(3) ジャワ島西ジャワ州にあるグヌン・ハリムン−サラック国立公園内には約103の村落が存在しており、国立公園地域は、一次林のほか二次林や村落、茶畑、水田、畑地などが混在した土地利用となっている。さらにこの地域には、伝統的慣習によって生業活動に独自の制約を設けている村落が存在しており、村落ごとに生活様式や農法に違いが見られる。これまでの調査では、住民の生業活動の違いによる村落内の資源分布の変化が鳥類の種分布を変化させていることを示した(印刷中)。そこで今回の調査では、各調査村落における鳥類相が、どのように季節や人間活動の変化の影響を受けるかを明らかにすることを試みた。
今回の調査は、生業活動や農法の違いがみられ、国立公園に隣接する複数の村落で、鳥類の生息調査を行った。併せて村落の社会経済状況の概要を把握するためのインタビューを行った。本調査時期は、鳥の渡りの季節であったため、地域に定住する鳥類以外の渡り鳥による環境利用にも着目した。
鳥類は、前回の調査と比較して確認できた種数が減少した。その一方で、村落内に植林された樹林地で、数種の渡り鳥を確認した。確認種数の減少の原因は、雨期の悪天候による観察条件の低下といった自然条件以外に、薪炭林の伐採と換金作物の栽培面積の拡大、飼育水牛の増加による下層植生の減少など、人間活動に起因する生息環境の変化が考えられた。
社会経済調査の結果より、各村落で耕作している作物や面積の違いは、慣習法による農法の規定以外にも、土地の所有権や土地利用の変遷の影響が考えられた。