(3)
調査地はアジスアベバおよび南部諸民族州、調査期間は2004年9月2日〜2005年1月30日である。昨年度から引きつづき、グラゲ道路建設協会や葬儀講について、聞き取りと資料収集をおこなったほか、在来の住民組織の活動と比較するため、開発NGOの活動動向についても調査をおこなった。本年度は特に、グラゲ道路建設協会の活動史について詳細な聞き取りをおこなうとともに、同協会の下部組織であるエジャ開発委員会の近年の活動について現地調査をおこなった。また道路建設協会の調査とは別に、アジスアベバの貧困地区で、葬儀講の活動と規範についての聞き取り調査と資料収集をおこなった。その結果、以下のようなことが明らかになった。
- グラゲ道路建設協会は、非政治的な開発活動を目的として1960年代に設立されたが、協会の幹部らは、当時の貴族制支配に対抗するために農村を近代化するという、明確な意図を共有していたと考えられる。
- 近年では同協会そのものよりも、下部組織である氏族別の開発委員会による活動が活発になっている。これらの委員会は、国際社会による開発援助を積極的に受け入れることによって、地域社会への影響力を確保している。
- アジスアベバの貧困地区でおこなわれている葬儀講は、活動資金の横領や政府による資産の接収など、さまざまな危機を乗り越えて活動を続ける強さを持っていることがわかった。また同じ葬儀講に、民族や宗教の異なるメンバーが同居する傾向も確認された。