インドネシアでは、1980年代後半から、イスラーム復興の社会現象が顕著に見られるようになり、金融分野においても、イスラームのシャリーア(syariah イスラーム法)原則に基づいて運営される「シャリーア金融機関」の設立を実現しようとする動きが活発化した。その結果、1992年には同国初のシャリーア普通銀行であるインドネシア・ムアマラット銀行(Bank Muamalat Indonesia: BMI)が、スハルト大統領の支援を受けて設立された。同国では、ムアマラット銀行のほかにも、小・零細企業に対して100万ルピア以上の小規模融資を行なうシャリーア庶民信用金庫やシャリーア村落金融組合バイトゥル・マール・ワッ・タムウィル(Baitul maal wat Tamwil:BMT)が普及している。シャリーア村落金融組合は、インドネシアのシャリーア金融機関の中で、最も古くから実践されてきたとされ、現在までに全国で3000以上設立されている。
さて本報告では、こうしたイスラーム式の小規模金融の中でも最も小規模な貸付を行なっているシャリーア村落金融組合に焦点をあてる。シャリーア村落金融組合の設立の背景について明らかにするとともに、ジョクジャカルタ特別州でおこなった調査をもとに、実際の経営状況および利用状況を検討し、シャリーア村落金融組合が直面している問題点と小規模金融としての今後の課題について述べる。