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━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ エチオピア・フィールドだより Ethiopia News Letter http://areainfo.asafas.kyoto-u.ac.jp/efs/ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ Sep. 2007[Vol.019] 【もくじ】 □ フィールドたより:金子守恵 □ EFS通信 No.19 (1)GISワークショップ開催 (2)サントリー・BOSS・LEGEND ------------------------------------------------------------------------ ■ フィールドたより ■ ------------------------------------------------------------------------ 「三種の神器?!:電気インジェラ調理器をめぐって」 金子守恵・日本学術振興会特別研究員 エチオピアの首都アジスアベバに暮らす女性にとって、電気インジェラ 調理器(エレクトリック・ミタッドとよばれる)は、ぜひ入手したい調 理器具のひとつのようだ。インジェラは、エチオピアの代表的な主食の ひとつで、エチオピア起源の穀類(テフ)を発酵させ、直径50〜60 センチほどの円形状に薄く焼いたパンである。インジェラは、発酵がす すみすぎて酸味が強くならないよう週に2、3回にわけて焼く。 電気インジェラ調理器の高さは、女性の腰くらいあり、円筒形をした鉄 製の骨組みに、円盤形をした粘土製の焙烙(ほうろく)がそなえつけら れている(注1)。焙烙の裏面には電気コイルがうずまき状にはりつけ られている。在来の土器づくりにコイルをとりつけるという2つの異な る技術が組みあわされて創り出されたモノである。 インジェラをうまく焼くためには、弱火で一定の熱量を安定的にえられ ることが重要だ。これまで女性たちは、ユーカリの枝や収穫後の穀類の 桿などの燃料を選択的に採集し、腰をかがめながらインジェラを焼いて いた。言うまでもなく電気インジェラ調理器をもっていれば、労少なく してうまく調理することができる。エチオピアの友人によれば、この調 理器は(高度経済成長時期の三種の神器ではないけれど)車、冷蔵庫、 テレビなどとならび、ぜひとも入手したい贅沢品のひとつなのだそうだ。 アジスアベバに住むTさんは、25年ほど前に電気インジェラ調理器を 700ブルで購入した(購入当時コーヒー1杯が約10セント)。Tさ んは、ラジオを購入するよりも前にこの調理器を購入した。現在もその とき購入した調理器を続けて使っている。割れたりすることのある焙烙 は、まだ1度しか交換していない。Tさんの夫人によれば、購入当時は 近所のイタリア人の職人しかこの調理器を製造できなかったそうだ。そ の後、その製作技術がエチオピアの職人のあいだにひろまっていったと いう。 アジスアベバではここ数年のあいだに、中国製の電気インジェラ調理器 が急速に普及しはじめている。これまで市販されているのものと比較す ると約1/3の価格(約1000ブル)で入手できるそうだ。Tさん世 帯と同様に、イタリア製の電気インジェラ調理器を30年近く利用し続 けているKさんによれば、中国製のものは電気コイルの部分がすぐに壊 れてしまう。この調理器を安価に入手できるようになったこと以外に、 電気の価格が政策的に低く抑えられていること、燃料資源の枯渇や高騰 などがこの調理器の普及の背景として考えられる。 わたしは、98年からエチオピア西南部の小さな村で土器づくりについ て研究をすすめてきた。自分の研究について語るときには「まだ土器を 使い、つくり続けている地域で研究している」と説明してしまうことが 多い。それを口にするたびにいつかは「もう使われずつくっていない」 という表現にかわる日が来るのかもしれないと思う。もちろんそのとき は、この目で「使われなくなる、つくられなくなる」プロセスをみつめ しっかり描きたいと思っている。だが、電気インジェラ調理器のような 創造物をみてしまうと、エチオピアの土器づくりという在来技術の奥深 さ、またエチオピアに暮らす人たちの豊かな創造性を感じずにはいられ ない。そして、いろんな可能性を秘めている在来技術やそれを実践して いる人々と今後も関わっていきたいとあらためて思っている。 (注1)電気インジェラ調理器の写真が掲載されているサイト http://areainfo.asafas.kyoto-u.ac.jp/efs/img/kaneko04.jpg >アジスでの生活燃料の変化とその費用に関する報告書には、電気イン ジェラ調理器の所有率が84年には13%であったのが、97年には7 0%に増加したと述べられています http://www.hedon.info/goto.php/TheHumanAndLivelihoodsCostOfFuel-switchingInAddisAbaba ---------------------------------------------------------------------------- ■ EFS通信 No.19 ■ ---------------------------------------------------------------------------- (1)GISワークショップ開催 2007年7月30日〜8月3日まで、京都大学大学院アジア・アフリカ 地域研究研究科において、久田信一郎さんをお招きしてGISワークショ ップが開催されました。GPSを使いながらフィールドワークして得られ た地理情報を地域の人々に還元したり、共有していく方法やプロセスに関 して、実際に参加型GISに取り組まれてきた久田さんにお話をきかせて いただきました。 (2)サントリー・BOSS・LEGEND すでにテレビコマーシャルでご覧になった方も多いかもしれませんが、 8月28日からサントリー「BOSS・LEGEND」という缶コーヒー が新発売されています。この新製品は、エチオピアの豆を使ってつくら れていて「伝説の香り」というコピーが入っています。エチオピアのオ ロミア州のコーヒー生産組合とやりとりしているそうです。 >サントリー・BOSS・LEGEND公式サイト http://www.suntory.co.jp/softdrink/boss/legend/index2.html --------------------------------------------------------------------- ◇ 編集委員から ◇ --------------------------------------------------------------------- エチオピアの新年が9月12日にあけました。今年はミレニアムの年に あたることもあり、エチオピアでは、これを機会に海外在住のエチ オピア人が一時帰国するとの噂がありました。それが原因かどうかはは っきりしませんが、ホテルの価格やアパート・ 一戸建ての賃料が1.5〜2倍にはねあがるという状況がおこっている ようです。エチオピアに限らず、日本でもエチオピアミレニアムを祝う イベントが開催されました。(金子守恵) >http://www.afpbb.com/article/life-culture/life/2281382/2132127 >http://ababa.cocolog-nifty.com/ethiopian_millennium_in_j/ ---------------------------------------------------------------------- メールマガジンへのご意見・投稿はこちらまで →Ethiopia_FS@jambo.africa.kyoto-u.ac.jp ---------------------------------------------------------------------- ◆このメールは「まぐまぐ」のシステムを利用して配信しています。新 規登録・解約は下記ページにてお願いします。 http://areainfo.asafas.kyoto-u.ac.jp/efs/j/magazine.html ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ このメールマガジンは、京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究 科に在籍してエチオピアで調査研究をおこなう若手研究者が中心になっ て作成・編集しています。エチオピアの地域研究情報を不定期に電子メ ールで配信しています。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 発行:京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科・ エチオピア研究グループ http://areainfo.asafas.kyoto-u.ac.jp/efs/index.html ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ Copyright(c)2007 EFS. All Rights Reserved. |
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