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本派遣では、古着商人の商慣行にみられる文化/社会的ファクターの通時的解析を目的として、2005年1月19日から3月31日までの期間、地方都市ムワンザ市にて現地調査を行った。
- 商人300人に対する商売歴の調査および公文書資料館・大学等での文献資料の収集・分析にもとづいて、植民地期の終わりから現在までの商慣行の変化について検討した。その結果、商慣行の変化は、どのような関係(親族・同郷者・エスニックグループ、商売能力の高さ)を基盤に商売を行うか、信用取引を行うかどうかによって、5つの時期に区分しうることが明らかになった。
- 各時期の政策や社会経済状況の変化にかんする文献資料の分析から、商慣行の変化を促した要因は、古着の入手可能性や価格の変化、商人人口の増減、交易圏の変化、古着流通の上位者であるインド人卸売商との取引関係の変化等が複合的に関連していることが明らかになった。また5期を通してみると、時期を飛び越えて似通った商慣行や集団形成のあり方が再現されることが観察された。このことから、商人たちは、過去の商売経験や知識を受け継ぎ、それを駆使しながら、上記の要因によってもたらされた変容に対応していることが明らかになった。
- 第5期の商慣行を調査したところ、異なる2つの形態の商慣行へと商人グループが分化しつつあった。商人たちを参入時期によって「世代」に区分した場合、取引を行う世代の組み合わせパターンによって選択した商慣行に特徴的な差異が認められた。第5期に限らず、実際には多様な商慣行が考案されたが、その中のひとつが各時代に支配的な商慣行の形態として定着・普及していったと推測される。
今後は、1. 以外の要因の可能性を再検討し、世代ごとの経験や知識の違い、世代間の交渉を検討することで、多様な商慣行が特定の商慣行へと収斂していくメカニズムを明らかにするとともに、その過程にどのような文化/社会的ファクターが作用していたのかを考察していきたい。