メ−ルマガジン
 

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   エチオピア・フィールド・ステーションだより 
     Ethiopia Field-Station News Letter 
   http://areainfo.asafas.kyoto-u.ac.jp/efs/ 
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              June. 2006[Vol.009] 

            【もくじ】 

 □ フィールドたより:佐藤靖明 
 □ EFS通信 No.9 
  (1)京都シンポジウム、サテライト・ワークショップのお知らせ No.2 
  (2)音声学・アムハラ語講義のお知らせ 

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        ■ フィールドたより ■ 
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         「バナナとエンセーテ」 

 佐藤靖明・京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科博士課程 

東アフリカのウガンダで人びとのバナナの利用と認識に関する研究をし 
ている私にとって、エチオピアは興味深いフィールドである。 

ウガンダの人びとは、バナナの果肉を未熟な状態で収穫して、主食用に 
調理をする。バナナはウガンダだけでなく、アフリカのかなり広い地域 
において主食とされているのである。しかし、エチオピアはなぜか例外 
にあたる。バナナを調理することはまったくなく、熟した果肉をおやつ 
として生で食べる。 

そのかわりエチオピアの人びとは、バナナと同じバショウ科に属し、姿 
かたちがよく似た「エンセーテ」という植物のイモや葉軸に含まれるで 
んぷんを主食にしている。さらにその調理は、独自の発酵過程をふくむ 
複雑なものである。いったい誰がどうやって、このような方法を発見し 
て広めていったのだろうか。人びとはエンセーテと同じ調理法をバナナ 
にも試してみたりしたのだろうか。 

2004年、南オモ・サブ・ステーションがあるエチオピア西南部のメツ 
ァ村を訪問したとき、住居がエンセーテにとり囲まれている風景が広が 
っているのをよく目にした。ウガンダで住居がバナナに囲まれる様子と 
よく似ていて、人びととエンセーテが近しい関係にあることがうかがわ 
れた。 

村人に質問していくと、畑にあるエンセーテとバナナの各部位はほとん 
ど同じなまえで呼ばれていることが分かった。かれらにとっても、この 
二つの植物は姿かたちのそっくりなものであるようだ。しかし、家の周 
りにたくさん植えられているのはもちろんエンセーテである。 

「ウガンダではバナナを調理する」という話をしたら、彼は「どうやっ 
て調理するの?」となにか府に落ちない顔をした。バナナのイモや果実 
を煮たり蒸したりして主食にするなんて考えられないことなのである。 

「似た植物は似たように使われる」といえない背景には、植物と知識の 
伝播過程や人びとの試行錯誤など、さまざまなことが考えられる。それ 
にもかかわらず、エンセーテとバナナはどちらもアフリカ各地の人びと 
の生を支える主食作物であるという事実がそこにある。この矛盾はどう 
説明したらよいのだろうか?圧倒的な存在感をもつ二つの植物と人との 
あいだに横たわる不思議をもうすこし味わっていきたいと思う。 

>佐藤さんの紹介ページは以下のサイトでご覧になることができます。 
http://areainfo.asafas.kyoto-u.ac.jp/nfs/member/uganda/sato/satoinfojp.html       

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          ■ EFS通信 No.9 ■ 
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(1)京都シンポジウム、サテライト・ワークショップのお知らせ No.2 
2006年11月9日から13日までのあいだ、京都大学において国際 
シンポジウム(総合的地域研究の新地平:アジア・アフリカからディシ 
プリンを架橋する)が開催されます。第2回目は、エッセイを書いてく 
ださった佐藤靖明さんが代表者をつとめるサテライト・ワークショップ 
「地域をつくるバナナとエンセーテ」について紹介します。 

■「地域をつくるバナナとエンセーテ:アジア・アフリカ地域における 
バショウ科作物を基盤とする生業システムの比較研究」 
"The Making of Banana and Enset Areas in Asia and Africa: Comparative 
Studies of Livelihood Systems Based on the Banana-family Crops" 
佐藤靖明(代表者)・重田眞義(アドバイザー) 

このサテライト・ワークショップでは、ウガンダとエチオピアから6名、 
日本から3名の方々に発表してもらう予定で現在交渉中です。総勢9名 
の発表者は、遺伝資源の保全、農村開発プロジェクトの実践、民族間関 
係と生業変容など、バナナとエンセーテに関してさまざまな観点から研 
究をすすめてきた多分野にわたる研究者です。ワークショップでは、こ 
れらの多岐にわたる研究内容を、1)バナナとエンセーテをそれぞれ基 
盤とする持続的な生業システムがどのように形成され維持されてきたか、 
というマクロな問題と、2)多様な品種や作物種が混植されるバナナ畑 
やエンセーテ畑がどのようにつくられ維持されているか、というミクロ 
な問題の二つを設定して報告と討論をしてもらう予定です。 

>サテライト・ワークショップ:「地域をつくるバナナとエンセーテ」 
http://areainfo.asafas.kyoto-u.ac.jp/kyotosympo/satellite/index08.html 

(2)音声学・アムハラ語講義のお知らせ 
7月18日から21日までの4日間、京都大学大学院アジア・アフリカ 
地域研究研究科において、金沢大学の柘植洋一先生による音声学とアム 
ハラ語(エチオピアでひろく使われている言語)の集中講義が開講され 
ます。音声学の講義では、聞き取った言葉をフィールドノートにどのよ 
うに記載するかといったところから丁寧にお話してくださいます。エチ 
オピアで調査を考えられている方はもちろん、アムハラ語を初めて学ん 
でみようという方におすすめの講義です。受講を希望される方は、下記 
まで事前にご連絡ください。 

>連絡先:Ethiopia_FS@jambo.africa.kyoto-u.ac.jp 
>柘植洋一先生の紹介ページ 
http://www.ad.kanazawa-u.ac.jp/souran/kekka/shosai.asp?id=51 

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          ◇ 編集委員から ◇ 
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EFS通信で紹介したバナナ・エンセーテ・ワークショップの日本国内参 
加予定者によるプレ・ワークショップが7月1日に開かれます。11月 
に開催されるワークショップでは、アフリカとアジアのさまざま地域に 
おいて、主要な栽培植物となっているバナナとエンセーテ、そしてそれ 
らを利用する人びととの関わりあいを、自然科学、人文科学、社会科学 
的な視点で検討し、それらを「地域形成過程」として総合的に議論する 
ことをめざしています(金子守恵) 
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          ◇  訂正とお詫び ◇ 
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前号(8号)にフィールド便りを寄稿していただいた孫さんのHPアドレ 
スと博士論文の掲載情報が不十分でした。以下に訂正してお詫びいたし 
ます。 
HPアドレス:http://jambo.africa.kyoto-u.ac.jp/〜sun/ 
博士論文掲載号:African Study Monographs, No.31に孫さんの博士論 
文が掲載されています。 
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