(1) 研究課題 (博士論文に予定しているタイトル)
(2) 博士論文において目的としていること
(3) そのうち,今回の現地調査で明らかにしたこと
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渡航期間: 2005年12月14日〜2006年4月14日, 派遣国: インドネシア
(1) インドネシアにおける国立公園周辺の鳥類相と人間活動との関係
片岡美和 (東南アジア地域研究専攻)
キーワード: 鳥類相,農法,住民生業,慣習法,国立公園

写真1:国立公園地域には約103の村落が存在する
写真2(上)/3(下):伝統的な慣習法は、焼畑耕作の実施を義務付ける一方で、米の販売や精米機の使用を禁止している

 
(2) 近年の森林・生物多様性保全に対する関心の高まりを背景に、 国立公園や保護区の設置が奨励されている。しかしながら、周辺地域に住む住民の生活に必要な食料、薪炭、建築資材などの採集場所や、村落自体が保護区 として設定された結果、国立公園の管理と地域住民の生活の間に多くの軋轢が生じている。
  既存の研究は、保護区の生物多様性の高さや地域住民による環境破壊を個別には報告してきたが、地域住民の生業活動がどのように保護区や 地域生態系の生物相と関わっているかを具体的に検証した例は少ない。村落およびその周辺の環境は、地形などの地理的な要因以外にも、人為による土地利 用変化等に伴って変わる。そのため保護区の生物多様性を議論する際には、周辺地域に住む人々の文化的背景や生活様式、農法といった人間活動からの影響 も視野に入れる必要がある。
  本研究は、人間活動の社会・文化的側面の違いが村落や周辺の保護区の鳥類相に与える影響を明らかにすることを目的として研究をすすめている。

(3) ジャワ島西ジャワ州にあるグヌン・ハリムン−サラック国立公園内には約103の村落が存在しており、国立公園地域は、一次林のほか二次林や村落、茶畑、水田、畑地などが混在した土地利用となっている。さらにこの地域には、伝統的慣習によって生業活動に独自の制約を設けている村落が存在しており、村落ごとに生活様式や農法に違いが見られる。これまでの調査では、住民の生業活動の違いによる村落内の資源分布の変化が鳥類の種分布を変化させていることを示した(印刷中)。そこで今回の調査では、各調査村落における鳥類相が、どのように季節や人間活動の変化の影響を受けるかを明らかにすることを試みた。
  今回の調査は、生業活動や農法の違いがみられ、国立公園に隣接する複数の村落で、鳥類の生息調査を行った。併せて村落の社会経済状況の概要を把握するためのインタビューを行った。本調査時期は、鳥の渡りの季節であったため、地域に定住する鳥類以外の渡り鳥による環境利用にも着目した。
  鳥類は、前回の調査と比較して確認できた種数が減少した。その一方で、村落内に植林された樹林地で、数種の渡り鳥を確認した。確認種数の減少の原因は、雨期の悪天候による観察条件の低下といった自然条件以外に、薪炭林の伐採と換金作物の栽培面積の拡大、飼育水牛の増加による下層植生の減少など、人間活動に起因する生息環境の変化が考えられた。
  社会経済調査の結果より、各村落で耕作している作物や面積の違いは、慣習法による農法の規定以外にも、土地の所有権や土地利用の変遷の影響が考えられた。

 
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