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          アジア・アフリカ地域研究情報マガジン
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■━━━━━━━━━━━━━━━━━■ July 2004  第11号 ■━━■
 

■まず<自分>を滅ぼす.................................林行夫

 フィールドワークでも文献研究でも、わたしたちは些細にみえる
<事実>をめぐって相当な労力を費やす。藪の中の<事実>に翻弄
される。米国の小説家ミラーは、その事実の<底>に到達せよとけ
しかける。

「・・・事実の底に達するためには、芸術家になる必要があるわけ
だが、人間は一夜で芸術家になれるわけのものではない。それには
まず徹底的にうちのめされ、自分の思想の相剋に苦しまなければな
らない。個体としてふたたび生れ変るためには、まず自分を滅ぼさ
なければならぬ。自我の公分母から浮びあがるためには、自分を炭
化し鉱物化しなければならぬ。人間存在の根源でものを感じるため
には、憐憫の感情を越えなければならぬ。<事実>では、新しい天
国も地球も創ることができない」(ヘンリー・ミラー『南回帰線』
大久保康雄訳、新潮社、1969年、44‐45頁)。

事実それ自体は何もうみださない。そこにある風景のようなものだ。
わたしたちは山河や海をみて、知覚や精神を動かされはしても、そ
の精神に応じて山河や海が動くことはない。山河はそれらの「意志」
で動くのみである。知覚され、分類された風景を前にして自分の主
観にあぐらをかいていてはいけない。「自分を炭化せよ」とは激烈
だが、それはよそ者が異文化と関わる作法ではないか。他者との関
わりのなかで自分自身の一部になっている常識や感じ方の特殊性に
気づく。身悶えしつつ、それらを疑うなかで初めて事実と向きあえ
る。だからまず「<自分>を滅ぼす」ことが必要だ、とミラーは諭
しているように聞こえる。

私たちが、多様な媒体を通じて情報を蒐集・加工して発信する地域
研究とその教育を実践していくのに、「<自分>を滅ぼす」ことは
とても有用な構えではなかろうか。21世紀COEプログラムのす
すめるフィールド・ステーション活動も、まさに異文化とそこに暮
らす住民と直接関わる場所にある。現場から離れたところで有識者
と交流し、文献情報を集めるだけでは、植民地時代の収奪型の調査
と同じである。地域研究の対象は多くの住民を介して発現している
経済、社会、文化に関わる活動のシステムである。それ自体を、現
場から遊離したシステムとして取り扱うのではなく、それが生起す
る場で、どのように立ち上がっているのかを見届ける必要があるだ
ろう。

すでに、現場と自社会は地続きである。かの地の情報を整えつつ、
それに携わる人間も同時に変わる。血の通う人間が生きる地域が双
方向的にみえる新しい知のあり方が問われている。私たちが設立を
めざしている「地域研究統合情報化センター」に、そのような知を
生みだす仕掛けをもてないものだろうか。

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■執行会議だより
  .........プログラム全体の動きと進捗状況についてお知らせします

 ●2004年6月の執行会議だより
  独法化に伴う人件費単価の圧縮、FS派遣院生の報告書作成の流れ、
  日本語HPのトップページの再再編、来年度国際シンポをめぐる新
  たな動き、など。
http://areainfo.asafas.kyoto-u.ac.jp/japan/shikou/200406.html

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■教員の出張報告
   .................現在進行中の教育研究活動についてお伝えします

 ●ミャンマー:
  「ヤンゴン・フィールド・ステーションの開設準備」
http://areainfo.asafas.kyoto-u.ac.jp/japan/activities/fsta/15k_ando0/ando0.html

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■フィールドワーク報告
  ..................本プログラムから派遣された院生が博士論文の
       予定タイトルや目的にそった現地調査結果を報告します

 ●エチオピア:
  「近代エチオピア社会における在来組織の活動と公共圏の形成:
    グラゲ道路建設協会と葬儀講の研究」
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 ●カメルーン:
  「カメルーン東南部熱帯雨林帯における人間活動と森林生態系との関わり」
http://areainfo.asafas.kyoto-u.ac.jp/japan/activities/fsta/15_shikata/15_shikata.html

