報告
渡航期間: 2003年12月22日〜2003年12月29日    派遣国: タイ、マレーシア
  出張目的
  バンギ・フィールド・ステーション(マレーシア)とバンコク連絡事務所を中心としたマレーシアおよびタイと日本間のネットワーク環境の調査と整備
  木谷公哉 (東南アジア研究所・地域研究情報ネットワーク部)

 

  活動記録
  12月22日(月)
  • 関空発 − バンコク着
      12月23日(火)〜24日(水)
  • 東南アジア研究所バンコク連絡事務所にて、ネットワーク環境調査。
      12月25日(木)
  • バンコク発 − クアラルンプール着
      12月26日(金)〜28日(日)
  • マレーシア国民大学内のバンギ・フィールド・ステーション事務室にて、ネットワーク環境調査およびコンピュータの整備。
      12月29日(月)
  • クアラルンプール発 − 関空着

     

      結果と進捗状況
     

      今回の渡航は、

    • バンコク連絡事務所を拠点としたタイのネットワーク事情調査
    • バンギ・フィールド・ステーション及びカウンターパートのネットワーク事情調査
    • バンギ・フィールド・ステーションにおけるネットワーク環境の整備
    の3点を目的としている。主にバンコク連絡事務所及びバンギ・フィールド・ステーションを拠点としたネットワーク調査を、特にバンギ・フィールド・ステーションでは、現地キャンパスネットワーク担当者との会談、および視察などから情報収集を行った。また、バンギ・フィールド・ステーションにおける調査・整備作業に関しては、大学院アジア・アフリカ地域研究研究科の梅川助手と共同で行った。

    (1)バンコク連絡事務所とタイのネットワーク事情
      タイのバンコク市内スクムビット通りのSoi 20のマンションの一角にたたずむ、1964年2月に開設された日本の国立大学が海外にはじめて持った恒久的な現地連絡事務所であるバンコク連絡事務所のコンピュータ及びネットワーク環境整備・強化に携わってから4年の月日が流れ、現在ではADSL(下り/上り: 256/128kbps)通信回線を利用し、事務所内無線ネットワークとプリントサーバによる快適なネットワーク環境を整備している。
      タイにおいて、常時接続を行うことは一般レベル化されておらずADSLといえどもダイアルアップと同様従量制(月額256/128kbpsの70時間で3000バーツ(約1万円)の費用がかかる)となっている。常時接続といえば光ファイバーケーブルによる接続が存在するが、その回線使用料で車や家が簡単に購入できてしまうレベルであり、手が出せない状況だ。ただし、ここ数年で急速に情報基盤が整いつつあり、そう遠くない未来には一般レベルでの常時接続が可能となっているだろうと思う。
      私が滞在したホテルは、2000年に訪れた時にはちょうど常時接続サービス工事中であり、現在は利用が可能となっている。とはいえ、日本との通信安定度はICMPパケットロスト率が5〜10%程度あることからまだ発展途上であると言える。バンコク連絡事務所は、LOXINFOのADSLサービスを利用しており、こちらは日本間との通信はICMPパケットロスト率がほぼ0%であったことから安定していると言える。日本ではロスト率が存在すること自体が通信状態悪化であるといえるほど情報基盤が整っているが、東南アジア地域の中でもタイは情報基盤が整ってきているとはいえ、数年前にはロスト率が数十%あったことを考えると整備に国を挙げて取り組んでいるのがよく分かる。
    (2)バンギ・フィールド・ステーションおよびマレーシアのネットワーク事情
      すでにネットワーク事情詳細は梅川氏の報告に出ているため、ここでは割愛するが、首都クアラ・ルンプールの家庭ないしホテルではダイアルアップ接続が一般的に使われている。またフィールド・ステーションが存在するマレーシア国民大学では、クライアントにはDHCPサーバによってプライベートIPアドレスが自動割り当てされており、これによって外部からの通信を遮断している。またそのネットワークもいくつかのVLANに分断されている。また外部との通信のやりとりが必要なグローバルIPアドレスに関しては、データセンターによって常時監視されており、2003年8月に発生した「MSブラスター」ウィルスの折には、キャンパス内ネットワークへのポートスキャン等によって感染PCを割り出し対処したとのことである。さらに教育用設備にはNorton Antivirusによる恒久的な情報セキュリティ防御を執り行っていることから、情報セキュリティにかなりの力を入れていることが伺えた。pingおよびtracerouteによる通信の安定性ならびに経路探索を日本との間で行った所、5%〜10%のロスト率があり、SINETへはATTを経由、YahooやZAQ(ケーブルインターネット)などの商業ネットには、ロサンゼルスのtelelobeを経由していることが分かった。
      
    (3)バンギ・フィールド・ステーションのネットワーク整備
      実質2日間程度の時間をとり、梅川助手とともにフィールド・ステーション事務室へのコンピュータ・ネットワーク整備作業を行った。
      私が来る少し前に学術交流協定(MOU)を締結されたばかりであり、ステーションには何もない状態だった。従って、最初に行ったのはPlaza Low Yet内にあるコンピュータショップであった。コンピュータショップは他に、Imbi Plaza, Sungai Wang Plazaなどがあるようだが、時間的余裕がなかったこと、品揃えがよいことなどが理由で、Plaza Low Yetにした。17インチTFTモニタ付きデスクトップ、インクジェットプリンタに、レーザプリンタ、およびセキュリティ防御ソフトウェア(Norton Internet Security 2004)などの整備を行なった。東南アジアの国々にいって驚かされるのが値切り交渉の激しさである。表示価格は適当であり、そのまま買うと損をするということになる。たとえば1000円ぐらいの小物だと「安くして」というだけで200円ぐらい値切れたりするようだ。
      フィールド・ステーション内はDHCPによる動的IPアドレス割り当てにより、スムーズにネットワークへの参加ができた。Webプロキシ等が特に必要ないところを見ると、割り当てられたプライベートIPアドレスはNAT変換模様。持ってきたノートブックから私が日本で用意したFTPサーバやSSHサーバへのアクセスができることから、標準的なポートへのブロックはされていないようだ。もう少し時間的余裕があれば、実験してみたらよかったと思う。

     

      今後の課題
        今回の調査で、すでに導入したバンコク連絡事務所の通信設備の快適さと通信事情、初めて訪れたマレーシアのネットワーク環境事情を把握する事が出来た。また、タイではビデオチャットやビデオ会議などをテストし、ここ数年における通信設備の発展を体感することができたが、マレーシアの方では時間的問題もあり、グローバルIPアドレスを使ったサーバ構築による情報発信機能を試すまでには至らなかった。
      日本では、今やインターネットを利用した情報伝達や発信はなくてはならない存在になっているが、タイやマレーシアでは今まさに国を挙げての情報基盤強化が行われている。いずれは連絡事務所に常時接続環境を構築し、独自ドメイン等による情報発信体制を築けるようにしていくために、引き続き情報基盤整備動向を調査していきたい。また今回調査した成果を纏め次第、Web上で公開する予定である。

     

    タイのバンコク市内にて
     
    バンコク連絡事務所内コンピュータ環境   Westinホテルの常時接続機器
     
    バンコク連絡事務所のネットワーク環境と調査風景   交通渋滞を緩和するスカイトレイン
     
    マレーシアのクアラ・ルンプール市内にて
     
    細かなパーツはジャンク屋で   幻想的なツインタワーのネオン
     
    KLタワーからみたビジネス街   バザール・マラムの一角にて
     
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