研究会
"Can Pulse Improve Myanmar Rural Economy?
- Changes of Income Distribution in a Green gram Producing Area in Lower Myanmar -"

*日本語で行われます。


発表者: 岡本郁子(アジア経済研究所)
日時: 2005年9月29日(木) 16:00〜18:00
会場: 共同棟3階307号室

輸出向け豆類の増産は1990年代のミャンマー農業部門における最大の成功とされる。しかし、農村における実際の発展過程やその帰結はこれまで十分明らかにされていない。本報告は、下ミャンマーの新興マメ産地における実態調査をベースに、マメ作(リョクトウ)の普及が農村経済をどの程度活性化させたのか、その意義と限界を明らかにすることを目的としている。

本報告では、以下の3点を中心に議論する。第一に、マメ作発展は、農家、農業労働者、また商人にどの程度の経済的便益をもたらし、またそれがいかに分配されたのか。第二に、その発展過程と経済的便益の分配を規定した要因は何であったのか。第三に、マメ作発展はいかなる性格のものであり、そこで政府が果たした役割はどのように評価できるのか。

主な論点は以下の通りである。マメ作は農家、商人の所得を飛躍的に増加させ、彼らの経済水準は大幅に向上した。その背景には、トラクターレンタル市場及び信用市場の発達が技術的および資本制約の緩和に貢献し、同時に資本と信用力を有する者にとってさらなる稼得機会となったことが大きい。一方、農業労働者に対してはマメ作の経済効果は極めて小さかった。マメの生産・流通構造が労働節約的な性格を有していたこと、また彼らが新たな経済機会に参入するだけの資本・信用力を有さないことが決定的に影響したためである。そして、このマメ作発展は、政府の市場経済化政策の一貫として意図されたものでは必ずしもなく、むしろ既存の遊休資源(土地・資本)を利用する形で自律的に展開した“余剰のはけ口”的発展であった。この過程において、農村経済全体は確かに活性化されたが、同時に所得分配の悪化を伴ったと結論づける。

 
 
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