■■■■■■■■■■■■■■■■■ August 2005  第25号 ■■■
  アジア・アフリカ地域研究情報マガジン
  Integrated Area Studies INFOrmation Magazine(IAS-INFOM)
  http://areainfo.asafas.kyoto-u.ac.jp/index_j.html
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■【発行部数798】■■
___________今号の目次__________
□巻頭言:自由な農民?
□フィールド・ステーション便り:カメルーンの森から
□フィールド・ステーション部門の活動
□フィールドワーク報告:タンザニア・ナミビア
□メディアライブラリ:インドネシア
□21世紀COEプログラム出版物:ベトナム
□執行会議だより:7月号
□編集子より

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■自由な農民?
           ............................島田 周平

先日NHK特集でナイジェリアの産油地域住民の反政府運動とモザ
ンビークの少年兵に関する番組を見ました。

ナイジェリアの番組では、原油生産やパイプラインの敷設によって
ニジェールデルタの環境が破壊され、漁業で生きてきた人たちが政
府と石油会社に環境破壊の保障を求めて激しく抗議している姿が描
かれていました。

またモザンビークの番組では、独立直後の内戦で兵士にされた少年
達の過去が語られていました。反政府軍が、当時白人政権であった
隣国の南アフリカ政府の支援を受け、少年を誘拐し兵士に仕立てあ
げていた話です。

この二つの番組に共通していたのは、国家や多国籍企業、軍事組織
の思惑によって、人々が想像もしない過酷な運命に直面させられて
いるという点でした。

ナイジェリアのケースは、石油を輸出し収入を得なければならない
ナイジェリア政府と石油の安定供給を願うアメリカの思惑が一致し、
産油地域の住民の要求を無視し原油生産が続けられているという国
際的な構図が示されていました。

また少年兵の例では、モザンビークの社会主義化を快く思わない南
アフリカの白人政権が、モザンビークの内戦を仕掛ける中で少年兵
が作られていたことが明らかにされていました。

「アフリカの農民は国家に捉らわれていない」といわれることがあ
ります。それは、人々が国家の束縛から自由であることを意味しま
す。しかし、それは人々が、国家の保護の下に無いことも意味して
います。

そのため、国際的な政治や経済的な変化が特定の地域の人々に直接
過酷な状況を強いる危険性があります。それは「襲撃」といってよ
い過酷な状況です。ナイジェリアのケースでは、国家までもがその
襲撃の片棒を担いでいるように描かれていました。

私たちが現地で見聞きできることには限界があります。私たちが現
地でふれあう人々は、国家に依存しない、まさしく捕らわれない自
由な人々のように見えます。しかしその自由は、このようなピンポ
イントのような国際的な「襲撃」の危険性に、常に晒されている
「自由」であることを忘れるわけにはいきません。

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■フィールド・ステーション便り
 ..........各フィールド・ステーションから
              現地レポートを順次お届けします。

 ●カメルーンの森から.......................... 服部 志帆 

さんさんと照りつける太陽のもと、ラフィアヤシの葉でふかれた
集会所の屋根の上は、青い空に向かってふぞろいに、しかしまっ
すぐに伸びる植物たちがにぎやかに育っています。寄りそうによ
うに並んだ小さな家の中をのぞいてみると、柱から再び枝が伸び、
天井いっぱいに葉が茂っています森から切り出される前の木であっ
た頃の記憶をとりもどしたのでしょうか。

この生命力に満ちた熱帯の植物とその住人であるバカ・ピグミー
との関係について調査を行うため、私は彼らの暮らすカメルーン
南東部の森に来ています。

調査を始めたばかりの頃、私は森の植物のすさまじいばかりの生
命力に圧倒され、森にのみこまれてしまうのではないか、という
錯覚に陥ったものです。

バカ・ピグミーとともに森を歩くと、よじのぼらないと超えられ
ない大きな倒木や、足や顔にまとわりつくツルに苦労させられま
した。しかし、私にとっては行く手をさえぎる厄介な植物も、バ
カ・ピグミーにとっては生活においてなくてはならない重要な存
在だということが次第にわかってきました。

彼らの住居は、細長い木とクズウコン科の大きな葉で作られます。
椅子やベッド、まな板や木臼をはじめ、狩猟や採集などに用いら
れる道具のほとんどすべてが植物から作られます。また、植物は
バカ・ピグミーのお腹と心を満たす食料や、さまざまな病を癒す
薬となるほか、儀礼や民話などにも登場します。

