21世紀COEプログラム研究会
アフリカ地域研究会

日時: 2006年3月16日(木) 15:00〜17:00

場所: 京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科
(京都市左京区吉田下阿達町46)東棟2階第一セミナー室(207号室)

演題: グローバルな言説から外された戦い:南北スーダン境界地域の住民達の内戦経験

講 師: 岡崎彰(神奈川大学助教授)

要 旨: 
  2005年1月、21年間以上続いたスーダンの内戦に一応の終止符が打たれた。 この内戦については、スーダン国内の政治・経済面での著しい不公平・格差の問題 よりも、北部の「イスラーム教徒のアラブ人」と南部の「キリスト教徒や土着宗教 のアフリカ人」とのあいだの対立、というまことしやかな解説のほうがグローバル なメディアではよく使われてきた。ただし、はじめはこれが部外者の勝手な図式的 区分に過ぎなかったかもしれないが、戦争の当事者のほうもいろいろな事情でこの 図式を「演」じたり「利用」したりしてきたと言えなくもないところがあった。そ の結果、南北間の「文化的共通性」よりも「差異」のほうが強調されてしまいがち だった。その一方で、南北の境界地域の住民達はこの図式の各要素が分かち難く入 り混じったかなり複雑な現実を幾世代にもわたって生きて来て、割り切れた図式を なかなか「演じきる」わけにもいかなかった。このような地域では(ヌバ系やフル 系の集団の一部が武装蜂起して世界のメディアに注目されたことを除くと)大多数 は「明白な対立」より「駆引き・妥協・煮え切れなさ」で内戦を乗り切る他はなく、 そのため、目立たず、見放された地域であり続けた。本発表では、その典型ともい える東部スーダン・ブルーナイル地方のガムク社会周辺の状況を、現実の複雑さに こだわりつつ詳細に追いながら、グローバルな勢力や言説とローカルな実践とのあ いだで戦後の地域社会がどのように再編されつつあるか検討したい。特に、これま で最も周縁的で見放されてきたこの地域が、実はスーダンの「文化的縮図」として の特徴を備えた地域でもあるというパラドックスを指摘したい。

この研究会は、京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科と京都大学東南アジア研究所が、2002年度から共同で遂行している21世紀COEプログラム「世界を先導する総合的地域研究拠点の形成」の研究活動の一環です。

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