報告
渡航期間: 2004年11月17日〜2004年12月5日 派遣国: ナミビア、フランス、タイ
出張目的
ナミビアにおける臨地調査、およびフランス・タイでの資料・情報収集
水野一晴
(大学院アジア・アフリカ地域研究研究科・アフリカ地域研究専攻)
活動記録
11月17日(水)〜18日(木)
関空発 − シンガポール経由 − ヨハネスブルグ経由 − ウインドフック着
11月19日(金)
ウインドフックのナミビア砂漠研究所にて研究連絡
11月20日(土)〜24日(水)
プロスにて臨地教育
11月25日(木)
ウインドフックのナミビア砂漠研究所にて研究連絡
11月26日(金)
ウインドフック発 − ミュンヘン経由 − パリ着
11月27日(土)〜28日(日)
パリにて資料・情報収集
11月29日(月)〜30日(火)
パリ発 − シンガポール経由− バンコク着
12月1日(水)〜3日(金)
タイ南部にて、自然環境に関する情報収集
12月4日(土)〜5日(日)
バンコク発 − 関空着
結果と進捗状況
ナミビアのウインドフックでは、ナミビア砂漠研究所のヘンシェル博士と会い、プロスに関する情報収集を行った。
カオコランドのプロスでは、吉田美冬さん(平成16年度入学)から、現地調査についての報告を受け、藤岡悠一郎さん(平成14年度入学)とともに、現地で吉田さんの研究に関するゼミを行った。吉田さんは、カオコランドのプロスに住んでいる砂漠ゾウの生態と環境および人間活動に関する調査を行っている。彼女の説明を受けながら、ゾウによる植生破壊の現状を観察した。プロスは砂漠に位置する人口150人ほどの村であるが、季節河川沿いのみに森林が分布し、そこに各種の動物が生息している。住民はゾウと古くから共存しているが、近年、ゾウの保護とともに、住民とゾウの経済的関係はかつての狩猟から観光に変化し、ゾウの個体数および住民の人口がともに増加している。その結果、ゾウによる植生破壊が急速に進行している。また、近年の乾燥化により森林の天然更新が進んでいない。したがって、今後の住民とゾウの共存関係にも異変が想定される。吉田さんは、このようなプロスの自然・生態・社会の変容の中におけるゾウと人間の関わりに焦点をあてて、博士予備論文の執筆に取りかかっている。
パリでは、アフリカ各地の自然環境についての情報集積を行うため、コンゴ民主共和国およびカメルーンの自然環境に関する文献を収集した。
タイでは、海岸部の観光開発による自然環境の変化について、予備的観察および情報収集を行った。今後、自然環境の変化に関するアフリカとアジアの比較研究に発展させる考えがある。
今後の課題
アフリカでは自然環境に関する研究があまり行われておらず、まだまだ未知の部分が多い。しかしながら、近年、アフリカの自然環境の変化は急速に進んでいる。また、アフリカのひとびとは自然と大きな関わりをもって生活している。したがって、アフリカの自然環境を明らかにする意義は大きく、今後、ますますこの種の研究は重要度を増していくことであろう。
アフリカの野生動物保護は近年活発になり、その種の研究も多数見受けられる。しかしながら、それらの多くは、現地の自然のことをほとんど知らずして研究が進められており、自然環境の変化をまったく考慮していないものがほとんどである。近年の急速な自然環境の変化を見るにつけ、その生態系との関わりを調査する必要性をとくに感じる。
プロス、ホアルシブ川沿いの河畔林に生息する砂漠ゾウ
プロス、ホアルシブ川沿いの河畔林に生息するキリン
21世紀COEプログラム「世界を先導する総合的地域研究拠点の形成」
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