研究会
「地域研究への方法論的模索 ―韓国研究を中心に―」


話題提供者: 木村幹 (神戸大学)

日時: 2007年1月19日(金) 16:00〜18:30
会場: 京都大学東南アジア研究所 東棟2F教室

急速に進行するグローバリゼーション。今日それは、我々の住む世界の有り方を甞てのそれとは全く異なるものへと変えようとしているかのように見える。そのような現象の中心にあるのは、甞ては近代社会において最も高い権威を持ち、また、安全保障の提供やインフラストラクチャーの整備、更には、画一的文化の提供等により、近代社会をその根底から支えてきた国民国家の重要性が、大きく後退するという現象である。今日の国民国家は、甞てのように社会において最も重要で、最も権威を有する組織ではない。

グローバリゼーションが国民国家の社会における役割を縮小させたことは、結果として個々人が特定の国民国家の「国民」足ることの意味をも縮小させた。今日、国家は人々の運命の全てを左右するような、絶対的な存在ではなくなりつつあるからである。

このような状況は地域研究者にとってもまた、深刻な問題を提示している。多くの場合、従来の国民国家の名前や、或いはそれをつなぎ合わせ拡張した領域の名前を有しているこの学問においては、国民国家の重要性低下は、この学問の有効性に深刻な疑念を抱かせるに至っている。

それでは我々、地域研究者はこのような状況にどのようにして対して行けば良いのであろうか。本報告はこのような今日の地域研究について、報告者が従事している「日本における朝鮮/韓国研究」を例に考察する。九七年末の韓国の通貨危機を挙げるまでもなく、東アジアの狭い領域において向かい合う日韓両国においても、グローバリゼーションは無視することのできない意味を有している。重要なことは、グローバリゼーションが −時に誤解されているように−「国境がなくなること」を意味しているのではない、ということである。寧ろ、それが意味するのは各国、各個人の「地理的配置が意味を持たなくなる」ということである。ネットワークを通じて地球の裏側にある取引先との決済が瞬時に可能となった今日において、互いの領域の近さは互いが関心と交流、その結果としての取引関係を有することを保障などしない。それは例えば領域内ネットワークが完備され、ほぼ完成した単一市場を形成しているわが国国内の例を見れば明らかであろう。本報告の目的は参加者の皆さんと共にこの問題について考えることである。

これは、「東南アジアの社会と文化」研究会です。


[世話人]
杉島敬志(京大大学院アジア・アフリカ地域研究研究科)
林行夫(京大地域研究統合情報センター)
速水洋子(京大東南アジア研究所)
伊藤正子(京大大学院アジア・アフリカ地域研究研究科)
[東南アジア学会関西地区例会担当]
玉田芳史(京大大学院アジア・アフリカ地域研究研究科)
[研究会事務局]

王柳蘭(京大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科)
河邉孝昭(京大大学院アジア・アフリカ地域研究研究科院生)
吉田香代子(京大大学院アジア・アフリカ地域研究研究科院生)
吉村千恵(京大大学院アジア・アフリカ地位研究研究科院生) 

※「東南アジアの社会と文化」研究会のホームページです。どうぞご参照ください。 http://www.asafas.kyoto-u.ac.jp/kenkyuukatsudou/syakai-bunka/

 
 
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