研究会
「移住経験と『華』人の動態的理解にむけて―タイ北部における雲南系漢人と雲南系回民の移住とネットワークの形成から―」


話題提供者: 王柳蘭(京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科)
日時: 2005年5月27日(金) 16:00〜18:00
会場: 京都大学東南アジア研究所 東棟2F教室

中国からタイに移住してきた中国人については、これまで海路華人移住 者(Overseas Chinese)が主流とされ研究蓄積がなされてきた。しかしな がら、タイ北部国境からビルマ、さらに雲南に目を向けると、そこには陸路 を通じて歴史的に移住と定着を繰り返してきた陸路華人移住者(Overland Chinese)の姿がある。彼らは「雲南人」と自称している。

現在、北タイ国境には約70箇所以上の雲南人集落があると言われてい る。本発表では、これら国境地帯に住む「雲南人」が、タイに定着していく 過程でどのように"われわれ"集団を形成しつつあるのか、彼らの移動と 定着の歴史的過程ならびに、今日におけるネットワークの展開から浮き 彫りにしていく。

具体的には、第1に、タイにおける雲南人集落について、文献資料と聞き 取り調査によって得られたデータをもとに、20世紀前半から20世紀後半に かけて集落が形成されてきた歴史的経緯とその諸段階を示す。第2に、 「雲南人」を構成するサブ・グループである雲南系漢人と雲南系回民(ムス リム)のそれぞれについて、彼らの移住と定着の過程について、口承史か ら得られた資料にもとづき、微視的に集団の生成過程をみていく。第3に、 彼らがタイに定着していく過程で、タイ国家のなかで周縁化されていきな がらも、これら両グループがいかに社会関係を構築し、国境を越えたネッ トワークの展開を図っているのかについて述べる。

最後に、雲南系漢人と雲南系回民が北タイという移住の最前線において、 国家や地域間関係に影響を受けながら、いかに「華人」集団形成に向け て葛藤と揺らぎを抱えているのかという点について、雲南からタイへの 移住の経験にもとづいて考察を試みる。

これは、「東南アジアの社会と文化」研究会の第23回です。

この研究会は原則として奇数月の第三金曜日に開催されます(ただし今回は第四金曜日)。7月は夏休みとし、研究会は開催しません。研究会の案内はメールを通じて行っています。お知り合いの方、とくに学部生・院生・若手研究者に、このメールを転送するなどして、案内リストへの参加をお勧めいただければ幸いです。案内リスト参加希望者の連絡先はnagatsu@cseas.kyoto-u.ac.jpです。


[世話人]
杉島敬志(京大大学院アジア・アフリカ地域研究研究科)
林行夫(京大東南アジア研究所)
[事務局]
速水洋子(京大東南アジア研究所)yhayami@cseas.kyoto-u.ac.jp
長津一史(京大東南アジア研究所)nagatsu@cseas.kyoto-u.ac.jp
王柳蘭(京大大学院アジア・アフリカ地域研究研究科) wliulan@asafas.kyoto-u.ac.jp

 
 
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