(3) 今回の調査では、2003年12月1日〜2004年2月29日の期間、マチャコス市で以下の事項を調査した。調査の目的は、マーケットにおけるボランタリー・アソシエーション、特に貯蓄・融資講の実態把握と、商人たちの講組織の利用状況を明らかにすることである。
- まず、公設マーケットで売り手全員を対象に聞き取りを行い、貯蓄・融資講の全体数、機能のバラエティ、取り扱う金額の規模などについてデータを収集した。さらに全体数の1割にあたる30の講組織の中心者に対してメンバー構成、講組織の成り立ち、運営状況に関する詳しい聞き取り調査を実施した。その結果、人びとが国の開発政策やMFから得た知識を活用し、講組織を独自に発展させている状況が明らかになってきた。
- 次に、複数の商人を対象に家計調査を実施し、商人たちの講組織の利用状況について事例を収集した。まだ分析の途中ではあるが、1. の結果と併せると、人びとは、既存の各種講組織を使い分けると同時に講組織をフレキシブルに改良し利用している状況が明らかになりつつある。
前回に実施した資金運営に関する調査では、売り手の7割が操業資金の主な調達先として貯蓄・融資講を利用している状況が明らかになった。今回の調査により、他の方法(自己資金・MFからの融資)と比べると講組織が圧倒的に利用されている要因が明らかになりつつある。様々な規模と機能をもつ多数の講組織が存在することと、各講の規則は利用者の必要に応じて融通無碍に変化し、参加・不参加や結成・解散が比較的自由に行えるという柔軟性があることが、その要因として指摘できるだろう。商人たちは、互助的な役割を果たす既存のボランタリー・アソシエーションの枠組みと画一的な金融システムであるMFの運営方法を取り入れ、商品・営業規模・居住環境といったローカルな諸条件に適応する金融組織を発展させていると考えられる。今後この点を更に吟味し、零細なマーケット商人たちの商業活動にどのように適合しているのかを明らかにし、商人たちの市場経済への対応について考察するつもりである。