(3) 今回は、上記のうち 3.のトピックに関する調査をすすめた。現地調査は、東アフリカのウガンダ共和国、カプチョルワ県にて、2003年12月7日より2004年3月15日までの期間におこなった。
調査地においては、相続、売買、賃貸などの土地処分の権限は男性世帯主に、日常的な利用権はその妻である女性に属している、という説明が一応は可能である。しかしながら、ある人の土地に対する権利は、常にその人以外の何者か―キョウダイ、僚妻、親族、隣人、借地人―から侵犯される可能性にさらされている。「これこれの規範に従うべし」というような確固とした「土地慣習法」はない。この意味で、土地に対する権利は不確定であり、ある土地に対する権利を主張する人物が潜在的には複数存在しうるような状況である。したがって、土地相続の親族会議、土地境界を接した隣人同士の争議、地方裁判所における土地裁判などの局面で、各利害関係者によってそれぞれに当該土地に対する権利が主張されることになる。
たとえば土地の「相続」に関して、人びとは、「父親から息子たちへ均分相続する」ように説明はするけれども、実際の相続の場ではさまざまな事情によってそれがそのとおりに達成されるとは限らず、むしろそうならないことのほうがおおい。その背景には、キョウダイ間の対立、複婚の場合は僚妻間の対立などがある。こうして土地をめぐる権利の問題は、それそのものにとどまらずに、世帯内の、親族間の、あるいは土地境界を接した隣人間のふだんの社会関係を反映した 問題として表現されるのである。
今回の派遣では、村の世帯の土地利用、土地保有、土地入手方法の基本データだけではなく、そうした土地の争議の歴史の聞き取り、係争中の土地争議での議論の内容の把握をおこなった。今後はこれらのデータを分析し、調査地における土地に対する権利が実践的に獲得されていく過程を明らかにしていく予定である。