる学生や若手研究者に刺激を与え、その活動を奨励することを目的とする「最優秀卒業論文集出版支援プロジェクト」を提案した。LFSと両学部との話し合いの結果、1.学部ごとに最優秀卒業論文選考委員会を設置し、前年度の卒業論文の中から最も優れた論文を1点ずつ選んでもらい、2.LFSがそれらを合本の形で出版し、全国の教育機関や研究機関に配布するとともに、3.LFSと両学部が協力して卒業論文最優秀賞授与式を開催することで合意に達したのである。

ラオス国立大学農学部・林学部
最優秀卒業論文集第1巻

卒業論文最優秀賞授与式の模様を
伝える新聞記事


(2)出版と配布

  今回、最優秀卒業論文に選ばれたのは、農学部がマーラーワン・チッタウォン(2004年卒業)の「トウガラシとギンゴウカンの色素が卵黄の色と鶏卵生産量に及ぼす効果について」、林学部がシーダーウォーン・チャンタウォン(2005年卒業)の「ルアンナムター県ナーレー郡サローイ村における森林物産の管理について」であった。LFSでは右2点の卒業論文を合本の形で300部印刷し、ラオス国立大学の全学部・関係部局、スパーヌウォン大学、チャンパーサック大学、ラオス農林省の関係部局・研究所および全国の県農林局など40以上の機関に無料配布した。
卒業論文最優秀賞授与式の模様
ラオス国立大学農学部(左)、同林学部(右)

(3)卒業論文最優秀賞授与式

  LFSはラオス国立大学農学部および同林学部と協力して、2006年7月10日(於農学部)および7月13日(於林学部)に卒業論文最優秀賞授与式を開催した。式典には各学部の学部長を始めとする教職員および学生が多数出席し、賞状および記念品の授与、学部長の挨拶、受賞者のスピーチなどが行われるとともに、筆者(増原)もLFSを代表して本プロジェクトの趣旨説明を行った。この模様は、全国紙『パサーソン』(2006年7月17日第2面)でも取り上げられ、ラオス側の関心の高さが感じられた。なお、LFSとラオス国立大学農学部および同林学部は、最優秀卒業論文集第2巻(農学部は2005年の卒業論文、林学部は2006年の卒業論文から選考)の出版にも合意しており、本年中に刊行される見通しである。

報告(平成18年度) >>No.2

 
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