フィールドワーク報告
  (1) 研究課題 (博士論文に予定しているタイトル)
(2) 博士論文において目的としていること
(3) そのうち,今回の現地調査で明らかにしたこと
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渡航期間: 2002年12月1日〜2003年2月28日, 派遣国: タンザニア
(1) タンザニア南部高地における在来農業の展開に関する農業生態学的研究
近藤史  (アフリカ地域研究専攻)
キーワード: 東アフリカ,在来農業,生業の変容,谷地耕作,アグロフォレストリー


トウモロコシが作付けられた造林型焼畑(3年目)。畑の中には,再 生してきた樹木がところどころ残される。
(2) 東アフリカ・タンザニア南部高地に暮らす農耕民ベナは,近年の社会的・経済的変化に対応し,在来農業のなかで新しい農法を創出してきた。 本研究は,新たに創出された農法について,創出過程,生態系への影響,持続性などを農業生態学的に解析し,同時に,それがベナ社会へ与える社会的・経済的影響について検討することを目的とする。
  ベナは,雨期には斜面地を,乾期には谷地を利用する独自の在来農業を発達させてきた。従来,その両方で焼畑農耕をおこなっていた。しかし現在,斜面地では,生長の早い樹種を導入して造林型の焼畑をおこない,谷地では,排水の強化による冠水地の耕地化と,化学肥料の導入による連作への試みに成功している。ベナは在来農法を自ら革新することで,人口圧の高まりによる休閑地不足を解消し,また現金収入の道をひらき,社会や経済の変化に対応している。こうした在来農業の動態を捉えることは,「伝統的な」在来農業の偏重や近代農業の押し付けとは異なる,アフリカ農業の新たな展開・発展の可能性を模索するうえで意義があると考える。

(3) 今回の調査では,2002年12月1日から2003年2月28日の期間,タンザニア南部のイリンガ州ンジョンベ県キファニャ村において現地調査をおこなうとともに,モロゴロのソコイネ農業大学において多分野の研究者と交流し,情報の収集と意見の交換をおこなった。調査の目的は,A) ベナの斜面地の農業について,耕作システムとその歴史的な展開を明らかにすること,同時に,B) ベナの生計経済の全体像を把握することである。

A) 斜面地では,主食作物を栽培する。従来,休閑中に繁茂した草を刈り,それを集積して土で覆いマウンドを造った後,中の草に火をつけて土を蒸し焼きにし,焼け跡でシコクビエを栽培した。一方,タンザニア政府が化学肥料を信用貸与した1960年代後半から,主食作物はトウモロコシにかわり,化学肥料を用いた連作がはじまった。さらに現在,マツやブラックワットルの植林地を製炭用または製材用に伐採し,残った枝葉を燃やしてシコクビエを一年間栽培した後,トウモロコシを二年間,無施肥または少量の施肥で栽培する造林型焼畑が広まりつつある。
B) 現在,ベナの生計経済を支える現金収入源は,木材の販売,家畜の販売,谷地畑から収穫されるインゲンマメの販売の3つに大別される。木材および家畜の販売は,高額の収入を得られるが,定期的に収入を得られるまでには発達していない。毎年販売できるインゲンマメは,少額ながら安定した収入源となっている。ベナの人びとは,生計の基盤を谷地畑に置き,高等教育の学費や,冠婚葬祭の費用などの高額な出費には木材や家畜を販売して対応している。

 
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