フィールドワーク報告
  (1) 研究課題 (博士論文に予定しているタイトル)
(2) 博士論文において目的としていること
(3) そのうち,今回の現地調査で明らかにしたこと
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渡航期間: 2003年10月5日〜2004年1月2日, 派遣国: エチオピア
(1) エチオピア西南部のダサネッチ社会におけるジェンダーと活動領域
佐川徹 (アフリカ地域研究専攻)
キーワード: ジェンダー,「公と私」,活動領域,意思決定,東アフリカ牧畜社会


家の中で子供をあやす母親

男性だけが参加する『公的』な場、肉の共食儀礼
(2) 近年、東アフリカ牧畜社会における従来の男性偏重的な研究傾向を批判し、女性の社会的な地位を見直す議論が盛んになっている。本研究の目的は、エチオピア西南部に位置するダサネッチ社会を対象として女性の社会的役割を多面的・包括的に明らかにし、とくに世帯内外でなされる生産・消費活動、社会関係の構築・維持などにかかわる意思決定に女性が関与する過程をミクロなレベルから検討していくことをとおして、従来「女性が私的領域で営む」とされてきたさまざまな活動が「男性が公的領域で営む政治活動」に働きかけ、それを改変してゆく動態的な過程を解明するところにある。

(3) 調査は2003年10月〜2004年1月の3ヵ月間、ダサネッチの村落でおこなった。調査内容と結果を以下に記す。

  1. 男女間や世代間における分業形態を定量的に明らかにするために、タイムアロケーションの手法をもちいて活動調査をおこなった。その結果、調査期間が作物の収穫時期であったこともあり、村のほぼすべての成員が農耕活動に従事しており、生業に関する男女間の活動内容には明確な分業は見られなかった。一方、それ以外の時間は男性が友人との会話や休息に費やしていたのに対して、女性は水汲み・薪集め・調理などの活動に従事していた。ただし女性でも成長した子供が2名以上いる場合は子供たちに指示を与えるだけで、残りの時間は家のなかなどで話をしながら家畜の皮なめしや縄作りなどをおこなっていた。また活動場所としては、成人男性はしばしば村外の友人のもとに出かけているのに対して、女性は町へ買い物に行く場合をのぞいて、ほぼ村内ですごしていた。
  2. さまざまな活動をおこなう社会集団やそれが営まれる空間領域がどのように認識・分類されているのかを明らかにするために、聞き取り調査をおこなった。ダサネッチ語で「物理的な家」(bil)を指す語の複数形(en)は地域集団(居住地域を共有し多くの儀礼をともにおこなう単位)や村落も意味する。また人びとは「わたしの人(びと)」という語をコンテキストに応じて、最小レベルでは一軒の家にすむ妻とその子供たちを、最大レベルでは同じ地域集団や世代組、父系クランに所属する人びとを指し示す語としてもちいている。つまり従来の研究ではもっとも「私的」/「公的」な活動を営むとされてきた領域や社会集団が同じ語で示されているのである。

  今後は活動調査を継続して年間の変化を調べるとともに、世帯レベルで家畜の贈与や売買、居住地の移動などがいかなる過程を経て決定され、それが世代組や地域集団単位で営まれる活動にどのような影響を及ぼしているのかを明らかにしていきたい。

 
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