(3) 2005年12月9日〜23日、ダルエスサラームにおいて資料を収集し、また12月13日に開催されたワークショップに参加して現地研究者と討議を深めた。その後12月24日から2006年4月2日の期間、キリマンジャロ州ロンボ県マキーディ村において現地調査を行った。調査は、1.近年のマキーディ村の社会経済的状況の把握、2.村外への移動の歴史的変遷の解明、3.遺体埋葬に関わる諸事例の収集と観察に力を注いだ。
- 主要な調査対象とした村区の全土地区画(約250区画)の所有者や居住者への聞き取り調査を実施した。その結果、多くの世帯はコーヒー生産を休止・中止し、定期市での食糧作物販売や国境貿易など多様な経済活動によって所得源の確保を試みていることが明らかになった。また都市在住者からの送金や村への援助、都市在住者が保有する土地の借用、若い世代の都市での働く場の確保など、都市在住者が出身農村の経済生活に大きく貢献している実態が明らかになった。また新しい傾向として、婚出者や都市に経済的基盤を持つ未婚女性が村に送金する事例も確認された。
- 1.の調査で対象とした世帯において世帯主と配偶者、その兄弟姉妹、父親・祖父および子・孫世代の移動経験と居住地の聞き取りを実施した。過去の移動形態は、短期の男子単身が中心であったこと、近年は男女問わず多くの人びとが都市に移動し、都市での在住期間は長期化の傾向にあることが明らかになった。この変化は村の土地の管理方法や親族集団との紐帯の維持などに影響してくると思われる。
- 今回の調査では、調査地出身者の埋葬場所の確認と都市の同郷会組織の活動について聞き取り・観察を行った。かつては老後に帰郷して生涯をまっとうし、村に埋葬された事例が多い。また都市部で死去した場合には、その地に埋葬し、埋葬地の石と土を遺体の代用として村に持ち帰った事例もみられた。しかし1990年代に入り多くの都市の同郷会が結成され、遺体を村に運び埋葬する傾向が顕著になってきたことが明らかになった。また、都市部での調査において、遺体の搬送が活動の目的であった同郷会が政治的・経済的な活動も展開しつつあることが観察された。