(3) 1961年に結成されたグラゲ道路建設協会の成立に関わる歴史的背景や、政府との関係について、聞き取り調査及び文献の収集をおこなった。また同協会の組織およびリーダーシップに関する聞き取り調査をおこなった。さらに在来組織の活動と比較するため、開発NGOの活動の動向についても調査をおこなった。これら調査の結果、以下のような諸点が明らかになった。
- グラゲ道路建設協会は、農村からアジスアベバに移住し、商人あるいは官僚として成功を収めた人びとによって設立された。これら移住者は、資金の提供、政府への働きかけ、住民への協力の呼びかけなど多くの面で活動を主導した。アジスアベバの中央官僚組織は、技術面および資金面で同協会を支援したが、他方でアムハラ封建貴族は、同協会の活動を阻害する企てをたびたびおこなった。またグラゲ氏族社会の伝統的リーダーは、同協会の活動を阻害した事例と、支援した事例がある。
- 同協会は、成文化された規則にもとづく近代的な組織をもっている。ただし協会本体のほかに、氏族別に結成された7つの委員会があり、さらにそれぞれの委員会と関係の深い葬儀講が、多数存在する。活動の初期には、協会が道路の建設や維持管理に責任を負うのに対して、各委員会は住民からの資金提供を募るなど、おおむね明確な役割分担が見られた。
- 近年、同協会はエチオピア国内で活動するNGOとのネットワーキングにも関心を示しており、海外で開発分野の教育を受けたプロジェクトマネージャーを雇用するなど、典型的なNGOに近い形態をとり始めている。これに対して各委員会と葬儀講は、無報酬の役員によって運営される、典型的な在来組織の形を保っている。
以上のような考察を土台として、今後は同協会本体と委員会、葬儀講それぞれの形態及び活動の変化に留意しながら、協会活動の調査、分析をおこなってゆきたい。