:: 平成16年度 フィールド・ステーション年次報告
タンザニア
  (1)概要:
    タンザニア・フィールド・ステーション(以下、タンザニアFS)は、ダルエスサラーム郊外の住宅街にあり、ダルエスサラーム大学およびソコイネ農業大学との協力体制のもとで、調査研究の拠点、セミナー会場、資料整理と保管場所として活用しています。
平成16年度には、京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科(ASAFAS)の大学院生4名が当プログラムの資金によって派遣され、タンザニアFSを拠点として調査・研究に従事しました。別資金によって渡航したASAFASの教員4名がタンザニアFSの管理・運営にあたりながら、別資金で渡航したASAFASの大学院生・研究生8名を加えた合計12名の学生に対して臨地教育をおこないました。
タンザニアFSは、ASAFASの教員・大学院生以外にも、京都大学大学院農学研究科、同大学院理学研究科、同大学院地球環境学堂、東京工業大学、福井県立大学、東京外国語大学などの教員と大学院生によって広く活用され、その利用件数は、年間でのべ300人・日を超えています。
また、本年度はタンザニアFSにおいて二度公開セミナーを開催し、ASAFASの大学院生である小川さやか(平成12年度入学)と近藤史(平成11年度入学)が調査結果をまとめて発表しました。このセミナーについては、近々ホームページを開設して報告する予定です。
 
     
    農民セミナーに参加する黒崎とニンディ
(ルブマ州・ムビンガ県)
稲の脱穀を手伝う加藤と八塚
(モロゴロ州・ウランが県)
 
   
  (2)教員による臨地教育と研究活動:
    池野旬(ASAFAS教員)は、平成16年7月24日〜9月5日の期間、科研費によってタンザニアに出張し、「東アフリカ諸国のコーヒー産地をめぐる地域経済圏に関する実証的研究」のフィールドワークを実施するとともに、キリマンジャロ州で調査しているASAFASの大学院生、溝内克之(平成15年度入学)の臨地教育をおこないました。また、ダルエスサラーム大学との共同研究に向けて、研究の打合せもおこなっています。
掛谷誠(ASAFAS教員)は平成16年7月28日〜9月1日の期間、伊谷樹一(ASAFAS教員)は平成16年7月14日〜9月15日の期間、荒木美奈子(ASAFAS教員)は平成16年7月24日〜9月5日の期間、それぞれ科研費によってタンザニアに出張し、「地域研究を基盤としたアフリカ型農村開発に関する総合的研究」についての調査を実施するなかで、加藤太(平成14年度入学)、八塚春名(平成15年度入学)、神田靖徳(平成16年度入学)の臨地教育をおこないました。また、ソコイネ農業大学・地域開発センターにおいて、今後の共同研究のあり方について協議しました。
伊谷樹一(ASAFAS教員)は、平成16年10月16日〜12月3日の期間、科研費によってタンザニアに出張し、ムハンド(平成14年度第3年次編入学)、黒崎龍悟(平成12年度入学)、神田靖徳とともに現地調査を実施しました。
池野旬(ASAFAS教員)は、平成16年度11月4日〜26日の期間、科研費によってタンザニアに出張し、パレにおける農村社会経済の変容に関する調査を通して、松浦志奈乃(平成16年度入学)の臨地教育を実施しました。
 
   
  (3)大学院生の研究活動:氏名(入学年度)・渡航期間・調査経費・派遣国・研究テーマ:
   

David Gongwe Mhando(平成14年度第3年次編入学)・平成16年4月1日〜4月24日・当プログラム・タンザニア・「経済自由化後のコーヒー流通制度の変容と農民の対応―タンザニア、ムビンガ県の事例―」
小川さやか(平成12年度入学)・平成16年4月1日〜7月25日・当プログラム・タンザニア・「タンザニアにおける経済自由化以降の都市零細商業部門の変容に関する研究」
David Gongwe Mhando(平成14年度第3年次編入学)・平成16年10月16日〜11月15日・私費・タンザニア・「経済自由化後のコーヒー流通制度の変容と農民の対応―タンザニア、ムビンガ県の事例―」
加藤太(平成14年度入学)・平成16年4月1日〜8月14日・私費・タンザニア・「タンザニア・キロンベロ氾濫原における天水田稲作の生態と経営」
小川さやか(平成12年度入学)・平成17年1月19日〜3月31日・当プログラム・タンザニア・「タンザニアにおける経済自由化以降の都市零細商業部門の変容に関する研究」
溝内克之(平成15年度入学)・平成16年4月1日〜10月17日・私費・タンザニア・「タンザニア・キリマンジャロ山地域における人の移動:社会経済的背景と近年の都市=村落関係」
川西陽一(平成14年度入学)・平成16年4月1日〜7月11日・私費・タンザニア・「タンザニア・黒檀製彫刻の製作と流通」
八塚春名(平成15年度入学)・平成16年7月11日〜12月26日・私費・タンザニア・「サンダウェの環境利用に関する研究」
神田靖徳(平成16年度入学)・平成16年7月28日〜3月31日・私費・タンザニア・「アカシア林における天水田牛耕稲作地帯における土地利用」
松浦志奈乃(平成16年度入学)・平成16年11月3日〜11月24日・私費・タンザニア・「パレにおける農村社会経済の変容」
黒崎龍悟(平成12年度入学)・平成16年10月16日〜12月16日・当プロラム・タンザニア・「南部タンザニアにおける地域開発の展開と住民の対応」
近藤史(平成11年度入学)・平成16年1月2日〜3月25日・当プログラム・タンザニア・「タンザニア南部高地における在来農業の展開に関する農業生態学的研究」
岩井雪乃(PD学振特別研究員)平成17年2月19日〜3月18日・科学研究費補助金・タンザニア・「タンザニアのセレンゲティにおける野生動物と地域住民の共存」
丸尾聡(PD学振特別研究員)・平成17年1月9日〜3月14日・科学研究費補助金・タンザニア・「主食用バナナの域内取引をめぐる農村社会の展開―タンザニア北西部・ハヤ」

