(3) 今回は2003年11月から2004年3月にかけて、南インド・ケーララ州トリヴァンドラム地域で伝統医療を行なう治療家たちが、治療に関わる知を共有していこうという目的のもとに結成した組織の活動を調査した。
ここ数年、伝統医療を行なう治療家の間では、結束して個々のもつ治療に関する知識を共有し、現代社会に適応できるように治療法を改善していくべきだという意識が高まっていることがわかった。その背景には、西洋医学が普及し村人が伝統医療を実践する治療家から急速に離れてゆく状況、現代社会の疾病状況に対応できなくなってきたという個々の治療家の問題、そして、世界的に知的所有の認識が浸透する状況下で、治療家自身が治療に関する知を彼らの集団内に囲い込む傾向が増大したという3つの理由が存在していた。