(3) 今回の派遣では、タイ東北部・ヤソートン県・カムクワンケーオ郡の東北部に位置するプラーイット村の村長に対し、森林利用に関する聞き取り調査を行った。調査は、8月初旬の数日間で行った。当村には、複数の里山や鎮守の森が残存しており、住民が現在も継続して森林資源を利用していることから、この地域における森林利用および森林生態を明らかにする上で必要なデータが得られると考えた。
聞き取り調査の結果の一部として、thon ko (Lithocarpus sp.)の利用方法を知ることができた。同種は、博士予備論文の中で、里山において、BAが大きいという特徴があった。聞き取り調査によれば、同樹種は、割れやすい性質があるため、薪として利用しやすく、実が可食であり、さらにその煮え湯は出産直後の産婦の滋養によいとされている。村長自身も、妻の出産時には森へ入り、thon ko (Lithoracpus sp.)の木を伐採している。里山というアクセスのしやすい森林パッチでは、このような有用な樹種の利用が盛んに行われることが示唆される。森林パッチに生育する樹木の生態学的特徴は、利用形態やその履歴のみならず、樹種ごとの利用方法も加味する必要がある。その上で、利用価値のある森林パッチの保全が意義付けられると考える。