報告
渡航期間: 2004年7月14日〜2004年8月13日 派遣国: タンザニア、トルコ
出張目的
タンザニアおよびトルコにおけるスーフィズム・タリーカの現地調査
東長靖
(大学院アジア・アフリカ地域研究研究科・東南アジア地域研究専攻)
活動記録
7月14日(水)〜15日(木)
関空発 − タンザニア、ダル・エス・サラーム着
7月16日(金)
ダル・エス・サラーム大学訪問(サム・マギンビ教授)・同大学図書館にて文献調査
7月17日(土)
シャーズィリー教団・モスク訪問(ダル・エス・サラームにおけるシャーズィリー教団支部長シャイフ・ヌールッディーンからタンザニアにおけるシャーズィリー教団の現状に関して聞き取り調査)
7月18日(日)
ダル・エス・サラームからザンジバルへ移動。「驚嘆の家」博物館館長アブドゥッシェリーフ氏(前ダル・エス・サラーム大学歴史学科教授)にザンジバルのタリーカに関して聞き取り調査。
7月19日(月)
ザンジバル文書館にて文献調査。ムハンマド・イドリース氏にタンザニアのタリーカについて聞き取り調査、同時にドイツ人研究者Roman LoimeierおよびNorbert Oberauer(いずれもバイロイト大学スタッフ)とタンザニアのスーフィズムおよびタリーカに関して意見交換。
7月20日(火)
ザンジバル文書館にて文献調査。再度ムハンマド・イドリース氏に聞き取り調査。
7月21日(水)
ザンジバルからダル・エス・サラームへ移動。タンザニア・パブリッシング・ハウスなどで文献収集。
7月22日(木)
ダル・エス・サラーム書店、カイザルス書店ほかで文献収集。ダル・エス・サラームのヒンドゥー教寺院訪問。アラブ首長国連邦、ドバイに移動。
7月23日(金)
ドバイからトルコ共和国、イスタンブルへ移動。
7月24日(土)〜8月1日(日)
イスタンブル・イスラーム研究センターにて、オスマン帝国期スーフィズム関連文献資料調査。市内の書店において文献収集。この間、7月28日にイスタンブル大学神学部レシャト・オンギョレン(Resat Ongoren)助教授とオスマン帝国期スーフィズムに関して意見交換。
8月2日(月)〜8月5日(木)
アンカラ大学神学部メフメト・バイラクダル教授、メフメト・サイト・レチュベル準教授と、MOUに関する打ち合わせ、ならびに意見交換およびスーフィズム関連文献収集。
8月6日(金)〜8月10日(火)
イスタンブル・イスラーム研究センターにて、オスマン帝国期スーフィズム関連文献資料調査。市内の書店において文献収集。この間、6、7両日に、トルコにおいて調査中のイディリス・ダニシマズ(本研究科一貫制博士課程2年在籍中)に対して、イスラーム研究センターおよびイスタンブル市内においてオンサイト・エデュケーション。
8月11日(水)
イスタンブル・ドイツ東洋学研究所にて、イブン・アラビー学派関連文献資料調査。
8月12日(木)
イスタンブルからドバイに移動。
8月13日(金)
ドバイから関空に移動。帰学。
結果と進捗状況
(1)フィールド・ステーションの運営
トルコ・シリアを中心とした西アジアにおけるフィールド・ステーション立ち上げのため、トルコのアンカラ大学との話し合いを行った。
また、西アジアフィールド・ステーション運営に役立てるべく、タンザニア・フィールド・ステーションの運営状況を視察し、情報を収集した。
(2)オンサイト・エデュケーション
ASAFASの大学院生、藤井千晶(平成16年度入学)が本年8月から9月にかけて、タンザニアにおいて臨地調査を行うのに先立ち、主要なインフォーマントとあらかじめ連絡をとり、同人の調査が順調に遂行されるべく、下準備を行った。
また、トルコにおいて現地調査中のASAFASの大学院生、イディリス・ダニシマズ(平成15年度入学)に対して、8月6、7の両日にわたって、イスラーム研究センターおよびイスタンブル市内において現地チュートリアルを実施した。
(3)国際交流
トルコのアンカラ大学との国際交流協定の調印に向けた話し合いを、同大学神学部のメフメト・バイラクダル教授と行った。同じくトルコのマルマラ大学との国際交流協定についても、推進中である。
(4)個人研究
今回の出張においては、タンザニアにおけるタリーカ(スーフィー教団)の臨地調査および文献調査と、トルコにおけるオスマン帝国期スーフィズムの文献調査を行った。
タンザニアにおいては、シャーズィリー教団の臨地調査を行うとともに、ダル・エス・サラーム大学図書館およびザンジバル文書館において文献調査を実施した。
トルコにおいては、イスラーム研究センターおよび東洋学研究所においてスーフィズム関係文献調査を行った。
今後の課題
西アジアにおけるフィールド・ステーション事業は軌道に乗り、アラブ世界・トルコ世界にまたがる人的ネットワークを構築しつつある。今回はこれに加え、タンザニア・フィールド・ステーションの視察および現地調査を取り入れたが、アフリカ、南アジア、東南アジアの各フィールド・ステーションとの連携研究が今後推進されるべきであろう。
個人研究に関していえば、東アフリカと西アジア両地域のスーフィズム・タリーカの現状に関する比較検討を今後の課題としたい。
ヤシュルティー・シャーズィリー教団ダル・エス・サラーム支部長シャイフ・ヌールッディーン
タリーカの中でも由緒あるシャーズィリー教団の流れを汲むヤシュルティー教団は、19世紀末にパレスチナで創設された。現在、ヨルダンで最大のタリーカである。シャイフ・ヌールッディーンはアラブ人であるが、タンザニアの公用語であるスワヒリ語も流暢にこなし、弟子たちの指導にあたる。なお、ヤシュルティーヤ教団については、大塚和夫他編『岩波イスラーム辞典』の「ファーティマ・ヤシュルティーヤ」の項(小杉孝子執筆)参照のこと。
イスタンブル・ドイツ東洋学研究所図書室 (Die Bibliothek der Abteilung Istanbul des Orient-Institut der Dertschen Morgenlandeschen Gesellschaft)
イスタンブルのジハーンギール地区にある本研究所は、筆者訪問時、水曜日のみの開館であった。図書室はさして大きくはないが、基本的な工具書がそろえられ、快適に研究ができる。
21世紀COEプログラム「世界を先導する総合的地域研究拠点の形成」
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