(3) 2003年10月24日から2003年12月23日までの期間、タンザニア南部のイリンガ州ンジョンベ県キファニャ村において現地調査をおこなった。今回の調査では、1)農作業の共同労働と、2)造林型焼畑をおこなう際にみられる植林伐採跡地の貸し借り、の二点について実態を明らかにした。
- 調査地において現在おこなわれている共同労働はふたつに大別される。ひとつは従来からおこなわれてきた酒のふるまわれる共同労働、ヒサンブラ(hisambula)とムゴーウェ(mgowe)である。ヒサンブラは親族および姻族を中心に10人前後でおこなわれる小規模なもので、ひとりあたり1リットル程度の酒がふるまわれる。ムゴーウェは親族および姻族のみではなく地縁関係のある人々も加わり、20人以上、ときには30人以上でおこなわれる大規模なもので、ひとりあたり2リットル程度の酒がふるまわれる。ヒサンブラとムゴーウェでは毎回のメンバーは固定されていない。しかし、参加者と主催者の間につくりだされる「貸し・借り」のような関係に基づいて労働力が交換され、その交換は同種労働間のみならず異種労働間でもおこなわれる。もうひとつはタンザニア独立以降の社会主義政策下ではじめられた、酒のふるまわれない共同労働、チャマ(chama)である。チャマは血縁または地縁で結ばれた特定のメンバー内で、ある農作業についておこなわれるローテーションワークであり、グループによって構成メンバーは二人から十数人と様々である。
- 造林型焼畑では、ブラックワットルを薪炭用に、またはマツを製材用に造林して伐採、利用した跡地に焼畑を造成する。しかし、これらの林の所有面積には世帯間で偏りがあり、伐採跡地の貸し借りが頻繁におこなわれている。所有面積の偏りは1974年におこなわれた集村化に起因しており、一般に集村化以前から村内に居住していたリネージの構成世帯が貸し手、それ以降に村内へ移住してきたリネージの構成世帯が借り手となっている。
今後は上記の結果をふまえてベナの在来農業の展開と農村社会の関わりについて検討していく。