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13:00〜14:00 |
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辰巳頼子(上智大)
「越境するイスラーム−マラナオ社会における移動の諸相から−」 |
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フィリピンにおける国民統合の歴史は、フィリピン・ムスリムにとっ
ては周辺化の歴史であった。とくに、ムスリムが多く居住するミン
ダナウ島へキリスト教徒の移住が進むにつれ、いわばホームラ
ンドにおいてさえ政治・経済的なマイノリティとなったムスリムのな
かには、自己の存在理由の根拠を国民国家の外の権威に求め
ようとするものもでてきた。なかでもミンダナウの代表的なムスリム
民族集団であるマラナオは、移動/越境することによって中東イス
ラーム世界との繋がりを強化し、より確かなもの、すなわちより正
統なイスラームへと自らを同一化させることによって、フィリピン国
家による経済的、政治的周辺化に対抗しようとしてきた。本発表で
は、マラナオによる中東イスラーム社会とフィリピンのあいだの移
動、すなわち留学、巡礼、出稼ぎに注目し、これに伴うモノ、カネ、
知識の還流の諸相を明らかにする。そしてフィリピン国家、オイル・
マネー、グローバルな労働市場、テロリズムなど、この還流に影響
を与えるアクターにも注目しながら、現代における宗教の越境の条
件と意味を考える。 |
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14:00〜14:15 |
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質疑応答 |
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14:15〜15:15 |
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永渕康之(名工大)
「国家による制度化が少数派宗教にもたらしたものとは何か?
−インドネシアにおけるヒンドゥーをめぐる国家と共同体の攻防−」 |
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世界最大のイスラーム人口から構成されるインドネシアにおいて、
ヒンドゥーは絶対的少数派である。少数派宗教の国家体制への組
み込みは、宗教省による承認および宗教政策の受け皿となる代表
機関の設置によって保障された。しかし現在、国家が確立したこう
した宗教制度は、ヒンドゥー代表機関の内部分裂をもたらし、強い体
制批判を生んでいる。もともとバリ島の共同体から出発したインドネ
シアのヒンドゥーが、国家の制度化をへることでバリ島の慣習から脱
領域化したことが最大の原因である。1980年代半ば、絶頂期に
あったスハルト政権による宗教勢力の囲い込み以後、ことにバリ島
外の勢力によるバリ島中心主義への攻撃は激化し、ヒンドゥー内部
の論争はあらわになった。この論争において何が問われているかを
明らかにして、国家、宗教、共同体の関係を考えてみたい。 |
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15:15〜15:30 |
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質疑応答 |
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15:30〜15:45 |
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コーヒーブレーク |
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15:45〜16:45 |
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林 行夫(京大)
「<タイ仏教の危機>とは?−制度と実践のなかの<僧界>と<俗界>−」 |
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東南アジア大陸部諸国に広がる上座仏教は、世俗社会からの離脱
を目的とする出家主義の宗教である。しかし、歴史上の出家者集団
(サンガ)は、常に世俗権力に依存するとともに、在俗信徒社会との
関わりのなかで、地域や民族ごとに多様な実践を築いてきた。タイ国
は最初の「1902年サンガ法」以来、全国の出家者や寺院組織を統括
し、「国家(民族)に内属する宗教」、伝統文化としての仏教を内外に
表象している。ところが、その制度の裾野ないし周縁には、師弟関係
に基づく出家者や在俗者の個別の実践が、それぞれの地域社会の
脈絡のなかで今日も広く観察される。近代国民国家タイは、支配の
ツールとして仏教をいかに制度化しようとしてきたのか。さらに、グロ
ーバルな社会変化の下で生じた「サンガ法」改定問題、「仏教の危機」
が叫ばれる近年、実践の統制はいかなる様相をみせているのか。本
報告では、世俗権力を担う者が定義する制度仏教と、フィールドで遭
遇する実践仏教との差異と相関関係に留意しつつ、メディアや知識人、
NGOなどが客体化するタイ仏教と、それとは無縁な住民による実践の
社会的基盤について考察したい。
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16:45〜17:00 |
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質疑応答 |
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17:00〜17:15 |
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コーヒーブレーク
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17:15〜18:00 |
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総合討論
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