(1) 研究課題 (博士論文に予定しているタイトル)
(2) 博士論文において目的としていること
(3) そのうち,今回の現地調査で明らかにしたこと
<< 平成17年度 フィールドワーク報告へ戻る
渡航期間: 2005年12月19日〜2006年2月1日, 2006年2月14日〜2006年3月29日, 派遣国: エチオピア
(1) エチオピア南西部高地森林域に暮らす人々と「Geraの森」との諸関係に関する地域研究
伊藤義将 (アフリカ地域研究専攻)
キーワード: 植物利用, 認識, 在来地, 自然保護, 開発


温暖なゲラ行政区南部は森の反対側に位置し、人々は徒歩で2日かけて出かけていく。

収集したコーヒー実は、家の前の路上に干される。

ハチミツの収穫を行う少年。縄一本でどのような木にでも登る。
(2)  ここ数年の間に森林保護をめぐるパラダイムは、保護対象となる森林域に居住する人々や違法伐採業者を含む森林の利用者を排除することをとおして森林を管理するという方法から、違法伐採者を含む森林周辺地域の住民に森林を利用する権利を与え、彼ら自身によって森林を管理させるという方法にシフトした。現在、世界の多くの地域で行われている森林保護活動においては、地域住民その他の森の利用者の活動に関する深い知識と理解が必要とされている。この研究では、今まで森林と共に生活してきた人々の森林利用および認識に関する理解を深め、地域住民によって実施される森林保護・管理の可能性を探ることを目的とする。
  具体的に今回対象としたのは、〔1〕対象地域に人々が移住する以前は、人々はどこでどのような生活をしていたのか、〔2〕人々が移住を行なった後に彼らの生活はどのように変化し、自然環境にはどのような影響が及ぼされたのか、〔3〕現在、人々と森林の間にはどのような関係が築かれているのか、という3点である。

(3) 2005年12月19日〜2006年2月1日と2006年2月14日〜3月29日の間にエチオピア南西部に位置するジンマ郡ゲラ行政区で調査を行った。昨年に引き続き、ゲラ行政区の標高2600m付近に位置するセイチャ村にて聞き取り調査と参与観察を行なった。今回は人々の出自集団の編成に留意しながら、彼らがセイチャ村に移動してきた経緯を調査すると同時に、彼らの移動をともなう生業活動に関する重点的な参与観察を行なった。今回の調査では主に以下の5点が明らかになった。

  1. 人々は雨季である6月〜8月には、標高が低い温暖な地域へ出かけていきハチミツの採集を行なっている。
  2. 人々は11月〜1月の乾季には、雨季と同じ場所に出かけて行きコーヒー豆の収集を行なっている。
  3. こうして温暖な地域で採集するハチミツとコーヒー豆が、彼らの生計の大部分を占めている。
  4. 人々の多くは調査地であるゲラ行政区南部から移動してきており、彼らはオロモ人ではなく、カファという民族集団に起源を持つ人々である。
  5. 人々が移動を行なった理由の一つは、ゲラ行政区南部において商業用コーヒー栽培が拡大したために、南部の土地を売ったり、コーヒー・プランテーションにしたりして、そのかわりに新たな耕作地を求めたためである。

 
21世紀COEプログラム「世界を先導する総合的地域研究拠点の形成」 HOME