(3) 南スラウェシで話されるいくつかの地方語のうち、さしあたって今回はブギス語に絞って学習した。教材は小学校の教科書を使用し、ブギス語ネイティブの友人に個人教授を依頼した。
そしてラ・ガリゴおよび南スラウェシに関する文献収集を幅広く行うとともに、ラ・ガリゴの舞台となった各地を訪れた。また、滞在中に偶然ながらMuhammad Nur氏の知遇を得ることができたことは調査者にとって非常な幸運であった。Nur氏は大学や研究機関に属していない在野の研究者であり、南スラウェシに関する著作も数冊ある。Nur氏が現在手掛けているのがブギスの王族についての膨大なSilsilah(家系図)の編纂である。ここ十年来取り組み続けながらいまだ未完、すでに300ページほどの分量になっている。暇を見つけては各地を訪ね歩き、自分の足でものにしたこの業績は、南スラウェシ史研究の第一級の資料と言える。
帰国した現在、調査者はブギス語の継続的学習とともに、ラ・ガリゴの紹介と自身の研究の端緒として、ラ・ガリゴ研究の浩瀚な必読文献I La Galigo(R.A.Kern: 1989: Gajah Mada University Press)の訳出作業を進めており、その成果はウェブ上にて随時アップしていく予定である(マカッサル滞在期間:2004年12月22日〜2005年3月8日)。