森の恵みを頼りに森に寄り添うように生きる彼らには、「森にの
みこまれる」という感覚はないのでしょう。生命力豊かな森その
ものが、彼らにとって何よりもリアルで身近な生活世界なのです。

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カメルーンFS概要ページ:
http://areainfo.asafas.kyoto-u.ac.jp/japan/activities/fsta.html#1

※21世紀COEプログラムでは14の国と地域を対象にフィールド・
ステーションを設置しています。
http://areainfo.asafas.kyoto-u.ac.jp/japan/activities/act.html
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■21世紀COEフィールド・ステーション部門の活動
     .........各フィールド・ステーションから平成16年度の
                   年次報告が届きました
 ●エチオピア:
http://areainfo.asafas.kyoto-u.ac.jp/japan/activities/fstainfo/2004/ethiopia/2004ethiopia.html

 ●カメルーン:
http://areainfo.asafas.kyoto-u.ac.jp/japan/activities/fstainfo/2004/cameroon/2004cameroon.html

 ●ケニア:
http://areainfo.asafas.kyoto-u.ac.jp/japan/activities/fstainfo/2004/kenya/2004kenya.html

 ●ザンビア:
http://areainfo.asafas.kyoto-u.ac.jp/japan/activities/fstainfo/2004/zambia/2004zambia.html

 ●タンザニア:
http://areainfo.asafas.kyoto-u.ac.jp/japan/activities/fstainfo/2004/tanzania/2004tanzania.html

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■フィールドワーク報告
  .........................派遣された院生による現地調査の報告です

 ●タンザニア:
  「タンザニア都市零細商人の企業家精神と商業ネットワークに関する
      経済人類学的研究 」
http://areainfo.asafas.kyoto-u.ac.jp/japan/activities/fsta/16_ogawa/16_ogawa.html

 ●ナミビア :
  「ナミビア北部における地域動態と自然資源利用の変遷に関する研究」
http://areainfo.asafas.kyoto-u.ac.jp/japan/activities/fsta/16_fujioka/16_fujioka.html
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■メディアライブラリ
  ..................フィールドワークの現場の雰囲気を映像でお伝えします

 ●インドネシア:フィールドワーク報告から
http://areainfo.asafas.kyoto-u.ac.jp/japan/media/media.html#movie
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■21世紀COEプログラムの成果として刊行された出版物
  ...................2005年3月に出版されました

 ●“The Common Marine Plants of Southern Vietnam”
http://areainfo.asafas.kyoto-u.ac.jp/japan/areainfo/kaisou.html
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■執行会議だより
   .........プログラム全体の動きと進捗状況についてお知らせします

 ●2005年7月の執行会議だより
  予算の執行状況、間接経費の使途、ベトナム海生植物図鑑の完成、
  タイの国際シンポジウム準備状況、平成17年度後期の派遣院生
  の募集開始、最終年の国際シンポジウム、その他
http://areainfo.asafas.kyoto-u.ac.jp/japan/shikou/200507.html
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◆編集子より◆残暑厳しい時期ですがいかがお過ごしでしょうか。先日
訪問した東アフリカのウガンダでは携帯電話が国内すべての場所から通
じるということでした。レンタカーの運転をしてくれたK君はムセベニ
大統領と同じ地域の出身で、お国自慢をきかせながら道中の実家に寄っ
て大ご馳走でもてなしてくれました。K君が故郷に建てた瀟洒な家に着
くとすぐ、間をおかずに何種類もの暖かい料理がでてきたのは、彼が母
親に贈った携帯電話のおかげでした。◆配信システムの都合で8月号の
発行が少し遅れてしまいました。お詫びします。次号は9月20日頃発
行の予定です(MS)◆

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◆アジア・アフリカ地域研究情報マガジンは、京都大学大学院アジア・
アフリカ地域研究研究科(ASAFAS)と東南アジア研究所(CSEAS)が共同
して推進する21世紀COEプログラム「世界を先導する総合的地域研究
拠点の形成」の活動内容を中心に、アジア・アフリカの地域研究情報
を電子メールで配信しています。

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発行: 21st Century COE Program
    -世界を先導する総合的地域研究拠点の形成-
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