研究会
「共生の戦略−フィリピン・パラワン島南部における先住少数民族モルボッグ族の沿岸域での自然利用とその意義」


話題提供者: 辻 貴志 氏(神戸学院大学大学院 人間文化学研究科)
日時: 2004年4月16日(金) 
16:00〜18:00
場所: 京都大学東南アジア研究所 東棟207教室


 フィリピンのパラワン島は、「最後の開拓地(ラスト・フロンティア)」として、急激な移民の流入や木材伐採、鉱物採掘、水産資源の乱獲といった天然資源の収奪や開発の波にさらされてきた。しかし、こうした外的圧力は島の自然環境を減退させただけにとどまらず、元来それに依存して生活してきた先住少数民族たちの土地や生業の場をも脅かし、かれらの社会構造や価値観も大きく揺さぶられつつある。

 本報告では、パラワン島の先住少数民族たちのうち、島南部のイスラム教徒であるモルボッグ族を対象として議論をおこなう。かれらは焼畑農耕を主な生業にするが、沿岸域での自然利用、とりわけ漁撈活動にも積極的に従事している。その漁撈活動と産物が、焼畑の生産性が低下する中、かれらの生計維持だけでなく、市場での現金収入の獲得や他民族との民族間関係の構築においても重要な位置を占めていることを報告したい。

 しかし、ダイナマイト漁などによる違法漁業や沿岸開発の影響により、沿岸域での自然利用の将来もまた危惧されつつある。このような現状の中、どのようにしてかれらが自分たちの民族的ニッチェを模索し危機に対応しつつあるのか考察してみたい。

これは、「東南アジアの自然と農業研究会」第115回定例研究会です。

問い合わせ先:

星川圭介 総合地球環境学研究所
Tel. 075-229-6155 / e-mail: hoshi@chikyu.ac.jp

田中耕司 京都大学東南アジア研究所
Tel. 075-753-7307 / e-mail: kjtanaka@cseas.kyoto-u.ac.jp

 
 
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