報告
渡航期間: 2005年12月5日〜2005年12月22日 派遣国: ウガンダ
出張目的
ウガンダ西部のバンツー系諸語の記述比較研究
梶茂樹
(大学院アジア・アフリカ地域研究研究科・アフリカ地域研究専攻)
活動記録
12月5日(月)
成田発 − アムステルダム着(オランダ)
12月6日(火)
アムステルダム発 − カンパラ着(ウガンダ)
12月7日(水)
カンパラ発 − ポートフォータル着(ウガンダ) 。7日午前に首都カンパラにあるマケレレ大学言語研究所を訪れ、午後、西部のポートフォータル市に向かう。そしてポートフォータル市周辺において20日の午前中までトーロ語およびトーロ文化について臨地調査を行う。
12月20日(火)
ポートフォータル発 − カンパラ経由(機中泊)
12月21日(水)
アムステルダム着、アムステルダム発(機中泊)
12月22日(木)
成田経由、京都着
結果と進捗状況
マケレレ大学言語研究所はウガンダにおける言語教育および研究の中心地である。ドイツ語、フランス語、スワヒリ語などの研究・教育と並んで、ウガンダの様々な部族語・民族語の研究・教育も行っている。ただし、人的資源の制約からだと思われるが、すべての言語についてではなく、ウガンダの主要な言語であるルオ系と、バンツー系諸語が中心である。前所長のJohn Kalema博士はバンツー系のガンダ語の専門家で、言語の国際シンポジウムで2回日本に来たことがある。今後の日本とウガンダの言語研究の協力関係について話し合った。
報告者の現在の興味の中心はウガンダ西部からタンザニア北西部にかけて話されるバンツー系のニョロ語(Nyoro)、トーロ語(Tooro)、アンコーレ語(Ankole)、キガ語(Kiga)、ハヤ語(Haya)などの比較研究であり、とりわけ、それらの言語の声調の発展過程を通時的に跡づけることである。その中でもトーロ語は声調を失っており、この声調消失がどのようなプロセスを経て可能となったかを解明することが目下の主たる興味の中心であり、今回の臨地研究もこの点を主眼にして行われた。
今後の課題
ウガンダ研究の利点は、国が小さいため、5、6時間も車を飛ばせば大体何処へでも行ける点である。道路も比較的整備されている。ただ、国の北部はゲリラLRA(Lord's Resistance Army「神の抵抗軍」)の活動域なので現在は調査が難しい。
ウガンダとコンゴの国境地帯は、西アフリカのナイジェリアとカメルーンのあたりから森林地帯をまくようにして東進したバンツー系諸族が南進を始めた地域で、バンツー諸語の中でも古い言語が残っていると言われている地域である。例えば、ウガンダではコンジョ族(Konjo)と呼ばれ、コンゴではナンデ族(Nande)と言われる人たちの言語は、バンツー祖語が持っていたと思われる10母音の痕跡をその母音調和の中にとどめている。それに対してトーロ語のような言語は声調を失っており、新旧の極端な対比をなしている。
報告者はすでに、アンコーレ語、ハヤ語の調査を終えており、また今回の調査で、すでに調査を開始していたトーロ語の全体像は掴めたので、この言語についてはあとは細かい点と見直しをするのみで、その後は調査の残っているニョロ語、キガ語の研究に取りかかりたいと思っている。
マケレレ大学構内
ポートフォータル市内目抜き通り
ポートフォータル市の小高い丘に立つトーロ族の王宮。一度破壊されたが、リビアのカダフィー大佐の財政支援で再建中である。
ポートフォータル市郊外のカトリック教会での
ミサの風景。
ポートフォータル市郊外のトーロ族の田舎の風景。村を作らず、畑の中に家族ごとに分散して住む。
トーロ族の伝統的家
21世紀COEプログラム「世界を先導する総合的地域研究拠点の形成」
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