研究会
「東南アジア移行経済におけるマイクロファイナンスと農村社会変動」


  
日時: 2007年3月20日(火) 14:00〜17:30
場所:京都大学東南アジア研究所2階教室(E207)
報告者1: 海野朝子(東京大学大学院新領域創成科学研究科)
タイトル: 「ミャンマーにおけるマイクロファイナンスの特徴と問題点:金融機関と中部ドライゾーン農村家計へのインタビュー調査結果を中心に」
 

本報告では、ミャンマーの中部ドライゾーンにおけるMF機関の活動実態を分析し、その実態を踏まえた上で、農村貧困削減に寄与するための改善策を提示することを試みる。本報告では、国営農業銀行(以下、農業銀行)と国際NGO-MFI(以下、NGO- MFI)を取り上げ、現地調査によって収集した財務諸表や借手へのインタビューから作成した世帯調査データを基に、これらの活動実態の比較分析を行なう。農業銀行とNGO-MFIは、対象地域における主要なMF機関であることに加えて、政府との関わりにおいて、従属的な農業銀行に対して自立的なNGO- MFIという対照的な特徴を持っている。そして、その対照的な特徴ゆえに、経営形態や対象顧客層の差異など、その活動内容が大きく異なる面も持つため、分析対象とした。

本報告での主要な結論は、以下の3点である。第1 に、農業銀行は貸付資金規模の拡大や顧客数の伸張が、NGO-MFIではより貧困層への貸付の促進が根本的な課題として挙げられることを見出した。第2 に、農業銀行の課題を解決する方法として貸付原資の拡大が必要であり、そのためには貸付金利と預金金利をともに上昇させていく必要があることを示した。第 3に、NGO-MFIの課題を解決する方法として、これまでNGO-MFIが蓄積してきた資源やノウハウを考慮すると、新たな貸付サービスのさらなる開発促進が有効である可能性を示した。

コメンテーター: 松田正彦(立命館大学)
報告者2: 岡江恭史(農林水産省 農林水産政策研究所)
タイトル: 「ベトナム農村における銀行融資をめぐる社会関係」
 

1960年代以降、アジア各国で設立・再編された農業金融制度は、低い資金回収率・高い取引費用等の問題を残した。しかしベトナムにおいては、農業銀行や貧民銀行(現社会政策銀行)の個人世帯への貸付に際して、農民会等の共産党系組織が仲介し、またこれらの組織のもとでグラミン銀行をモデルにした共同債務グループが結成され、高い資金回収率と取引費用の削減をもたらした。本報告では、これらの組織やグループの実態を村落構造との関係に着目して明らかにする。

ベトナム北部デルタ農村における実地調査の結果、以下のことが判明した。銀行貸付を仲介する農民会は予算・人員の面で不十分でその活動も活発とは言えず、グループの共同債務も事実上機能していない。にもかかわらず銀行貸付が良好なパフォーマンスを示しているのは、実質的に集落が貸付仲介を行っているからである。集落は村落内のあらゆる社会組織の基本単位であって、村民にとって最も身近な共同体である。それゆえ、財政的基盤がなくてもモニタリングを行うことは容易である。調査村においては、村落共同体が近代的な金融制度の農村部への導入を助けているといえる。だが、この「良好なパフォーマンス」には留意が必要である。確かに調査村では現時点でも債務不履行は発生していないが、延期措置はすでに何件か発生しているし、借入金を以前の借入の返済に充当するという事実上の返済期限繰り延べも横行している。また調査村では近年兼業化が急速に進行しており、今後は村落内の地縁的結合が弱まっていくことが懸念される。ベトナム農村において近代的な金融制度が着実に発展してためには、監視機能を強化するための制度面の改革が必要であろう。

コメンテーター:

柳澤雅之(地域研究統合情報センター)

モデレーター: 藤田幸一

これは、「国家・市場・共同体」研究会セミナーです。

 
 
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