(3) 今回の現地調査では、まず、2003年8月初旬から中旬にかけてインド・ウッタランチャル州テーリーを訪れ、テーリー・ダム反対運動の現状を調査するとともに、スンダルラール・バフグナ氏にインタビューを行った。インタビューを通じて、彼の森林保護論が、地元住民の生の基盤・シンボルとしての森林を守るべきだという考えに基づくことが明らかになった。これは、森林を単に経済的な資源として捉え「誰がどのように森林資源を管理するか」をめぐって論が展開されている他の一般的なインドの森林保護論とは根本的に異質の考え方であり、また、動植物の権利保護という点を基盤とした原生自然保護論とも大きく異なった考え方である。
2003年8月中旬から9月中旬にかけては、ウッタラカンド地域を中心として数多くのガンディー主義者のもとを訪れ、インタビューを行うとともにその活動の一端を調査した。例えばコーサーニーでは、ガンディーの弟子であったサララ・ベーン(1892-1982)が1946年に始めた全寮制の女子小・中学校が、現在にいたるまで、地元の女性たちが尊厳を持って生きることを目指して創造的に運営され続けていることが明らかになった。ここの卒業生たちがウッタラカンド地域の環境運動の展開においてどのような役割を果たしたかなどについて、今後も調査を行っていきたいと考えている。