 
   
  (4)フィールド・ステーションの整備と運用:
   

タンザニアFSでは研究用機材が充実し、当FSに期待する「フィールドワーク中のデータ整理と研究方針の再検討」を実施する体制が整いました。しかしながら、安全対策や通信、光熱水道費、衛生管理費などは利用者が支払っており、とくに長期滞在者には過大な経済的負担がかかっているのが現状です。
タンザニアFSでは、平成17年度に当プログラムによってCOE研究員を雇用して、FSの管理・運営、教育研究をさらに充実するとともに、他のFSとのネットワークを緊密にして、東アフリカ諸国における共同研究のタンザニア窓口として機能させる予定です。

 
   
  (5)研究協力体制の維持・推進:
    タンザニアFSの教育研究活動は、京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科とのあいだに研究交流協定を締結しているソコイネ農業大学との協力関係のもとに実施しています。21世紀COE、科研費「地域研究を基盤としたアフリカ型農村開発に関する総合的研究」(研究代表者:掛谷誠)、ソコイネ農業大学地域開発センターが緊密な連携をとりながら共同研究を実施しています。  
   
  (6)教員と大学院生の研究業績:
    論文など
  • Mattee, A. Z., M. Araki, D. F. Rutatora, M. Kakeya, S. Kobayashi, and U. Tanaka, 2004.Introduction of the SUA Method: Concept and Approach to Sustainable Rural Development. In Perspectives and Approaches for Sustainable Rural Development in Africa: Proceedings of the International Conference, SCSRD/JICA, pp. 311-332.
  • Nsenga, J., C. Mahonge, E. Mtengeti, D. F. Rutatora, K. Tamura, J. Itani, Y.Kanda, and M. Araki, 2004.The SUA Method: The Case Study from Mbinga. In Perspectives and Approaches for Sustainable Rural Development in Africa: Proceedings of the International Conference, SCSRD/JICA, pp. 333-357.
  • 池野旬、2003「タンザニアの貧困削減政策をめぐって」 『アジア・アフリカ地域研究』3: 224-236.
  • 近藤史、2003「タンザニア南部高地における在来農業の展開に関する農業生態学的研究」『アジア・アフリカ地域研究』3: 103-139.
  • 小川さやか、2004「都市零細商人の経済活動における連帯と生活信条―タンザニア,地方拠点都市ムワンザ市における古着の信用取引を事例に―」『アフリカ研究』64: 65-84.
学位論文
  • Stephan Justice Nindi, 2004.Dynamics of Land Use Systems and Environmental Management in the Matengo Highlands, Tanzania (京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科、博士学位論文、2004年1月)。
  • David Gongwe Mhando, 2005. Farmers’ Coping Strategies with the Changes of Coffee Marketing System after Economic Liberalization: The Case of Mbinga District in Tanzania (京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科、博士学位論文、2005年3月)。
学会などでの口頭発表
  • 伊谷樹一、2003「タンザニア南部高地における農法の多様性について」日本アフリカ学会第40回学術大会(於:島根大学、2003年5月)。
  • 小川さやか、2003「タンザニア地方都市ムワンザにおける古着流通―マリ・カウリ取引をめぐる商業ネットワークを中心に―」日本アフリカ学会第40回学術大会(於:島根大学、2003年5月)。
  • 周密、2004「The Sino-Tanzanian Relations and the Making of Tanzania's Socialist Ujamaa Policy」日本アフリカ学会第41回学術大会(於:中部大学,2004年5月)。
  • 池野旬、2004「北部タンザニアにおける水道施設整備をめぐって:自発的参加型開発の事例」日本アフリカ学会第41回学術大会(於:中部大学,2004年5月)。
ワークショップの企画・主催など
  • 近藤史、2004(ワークショップの企画・運営)『京都ワークショップ:フィールドワークから紡ぎ出す―発見と分析のプロセス―』(21世紀COEプログラム『世界を先導する総合的地域研究拠点の形成』による開催。2004年10月30-31日、京都)。
 

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