 ●Eritrea:(in English)
  "The Effect of Formal and Basic Education on Livelihood of Rural
   People in Eritrea: Case Study of a Settler Village Called Gadien"
http://areainfo.asafas.kyoto-u.ac.jp/english/activities/fsta/daniel/root.html

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■フィールドからの絵はがき..........一枚の写真に寄せるメッセージ

 ● "Fieldwork and a self portrait" from Indonesia:(in English)
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 ● "Fieldwork and a self portrait" from Zambia:(in English)
http://areainfo.asafas.kyoto-u.ac.jp/english/fwft/postcards/okamoto/pc12_okamoto.html

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■研究会..........................4つの問題群に分類しています
 ○は開催予定 ●は開催済み

 ●【人間生態問題群】研究会
  "Cropping-Pattern Approach to the Dry Land Agriculture in
   Kyaukpadaung Township, Dry Zone,Central Myanmar" 
  Speaker: Dr. Khin Lay Swe, Associate Professor,
  Yezin Agricultural University and CSEAS Visiting Research Fellow
  日 時:2004年7月2日(金)15時00分〜17時00分
  場 所:京都大学東南アジア研究所 東棟207教室
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 ●【政治経済問題群】研究会
  "Living in disguise? Minahasan community in Oarai, Ibaraki" 
  Speaker: Dr. Riwanto Tirtosudarmo,Visiting Professor,
  Research Institute for Language and Cultures of Asia and Africa,
  Tokyo University of Foreign Studies
  日 時:2004年7月6日(火)13時30分〜15時30分
  場 所:京都大学東南アジア研究所 東棟207教室
http://areainfo.asafas.kyoto-u.ac.jp/english/activities/kenkyukai/asia/e20040706/e20040706.html

 ●【政治経済問題群】研究会
  「シエラレオネ紛争における民間人への残虐な暴力のアナトミー
   ─国家、社会、精神性─」
  演 者: 落合雄彦(龍谷大学法学部助教授 )
  日 時:2004年7月15日(木)15時00分〜17時00分
  場 所:京都大学アフリカ地域研究資料センター 共同棟307
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 ●【社会文化問題群】研究会
  「イスラーム と 世俗主義」
  演 者: アッザーム・タミーミー(京大客員教授)
  日 時:2004年7月21日(水)15時00分〜17時00分
  場 所:京都大学工学部4号館 4F 第2講義室(AA415)
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■京大サロンの催し...... 京都大学百周年時計台記念館にて
http://www.kyoto-u.ac.jp/sisetu/11_tokei/salon.htm

 ●「アフリカ写真展:フィールドワーカーの眼」
  期 間:2004年7月13日(火)〜8月31日(火)
      9:00〜21:00(観覧無料)
  主 催:京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科
http://www.asafas.kyoto-u.ac.jp/bosyu/koubo.html

 ○第5回京大サロントーク「イスラームと異文化理解」
  演 者:小杉泰(アジア・アフリカ地域研究研究科教授)
  日 時:2004年9月14日(火)18:00〜19:30
      (定員45人、申し込み先着順)
  ※学内からの申し込みは以下のアドレスをご覧下さい。
http://www.kyoto-u.ac.jp/top2/11-top.htm
  問合せ先:百周年時計台記念会館1階
  時計台記念館事務室(075)753−2285
  e-mail: Kinen52@mail.adm.kyoto-u.ac.jp

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◆編集後記:京大サロンで「アフリカ写真展:フィールドワーカー
の眼」を開催中です。ASAFASアフリカ地域研究専攻の教員と
院生がアフリカのフィールドで写しとった場面をパネル写真にして
展示しています。是非いちどご覧になってください。編集子のとっ
ておきの1枚もあります。猛暑の夏、どうぞご自愛ください(MS)。
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