本報告では、ミャンマーの中部ドライゾーンにおけるMF機関の活動実態を分析し、その実態を踏まえた上で、農村貧困削減に寄与するための改善策を提示することを試みる。本報告では、国営農業銀行(以下、農業銀行)と国際NGO-MFI(以下、NGO- MFI)を取り上げ、現地調査によって収集した財務諸表や借手へのインタビューから作成した世帯調査データを基に、これらの活動実態の比較分析を行なう。農業銀行とNGO-MFIは、対象地域における主要なMF機関であることに加えて、政府との関わりにおいて、従属的な農業銀行に対して自立的なNGO- MFIという対照的な特徴を持っている。そして、その対照的な特徴ゆえに、経営形態や対象顧客層の差異など、その活動内容が大きく異なる面も持つため、分析対象とした。
本報告での主要な結論は、以下の3点である。第1 に、農業銀行は貸付資金規模の拡大や顧客数の伸張が、NGO-MFIではより貧困層への貸付の促進が根本的な課題として挙げられることを見出した。第2 に、農業銀行の課題を解決する方法として貸付原資の拡大が必要であり、そのためには貸付金利と預金金利をともに上昇させていく必要があることを示した。第 3に、NGO-MFIの課題を解決する方法として、これまでNGO-MFIが蓄積してきた資源やノウハウを考慮すると、新たな貸付サービスのさらなる開発促進が有効である可能性を示した。 |