報告
渡航期間: 2004年11月11日〜2004年12月3日    派遣国: ザンビア,ジンバブウェ
  出張目的
  現地ステーション機能の整備と、ザンビア北部州・ジンバブウェ・マシンゴ州における臨地研究
  荒木茂 (大学院アジア・アフリカ地域研究研究科・アフリカ地域研究専攻)

 

  活動記録
  11月11日(木)〜11月14日(日)
  • 現地参加、ザンビア北部州における臨地研究
      11月15日(月)
  • ムピカ − ルサカ(移動)
      11月16日(火)〜11月18日(木)
  • ザンビア中央州において臨地研究指導
      11月19日(金)
  • ルサカFSにおいて研究打ち合わせ
     

    11月20日(土)

  • ルサカ − ハラレ(ジンバブウェ)(移動)

      11月21日(日)〜11月23日(火)
  • ジンバブウェ土壌研究所において調査打ち合わせ
      11月24日(水)〜11月29日(月)
  • ジンバブウェ・マシンゴ州における臨地研究
      11月30日(火)〜12月1日(水)
  • ハラレ − ヨハネスブルグ(南ア)(移動)
      12月2日(木)〜12月3日(金)
  • ヨハネスブルグ − 日本(移動)

     

      結果と進捗状況
     
    【現地ステーション機能の整備】
      在ザンビア日本大使館勤務の日本人宅に設置されたコンピュータは、日本とのメール連絡、情報収集ツールとして有効に機能している。また、前年度おこなったGISを利用した参加型データベースを構築しつつあり、南部アフリカ研究者が随時、データの集積をおこなっている。今年度にはザンビアの基本図、ディジタル標高データ、ランドサット画像などのインストールをおこなった。また、平成18年度に予定されているワークショップにむけて、ザンビア大学経済社会研究所のスタッフとの打ち合わせをおこなった。
    【ザンビア北部州における臨地研究】
      ザンビア北部州ムピカ県において、タザラ回廊農業開発プロジェクト地域の入植状況に関する臨地研究をおこなった。開発事務所の職員とともに地域の境界、土地利用状況、入植者のインタビューをおこなった結果、土地の所有権を得た人々の多くは、南部州やタンザニア国境付近の高人口密度地域出身のトンガ人、マンブウェ人や、公務員、タザラ鉄道退職者などであるが、農場経営状態は個人の資力に応じて様々であることが明らかとなった。また、隣接してチテメネ焼畑をおこなうベンバ人とは、ピースワーク雇用、農法の交換など密接な繋がりができており、そのことが北部州の農村変容にとって大きな要因となっていると考えられた。
    【ザンビア中央州における臨地研究指導】
      成澤徳子さん(ASAFAS大学院生:平成16年度入学)には、ルサカ市チャンババレーにおける臨地研究、淡路和江さん (ASAFAS大学院生:平成16年度入学) には、中央州シアボンガ県における臨地研究の導入をおこなった。チャンババレーでは、植民地時代の白人農場がザンビア人に開放され、土地を得た退職公務員が近郊農業をはじめており、組合を通じた社会開発運動によって様々な階層の人々との関係ができつつある。このような場における都市−農村間の人の移動についての調査が開始された。シアボンガ県では、トンガの人々が半乾燥低地において在来農法によるソルガムの栽培をおこなっている。在来作物のトウモロコシ化が進んでいる南部アフリカにおいて半乾燥地の農業がどのような変貌をとげつつあるのかをテーマに調査が開始された。
    【ジンバブウェ・マシンゴ州における臨地研究】
      日本人によるジンバブウェ研究は、これまで政治研究、都市研究や、都市近郊農村の研究に限られており、白人に土地を追われた人々が居住する地域を含むコミュナルランドの研究はいままでおこなわれてこなかった。ムガベ大統領の強権政治による白人農場の収奪と白人の海外逃亡、農業生産の激しい落ち込みがジンバブウェの政治・経済状況を大変不安定なものにしているが、80年まで白人の支配下にあった国がどのような形で政治経済的自立の道を模索しているのかを農村部における人々の生活を通じて明らかにすることを目的として予備調査をおこなった。その結果、南部のマシンゴ州には白人所有の商用地域と、伝統チーフに属する共有地が共存しているが、もともと人口希薄地帯であったこの州では、白人はブッシュであった無人地帯を占拠し、北部高地にみられたような黒人からの土地収奪は顕著にはみられなかったこと、共有地ではショナの人々の人口増加により土地不足が顕在化しており、それが背景となって商用地域への黒人の侵入がおこっている現状が明らかとなった。

     

      今後の課題
       ザンビアFSでは、平成18年度秋にルサカにおいて21COE主催のシンポジウムを開催すること計画している。これまで臨地研究の実績がつまれてきた南部アフリカの諸国(ザンビア、ナミビア、ボツワナ、マラウイ、ジンバブウェ)の成果から、どのようなテーマ設定が可能かを派遣された大学院生が中心となって検討している。

     

     
    ザンビア北部州1:トラクタで18haの畑を耕作するトンガ移民   ザンビア北部州2:ミオンボ林を方形に開墾したトウモロコシのファーム
         
     
    ザンビア北部州3:出荷用トウモロコシとタザラ鉄道退職農民   ザンビア中央州1:ルサカのチャンババレーにおいてホストファミリーと成澤さん(中央)
         
     
    ザンビア中央州2:シアボンガ県の村で、自宅前で村人と記念撮影する淡路さん   ザンビア中央州3:雨季には水浸しになる谷沿いのソルガム畑(シアボンガ県)
         
     
    ジンバブウェ1:80年の独立以後、白人の姿がほとんど見られなくなったハラレ市街   ジンバブウェ2:南部シアボンガ州における典型的なコンターディッチ栽培。
    植民地政府の指導により、等高線に沿って作った畑の間には、4mの排水用の凹地がつくられた。
         
       
    ジンバブウェ3: 花崗岩の巨岩からできた山がつらなる
    美しい農村景観 (マシンゴ県)
       
     
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