21世紀COEプログラム研究会
アフリカ地域研究会

日時: 2003年6月26日(木) 15:00〜17:00

場所: 京都大学アフリカ地域研究資料センター
新館3階 共同講義室(京都市左京区吉田下阿達町46)

演 題: 「ローカル」再発見−西アフリカにおける民営化と資源管理

講 師: サラ・ベリー(京都大学アジア・アフリカ地域研究研究科 客員教授)

要 約: 
アフリカにおける構造調整計画が貧困を深化させ天然資源の消耗に拍車を かけているとする証拠が1980年代末から1990年代初頭にかけて増えるに従い、研 究者や政策立案者たちは、貧困を削減し持続的発展を促進するための新しい戦略 を模索し始めた。多くの人々は、政策改革が、1970年代の債務危機や経済停滞の 原因を成したと考えられる政府主導の開発政策に回帰するのではなく、普通の人 々が開発過程に参画できる途を探るものでなければならないと考えた。普通の人 々が資源や経済的機会に対するアクセスを強化し、資源経営や管理に関する決定 への発言権を強化することによってである。市場の自由化を堅持しつつこれを実 現する一つの方法として、土地や自然資源に対する個人や地域社会の権利を保障 し、地域自らが統治構造を強化することによって、個人や地域社会を強化する方 法が議論された。国際機関やNGOは、英語圏では「community titling」や 「community management」といった題目の下で、フランス語圏諸国では 「gestionde terroirs」や「patrimoine」の題目の下で、市場自由化の恩恵を政 治的に疎外されている貧しい人々に行き渡らせることによって、市場の力を削ぐ ことなく、平等で持続的な開発を押し進める方策を模索した。  最近まで、多くの持続的開発に関する議論において「ローカル」は、「貧困」、 「疎外」あるいは「普通の」人々と同義語として見なされてきた。そして、地域 社会に資源を振り向けることは、より平等で持続的成長パターンを生むものと考 えられてきた。しかしながら、最近のガーナや他の西アフリカ諸国での研究は、 これらの仮定に疑問を投げかけている。民営化の推進や資源へのアクセスや経営 の地方分権化を目指した試みに関する詳細な調査は、それらの試みが、地方の利 害関係者や政治的支配構造と様々な仕方で相互に作用しあっており、恩恵の不平 等性を弱めるどころか逆に強め、さらに社会的諸権利保護の名の下で新しい形の 排斥を生んでいることを示唆している。 これらの諸研究を参考にして、本講義では、「ローカル」に関する様々な解釈が、 民営化や持続的発展に関する議論にどの様な影響を与え、また地方の権威やアイ デンティティをめぐる相対立する要求が民営化や資源経営の場で実際にどの様に 実現されてきたのか、という点を探ってみたい。貧しく不利な境遇の人々の能力 を高めようという政策は、「ローカル性」に新しい定義を与えたり、地元民優先 の要求を楯にとることによって、帰属と排斥の政治を、変革するよりは単に装い を変えることに多く作用している可能性がある。

この研究会は、京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科と京都大学東南アジア研究センターが、2002年度から共同で遂行している21世紀COEプログラム「世界を先導する総合的地域研究拠点の形成」の研究活動の一環です。

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連絡先: 京都大学アフリカ地域研究資料センター、宮本可奈子
TEL: 075-753-7821 FAX:075-753-7810

E-mail: kanako@jambo.africa.kyoto-u.ac.jp

 
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