(1) 研究課題 (博士論文に予定しているタイトル)
(2) 博士論文において目的としていること
(3) そのうち,今回の現地調査で明らかにしたこと
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渡航期間: 2005年12月8日〜2006年4月2日, 派遣国: タンザニア
(1) タンザニア・チャガ人の都市―農村関係の歴史的な構築過程と現在の諸相
溝内克之 (アフリカ地域研究専攻)
キーワード: タンザニア, チャガ人, 都市・農村関係, 埋葬儀礼, 同郷会


屋敷畑。家屋を中心にバナナとコーヒーが栽培されている。

都市からのバス。都市生活者はさまざまな機会に帰省する。

屋敷畑内の墓。
(2) 本研究の対象としたチャガ人は、タンザニア北部キリマンジャロ山の中腹域に住み、バナナとコーヒーを主作物とする農業を営んできた。また古くから都市に進出し、都市では「商人」もしくは「高学歴エリート」として活躍する人びとが多かった。都市在住者は出身村にも土地を保有し、村に家屋を建て、さまざまな機会に帰郷し、死後はその土地に埋葬されるなど出身村との関係を保持してきた。本研究では、近年のタンザニアにおける社会・経済・政治的変容を視野に入れ、農村部と都市部での調査を総合して、都市―農村関係の歴史的な構築過程と現在の諸相を明らかにすることを目的としている。農村部では、都市への進出を含めた生活の歴史的な変遷過程の解明を基礎とする。そして、急速な人口増加と土地の男子均分相続の結果、各世帯の保有地が狭小化し、また経済的基盤であったコーヒー生産が1990年代の経済自由化以降に低迷傾向を示している現況の実態把握を目指す。特に、村人の生計・生活の維持機構と、それを支える都市在住者との諸関係の変化に注目する。都市部では、遺体を村に運び埋葬することを主目的とした同郷会が設立されている。それらの組織は、多くのメンバーを集め都市でのチャガ人の組織化の契機となっている。これらの同郷会の活動の展開と、それが従来の都市―農村関係にどのような影響を与えているのかを明らかにする。

(3) 2005年12月9日〜23日、ダルエスサラームにおいて資料を収集し、また12月13日に開催されたワークショップに参加して現地研究者と討議を深めた。その後12月24日から2006年4月2日の期間、キリマンジャロ州ロンボ県マキーディ村において現地調査を行った。調査は、1.近年のマキーディ村の社会経済的状況の把握、2.村外への移動の歴史的変遷の解明、3.遺体埋葬に関わる諸事例の収集と観察に力を注いだ。

  1. 主要な調査対象とした村区の全土地区画(約250区画)の所有者や居住者への聞き取り調査を実施した。その結果、多くの世帯はコーヒー生産を休止・中止し、定期市での食糧作物販売や国境貿易など多様な経済活動によって所得源の確保を試みていることが明らかになった。また都市在住者からの送金や村への援助、都市在住者が保有する土地の借用、若い世代の都市での働く場の確保など、都市在住者が出身農村の経済生活に大きく貢献している実態が明らかになった。また新しい傾向として、婚出者や都市に経済的基盤を持つ未婚女性が村に送金する事例も確認された。
  2. 1.の調査で対象とした世帯において世帯主と配偶者、その兄弟姉妹、父親・祖父および子・孫世代の移動経験と居住地の聞き取りを実施した。過去の移動形態は、短期の男子単身が中心であったこと、近年は男女問わず多くの人びとが都市に移動し、都市での在住期間は長期化の傾向にあることが明らかになった。この変化は村の土地の管理方法や親族集団との紐帯の維持などに影響してくると思われる。
  3. 今回の調査では、調査地出身者の埋葬場所の確認と都市の同郷会組織の活動について聞き取り・観察を行った。かつては老後に帰郷して生涯をまっとうし、村に埋葬された事例が多い。また都市部で死去した場合には、その地に埋葬し、埋葬地の石と土を遺体の代用として村に持ち帰った事例もみられた。しかし1990年代に入り多くの都市の同郷会が結成され、遺体を村に運び埋葬する傾向が顕著になってきたことが明らかになった。また、都市部での調査において、遺体の搬送が活動の目的であった同郷会が政治的・経済的な活動も展開しつつあることが観察された。

 
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