研究会 「文化のインヴォリューション」再考―バリ文化の表象と消費を中心に―」

日時: 2003年3月28日(金) 16:00〜18:00
会場: 京都大学東南アジア研究センター 東棟2F教室

話題提供者: 中野麻衣子(一橋大・学振特別研究員)

発表要旨
  インドネシアのバリ社会の今日的状況は、1970年代から、「文化のインヴォリューション」という概念で説明されてきた。文化を「売り」に観光地として発展する中で、バリはますますバリらしくなっているという議論である。これはバリの「バリ化」とも呼ばれる。1980年代、90年代と、バリの観光産業は飛躍的な成長を遂げた。この中で、「バリ文化」の中心的要素とされる芸能や儀礼は、かつてなかったほどに活性化している。だがこうした現状については、自文化意識の覚醒や文化的自己主張以上の説明はこれまでなされてこなかった。従来の文化のインヴォリューションをめぐる議論は、いわば対外的な文化表象を特権化した議論であった。だが対内的な文化表象にも着目するとき、今日の「バリ化」は「インヴォリューション」という概念では捉えきれない様相を帯びてくる。国際的な観光産業の場で形成された「バリ文化」は、今やバリ人自身の社会生活に取り込まれ、顕示的消費の対象とされる中で、新たな価値を与えられている。
  本報告では、1999年以降収集してきたフィールドデータをもとに、こうしたバリ社会におけるバリ文化の表象と消費の特徴、その社会的条件を説明しつつ、今日の「バリ化」の様相を明らかにしていくとともに、それを支えているバリ住民の「近代」観を描き出していきたい。
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